1980年代の時代劇

大型テレビ時代劇の時代
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Blu-ray【関ヶ原】より
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東京放送創立30周年記念番組、司馬遼太郎原作【関ヶ原】(1981年〔TBS〕制作・系列)。1月2~4日午後9時5分から110分間と170分間で3夜連続放送。徳川家康を森繁久彌、石田三成を加藤剛が演じた。他に、島左近に三船敏郎、本田正信に三國廉太郎など。脚本は早坂暁。テレビ番組としては巨額の制作費5億5千万円が投じられたテレビ時代劇史に残る大作。

(■TBSテレビは正月大型テレビ時代劇【関ケ原】を放送より)

1980年代前半、NHK大河ドラマではオリジナルドラマが増加します。そして題材の枯渇が危惧され、近現代にまでその時代が広げられます。近現代シリーズを前に、NHK大河ドラマ最後の時代劇となる可能性から、徳川家康が題材とされます。同時に、時代劇の灯を消さないためにNHKでは新大型時代劇をスタート。宮本武蔵、真田幸村を題材とします。民放では、連続テレビ時代劇が減少する一方で、長時間スペシャルが各局で始まります。

NHK大河ドラマは著名脚本家によるオリジナルドラマ続く

1980年代前半、NHK「大河ドラマ」(〔NHK〕放送・日曜午後8時から45分間。1年間放送)は、オリジナルドラマ、近現代を題材にした作品が続いた時期にあたります。

1980年代前半は、TBSドラマを中心にNHKドラマも手がけていた山田太一(やまだたいち:松竹出身)脚本によるオリジナルドラマ【獅子の時代】(1980年)に始まります。会津藩の架空藩士と薩摩藩の架空藩士の2人を主人公に、明治維新前後の物語が描かれました。

明治維新の敗者側を菅原文太(すがわらぶんた)、勝者側を加藤剛(かとうごう)が演じます。東映映画スターと、連続テレビ時代劇【大岡越前】〔TBS〕シリーズの主演者との競演でもありました。

同作では、パリでのロケも実施。NHK大河ドラマのテーマ音楽では初のロックサウンドを採用し、宇崎竜童(うざきりゅうどう)率いるダウン・タウン・ファイティング・ブギウギ・バンドが演奏に参加するなど、新たな試みもなされています。

制作(NHKにおける番組制作責任者)を務めた近藤晋(こんどうすすむ:劇団民藝出身の経歴も持つ)は、「庶民から見た近代化の光と影を描きたかった」とその企画意図をインタビューで振り返っています。

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続く【おんな太閤記】(1981年)も、TBSドラマを中心にNHKドラマも手がけていた橋田壽賀子(はしだすがこ)脚本によるオリジナルドラマです。制作は、澁谷康生(しぶややすお)です。

主役のねね豊臣秀吉正室)を佐久間良子(さくまよしこ)が演じます。豊臣秀吉は、西田敏行(にしだとしゆき)です。

橋田壽賀子にとっては、オリジナル時代劇ドラマの特番【女たちの忠臣蔵 いのち燃ゆる時】(1979年〔TBS〕制作・系列「東芝日曜劇場一二〇〇回記念」)に続くテレビ時代劇にあたります。

おんな太閤記について橋田壽賀子は、「当時は奥さんも働きに出るようになり、専業主婦は肩身の狭い思いをしていたので、内助の功の大切さを書こうと思ったんです。」、「できれば<関ケ原の戦いは東軍の勝利で終わった>という一行のナレーションで済ませたかった」と述べています(鈴木嘉一【大河ドラマの50年―放送文化の中の歴史ドラマ】より)。

おんな太閤記は【太閤記】(1965年)以来、NHK大河ドラマの平均視聴率が30%以上を超え、それは現在NHK大河ドラマ歴代平均視聴率第5位となっています。

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NHK大河ドラマで積極的にアイドルを起用

以後、【峠の群像】(1982年)が続きます。

通商産業省(現・経済産業省)出身の堺屋太一(さかいやたいち)が原作を書き下ろし、大石内蔵助を主人公に赤穂事件を題材にした新解釈でした。脚本は、当時NHK大河ドラマ史上最年少で起用された冨川元文(とみかわもとふみ)です。

主役の大石内蔵助には太閤記で豊臣秀吉を演じていた緒形拳(おがたけん)、準主役に松平健(まつだいらけん)が演じる赤穂藩の架空の勘定方をもうけ、藩財政の立て直しが描かれます。

峠の群像は、出演者にアイドルが積極的に起用されたのも特徴です。

野村義男(のむらよしお:当時たのきんトリオ)、薬丸裕英(やくまるひろひで:当時シブがき隊)、錦織一清(にしきおりかずきよ:少年隊)、小泉今日子(こいずみきょうこ)、三田寛子(みたひろこ)などです。これらのアイドルは、TBSドラマ【3年B組金八先生】と【2年B組仙八先生】にも出演していました。

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放送評論家・鈴木嘉一(すずきよしかず)が指摘したようにこの時期も、1970年代中盤に確立されたMHK大河ドラマの3本柱が題材となっています(【大河ドラマの50年―放送文化の中の歴史ドラマ】)。

戦国(【太閤記】、【天と地と】、【国盗り物語】)、幕末(【花の生涯】、【竜馬がゆく】、【勝海舟】)、忠臣蔵(【赤穂浪士】、【元禄太平記】)に、おんな太閤記、獅子の時代、峠の群像がそのままあてはまります。

NHK大河ドラマ4番目の戦国武将主人公は徳川家康

おんな太閤記の放送期間中、NHKのドラマ部長の遠藤利男(えんどうとしお)によって、峠の群像の翌年から近代史を取り上げる決定がなされていました。題材の行き詰まりやマンネリ化の危惧からでした。

次回作の演出チーフを託された大原誠(おおはらまこと)は、これが最後の時代劇になる可能性から、これまでNHK大河ドラマで取り上げてこなかった戦国武将の大物・徳川家康を題材に選びます。

それが、NHK大河ドラマ【徳川家康】(1983年)です。原作は2度目のNHK大河ドラマ原作となった山岡荘八(やまおかそうはち)。主演は、従来の狸親父的なイメージの徳川家康像を払拭すべく、劇団四季出身の滝田栄(たきたさかえ)が選ばれました。

脚本には、当時【3年B組金八先生】(〔TBS〕)シリーズで人気となっていた小山内美江子(おさないみえこ)が選ばれています。「女性達の心理の綾を描いて欲しい」と言うのが依頼理由でした。

NHK大河ドラマ徳川家康は、祖母の華陽院(けよういん)を八千草薫(やちぐさかおる)、母親の伝通院(でんづういん)を大竹しのぶ(おおたけしのぶ)、正室の築山殿(つきやまどの)を池上季実子(いけがみきみこ)、側室のお愛を竹下景子(たけしたけいこ)の配役によって彩られます。

また、豊臣秀吉には3年B組金八先生の主演者、武田鉄矢(たけだてつや)が配されました。

全50回の物語は、子役を登場させた第1回「竹千代誕生」に始まり、最終回「泰平への祈り」までが描かれます。それまで時代劇映画やテレビ時代劇で描かれてきた徳川家康ものと同様に、親子物語が強調されました。

徳川家康の平均視聴率は30%以上を超え、それは現在NHK大河ドラマ歴代平均視聴率6位となっています(太閤記と同率)。

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戦後の徳川家康役の系譜

山岡荘八の時代小説【徳川家康】は連載期間中、2代目・尾上松緑(おのえしょうろく)によって舞台化されています(1963年〔歌舞伎座〕初演)。

そののちも、新国劇の辰巳柳太郎(たつみりゅうたろう)主演で上演されました(1970年〔新橋演舞場〕初演)。

映像化は、民放の連続テレビ時代劇【徳川家康】(1964年〔NET〕系列)が初めてです。

主演は、若き頃を北大路欣也(きたおうじきんや)、晩年を彼の父・市川歌右衛門(いちかわうたえもん)が演じ、東映の全面協力で制作されました。演出は、NHKから転職し、NET(現・テレビ朝日)開局時から数多くのテレビ時代劇を手がけていた河野宏(こうのひろし)です。

この親子共演の連続テレビ時代劇の翌年には、同じく北大路欣也主演で、伊藤大輔(いとうだいすけ)監督作の映画版【徳川家康】(1965年〔東映〕配給)も公開されました。テレビ時代劇と映画とのメディアミックスでした。

以後、連続テレビ時代劇【竹千代と母】(1970年〔日本テレビ〕系列)、連続テレビアニメ時代劇【少年徳川家康】(1975年〔NET〕系列)など、少年向けの内容が放送されました。

山岡荘八原作以外の徳川家康作品では、次の面々が演じています。

1960年代のテレビ時代劇では、17代目・中村勘三郎(なかむらかんざぶろう)、新国劇の島田正吾(しまだしょうご)など。NHK大河ドラマ【国盗り物語】(1973年)では寺尾聡(てらおあきら)が演じています。

1980年代前半は、西村晃(にしむらこう)、森繁久彌(もりしげひさや)などが演じます。

近現代を題材にしたNHK大河ドラマを実行

NHK大河ドラマの近現代作品の第1弾は、山崎豊子(やまざきとよこ)原作【山河燃ゆ】(1984年)です。太平洋戦争前後を生きる架空の日系アメリカ人の物語でした。

第2弾、杉本苑子(すぎもとそのこ)原作【春の波涛】(1985年)は、明治時代から大正時代を生きた日本初の女優・川上貞奴(かわかみさだやっこ)の物語です。

主演はそれぞれ、9代目・松本幸四郎(まつもとこうしろう:現2代目・松本白鷗:まつもとはくおう)、松坂慶子(まつざかけいこ)です。

脚本はそれぞれ、市川森一(いちかわしんいち)と香取俊介(かとりしゅんすけ)、中島丈博(なかじまたけひろ)が起用されています。市川森一も中島丈博も共に2度目のNHK大河ドラマの担当となりました。

けれども、意欲的な近現代への挑戦作品は、関係者が存命しているなど、様々な反応から第3弾で終了することになりました。
 

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NHK新大型時代劇を放送:宮本武蔵と真田一族

NHK大河ドラマで近現代を題材にするにあたり、NHK「新大型時代劇」(水曜午後8時から44分間。1年間放送)が設けられます。時代劇の灯を消さないために、おんな太閤記と、いのちの2作品のNHK大河ドラマで制作を手がけていた澁谷康生の呼びかけでした。

第1弾は、吉川英治(よしかわえいじ)原作【宮本武蔵】(1984年)です。

NHK大河ドラマ徳川家康で織田信長を演じていた役所広司(やくしょこうじ)が主演します。

制作は、澁谷康生。脚本は、【天と地と】、【春の坂道】の2本のNHK大河ドラマを手がけていた杉山義法(すぎやまぎほう)が担当しました。

第2弾は、池波正太郎(いけなみしょうたろう)原作【真田太平記】(1985年)です。

真田昌幸を丹波哲郎(たんばてつろう)、その長男・真田信之を渡瀬恒彦(わたせつねひこ)、二男・真田幸村を草刈正雄(くさかりまさお)が演じます。

チーフ演出は、徳川家康を手がけた大原誠。脚本は倉本聰(くらもとそう)の弟子・金子成人(かねこなりと)です。同作は、第23回ギャラクシー賞・選奨を獲得しています。
 

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NHK連続テレビ時代劇:水曜時代劇では【新宿かわせみ】が人気に

NHK新大型時代劇は、「水曜時代劇」(1978~1983年:午後8時から50分間)の名称を変更して設けられました。

水曜時代劇の1980年代前半は、司馬遼太郎(しばりょうたろう)原作【風神の門】(1980年)で始まり、平岩弓枝(ひらいわゆみえ)原作【御宿かわせみ】(1980~1981年)を初めて連続テレビ時代劇化しました。

以後、ビクトル・ユーゴー【レ・ミゼラブル】を原作に舞台を江戸時代後期に置き換えた【いのち燃ゆ】(1981年「NHK大阪放送局」制作)、有明夏夫(ありあけなつお)原作【なにわの源蔵事件帳】(1981~1982年「NHK大阪放送局」制作)を放送。

翌年は、藤沢周平(ふじさわしゅうへい)原作【立花登 青春手控え】(1982年)、平岩弓枝原作【御宿かわせみ】(1982~1983年)を放送。

そして、中島丈博(なかじまたけひろ)他脚本によるオリジナルドラマ【壬生の恋歌】(1983年「NHK大阪放送局」制作)、有明夏夫原作【新・なにわの源蔵事件帳】(1983~1984年)が続き、同枠は終了しました。

このうち、江戸時代後期の旅籠の女性主人の物語、御宿かわせみは人気シリーズとなりました。主演は、真野響子(まやきょうこ)です。

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1980年代前半の水曜時代劇では、NHK大阪放送局が多く制作を手がけているのも特徴です。

NHK大阪放送局ではこの時期、和田勉(わだべん)演出による時代劇が制作されています。

人形浄瑠璃を題材にした【文楽 夏祭浪花鑑】(1983年)、近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)を原作とした3部作となる【女殺油地獄】(おんなころしあぶらのじごく:1984年)、【心中宵庚申】(しんじゅうよいごうしん:1984年)、【おさんの恋】(1985年)です。

このうち心中宵庚申は、第39回芸術祭・テレビ部門・ドラマの部で大賞を獲得しています。

TBSテレビは正月大型時代劇【関ケ原】を放送

TBS(現・TBSテレビ)は1980年代前半も、C.A.L製作による安定した人気の連続テレビ時代劇が続きます。

1980年代前半は、1969年から続く【水戸黄門】シリーズ、1970年から続く【大岡越前】シリーズ、1973年から続く【江戸を斬る】シリーズが「ナショナル劇場」(月曜午後8時から54分間)で放送されました。

主演はそれぞれ、東野英次郎(とうのえいじろう)の後任・西村晃(にしむらこう)、加藤剛(かとうごう)、西郷輝彦(さいごうてるひこ)です。

この時期、これら3本で長らくナショナル/松下電器(現・パナソニック ホールディングス)側のプロデューサーを務めていた逸見稔(へんみみのる)が独立します。オフィス・ヘンミを設立し(1980年)、安定した3本の脚本を手がける脚本家集団「葉村彰子」(はむらしょうこ)名義で活躍の場を広げていきます。

他に連続テレビ時代劇では、大佛次郎(おさらぎじろう)原作【鞍馬天狗】(1981~1982年〔テレパック〕共同制作)を放送。主演は、草刈正雄です。

そして、1980年代前半のTBSでは、自社制作による正月の大型時代劇が話題となります。

それは、紫式部(むらさきしきぶ)原作【源氏物語】(1980年1月3日午後9時5分から210分間〔カノックス〕共同制作:「資生堂スペシャル」)に始まります。

主演は沢田研二(さわだけんじ)。演出は久世光彦(くぜてるひこ)、脚本は向田邦子(むこうだくにこ)です。

DVD【源氏物語】

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そして翌年、東京放送創立30周年記念番組、司馬遼太郎原作【関ヶ原】(1981年「特別企画7時間ドラマ」)を放送します。1月2日から4日まで、午後9時5分から110分間と170分間として3夜連続で放送されました。制作費として、テレビ番組としては破格の5億5千万円が投じられています。

徳川家康を森繁久彌、石田三成を加藤剛が務めます。他に、島左近に三船敏郎(みふねとしろう)、本多正信に三國廉太郎(みくにれんたろう)などが配されました。

プロデューサーは大山勝美(おおやまかつみ)、脚本は早坂暁(はやさかあきら)が手がけます。両者は、かつて民放初の1時間の連続大河ドラマを掲げた【戦国太平記 真田幸村】(1966~1967年「ナショナル劇場」)を手がけたコンビでした(同作の共同プロデューサーは逸見稔と久世光彦)。

翌年には、【天下御免の頑固おやじ 大久保彦左衛門】(1982年1月1日午後7時から115分間「時代劇スペシャル」)も続きました。主演は森繁久彌。プロデューサーは逸見稔、脚本は葉村彰子です。

Blu-ray【関ヶ原】

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他に単発の連続時代劇では、福沢諭吉生誕150年記念作品【幕末青春グラフィティ 福沢諭吉】(1982年:日曜午後8時から55分間〔ティンダーボックス〕制作協力)を放送しています。主演は、5代目・中村勘九郎(なかむらかんくろう:18代目・中村勘三郎:なかむらかんざぶろう)です。

現代劇のレギュラー枠でも単発の時代劇を放送します。

東芝日曜劇場1500回記念、橋田壽賀子脚本によるオリジナルドラマ【花のこころ】(1985年:日曜午後9時5分から169分間「東芝日曜劇場」)です。

徳川家光江戸幕府第3代将軍)の実在の側室の物語でした。貧しい農民の娘・おらん(小林綾子:こばやしあやこ)が、母親の再婚に伴って江戸に出たことで将軍の乳母・春日局の目にとまり、大奥勤めへ。やがて4代将軍を産み、おらく(大原麗子:おおはられいこ)を名乗ることになるその生涯が描かれます。平均30.9%の高い視聴率を獲得しました。

当時、橋田壽賀子は連続テレビ小説(通称「朝ドラ」)【おしん】(1983年)で、現在まで朝ドラ歴代平均視聴率と最高視聴率共に第1位となる記録を生み出していました。半年放送ではなく1年間にわたって放送されたにもかかわらず同作は、平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%を誇ります。

テレビ東京は正月恒例長時間時代劇をスタート

東京12チャンネルの1980年代前半は、テレビ東京に名称を変更した時期です(1981年)。

この年、正月恒例の長時間特別番組枠「12時間超ワイドドラマ」(のち新春ワイド時代劇)をスタートします(1981~2016年)。

小山勝清(おやまかつきよ)原作【それからの武蔵】(1981年1月2日午後0時から12時間〔中村プロ〕共同製作)で始まります。

主演は萬屋錦之介(よろずやきんのすけ)共同監督・共同脚本は東映任侠映画を支えたベテラン沢島忠(さわしまただし)が沢島正継名義で親友・萬屋錦之介に応えました。

12時間超ワイドドラマは、前年の1月2日、中村錦之助(のちの萬屋錦之介)主演、内田吐夢(うちだとむ)監督作【宮本武蔵】(1961~1965年〔東映〕配給)による5部作の12時間一挙放送が好評を得たことで企画されました。

それからの武蔵は映画版の続編として制作され、宮本武蔵のその後が描かれます。

DVD【それからの武蔵壱之巻】

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2年目は、同じく萬屋錦之介主演、司馬遼太郎原作【竜馬がゆく】(1982年1月2日午後0時から12時間〔中村プロ〕共同製作)です。

けれども、萬屋錦之介の制作会社倒産や病から、以後は近現代の題材が選ばれることになります。

DVD【竜馬がゆく 第一巻】

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古谷一行(ふるやいっこう)主演【海にかける虹〜山本五十六と日本海軍】(1983年1月2日午後0時から12時間〔東映東京撮影所〕共同製作)、中村雅俊(なかむらまさとし)主演【若き血に燃ゆる〜福沢諭吉と明治の群像】(1984年1月2日午後0時から12時間〔テレパック〕共同製作「テレビ東京開局20周年記念番組」)を放送します。

原作はそれぞれ、阿川弘之(あがわひろゆき)と高橋孟(たかはしもう)、福澤諭吉(ふくざわゆきち)と小島直記(こじまなおき)です。

けれども、視聴率の不振から時代劇に戻ります。

北大路欣也(きたおうじきんや)主演【風雲 柳生武芸帳】(1985年1月2日午後0時から12時間〔東映東京撮影所〕共同製作「テレビ東京開局20周年記念番組」)を放送しました。原作は、五味康祐(ごみやすすけ)です。

同作は、第22回ギャラクシー賞・テレビ部門・月間賞を獲得。高視聴率も獲得し、以後、風雲3部作が制作されることになっていきます。

テレビ東京の連続テレビ時代劇は、水曜夜がレギュラー枠でした(1977~1983年:午後9時から54分間)。

1980年代前半は、1979年からスタートした【そば屋梅吉捕物帳】(〔国際放映〕共同製作)から続きます。主演は4代目・中村梅之助(なかむらうめのすけ)です。

以後、島田一男(しまだかずお)原作【斬り捨て御免!】(〔京都映画〕製作協力・〔歌舞伎座テレビ〕共同製作)シリーズ、藤沢周平原作【悪党狩り】(〔松竹〕〔藤映像コーポレーション〕共同製作)、【お命頂戴!】(〔京都映画〕製作協力・〔歌舞伎座テレビ〕共同製作)が続きます。

主演はそれぞれ、2代目・中村吉右衛門(なかむらきちえもん)、7代目・尾上菊五郎(おのえきくごろう)と鶴田浩二(つるたこうじ)、片岡孝夫(かたおかたかお:現15代目・片岡仁左衛門:かたおかにざえもん)です。

【ご存知時代劇シリーズ】を挟み、そして、【柳生新陰流】(〔中村プロ〕共同製作)、柴田錬三郎(しばたれんざぶろう)原作【眠狂四郎円月殺法】と【眠狂四郎無頼控】(〔京都映画〕製作協力・〔歌舞伎座テレビ〕共同製作)と続きましたが、同枠の連続テレビ時代劇は終了しました。

主演はそれぞれ、萬屋錦之介、片岡孝夫(現15代目・片岡仁左衛門)が2作です。

DVD 【眠狂四郎円月殺法第一巻】

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フジテレビは正月大型テレビ時代劇【和宮様御留】を放送

フジテレビの1980年代前半は、新たな連続テレビ時代劇を平日の昼に放送しています。

平日昼の現代劇枠「ライオン奥様劇場」(1964~1984年:毎週平日午後1時から30分間)で、3部作の【徳川の女たち】(1980年〔東映東京撮影所〕共同制作)を放送しました。

第1部の主役は、春日局。第2部の主役は、徳川吉宗(江戸幕府第8代将軍)に見初められた町娘。第3部の主役は、徳川家定(江戸幕府第13代将軍)時代の大奥留守です。

主演はそれぞれ、松尾嘉代(まつおかよ)、吉沢京子(よしざわきょうこ)、中村珠緒(なかむらたまお)です。

この時期、フジテレビでも正月に特別時代劇を放送します。

有吉佐和子(ありよしさわこ)原作【和宮様御留】(1981年1月3日午後9時2分から156分間)です。

主役の和宮(のち江戸幕府第14代将軍・徳川家茂の正室)の替え玉を、大竹しのぶが演じます。同作は、第18回ギャラクシー賞・選奨を獲得しました。

フジテレビは1作品2時間完結「時代劇スペシャル」を放送

けれどもフジテレビはその後、3つの曜日で放送していたレギュラーの時代劇枠がすべて終了していきます。

木曜夜の連続テレビ時代劇枠では、1980年代前半は次の内容を放送しました(1973~1982年:木曜午後9時から54分間)。

【同心部屋御用帳 新・江戸の旋風】(〔東宝〕共同制作)、【江戸の朝焼け】(〔東宝〕共同制作)、藤沢周平原作【江戸の用心棒】(〔東宝〕〔映像京都〕共同制作)、【同心暁蘭之介】(〔杉友プロ〕共同制作)です。

主演はそれぞれ、加山雄三(かやまゆうぞう)、沖雅也(おきまさや)、古谷一行、杉良太郎です。

ここで同枠の時代劇は終了しました。

同じ時期、新しく金曜夜に、2時間完結のほぼオムニバスの「時代劇スペシャル」枠を設けます(1981~1983年:金曜午後8時2分から106分間)。著名な映画監督、著名な俳優、著名な原作の企画枠です。

第1弾、松尾昭典(まつおあきのり)監督作、長谷川伸(はせがわしん)原作【沓掛時次郎】(〔東映京都撮影所〕共同制作)で始まります。主演は、2代目・大川橋蔵(おおかわはしぞう)です。

以後、岡本喜八(おかもときはち)監督作【着ながし奉行】(〔俳優座映画放送〕〔映像京都〕共同制作)、山下耕作(やましたこうさく)監督作【血槍富士】(〔東映京都テレビプロ〕共同制作)、工藤栄一(くどうえいいち)監督作【忍びの忠臣蔵】(〔東映京都撮影所〕共同制作)、五社英雄(ごしゃひでお)監督作【丹下左膳 剣風!百万両の壺】(〔俳優座映画放送〕〔映像京都〕共同制作)などが続きます。

主演はそれぞれ、仲代達矢(なかだいたつや)、4代目・中村梅之助、萩原健一(はぎはらけんいち)、仲代達矢。

原作はそれぞれ、山本周五郎(やまもとしゅうごろう)、内田吐夢監督作のリメイク、菊島隆三(きくしまりゅうぞう)、林不忘(はやしふぼう)でした。

放送4ヵ月後には、女優の主演作を放送しています。

宮下順子(みやしたじゅんこ)、池玲子(いけれいこ)、由美かおる(ゆみかおる)、真野響子が主役を務めます。

作品はそれぞれ、【かさねヶ淵】(〔円谷プロ〕共同制作)、【怪猫佐賀騒動】(〔大映映像〕〔大映企画〕共同制作)、【大奥悪霊の館】(〔東映京都撮影所〕共同制作)、【振り袖御免】(〔東宝〕共同制作)です。

他に、三浦友和(みうらともかず)と梅宮辰夫(うめみやたつお)の2人の主演による石ノ森章太郎(いしのもりしょうたろう)の青年漫画原作【佐武と市捕物控】シリーズ(〔東映東京撮影所〕共同制作)、三船敏郎主演のオリジナルドラマ【素浪人罷り通る】シリーズ(〔三船プロ〕共同制作)を放送。オリジナルドラマ【沖田総司 華麗なる暗殺者】(〔松竹〕共同制作)では、主役の沖田総司を郷ひろみ(ごうひろみ)が演じています。

【素浪人罷り通る DVD-BOX】

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同枠では他に、葉村彰子原案・脚本【清水次郎長】シリーズ(〔東映太秦映像〕〔オフィス・ヘンミ〕共同制作)、【危うし!大岡越前・お春捕物日記】(〔カノックス〕共同制作)を放送。前者は逸見稔が企画、後者は久世光彦(くぜてるひこ:【寺内貫太郎一家】や【時間ですよ】など)が演出するなど、TBSドラマの担当から独立した面々も意欲的な時代劇を発表しています。

時代劇スペシャルは、開始2年目に放送日時を移行します(1983~1984年:木曜午後9時2分から106分間)。

さいとう・たかをの劇画原作【影狩り】(〔俳優座映画放送〕〔映像京都〕共同制作)で始まります。主演は、仲代達矢です。

以後、多くの劇画を原作とします。

小池一夫(こいけかずお)原作/小島剛夕(こじまごうせき)作画原作【お毒味役主丞 乾いて候】(〔東映東京撮影所〕共同制作)、小池一夫原作/神田たけ志(かんだたけし)作画原作【御用牙】(〔東映東京撮影所〕共同制作)、小池一夫原作/小島剛夕作画原作【子連れ狼】(〔東映東京撮影所〕共同制作)です。

主演はそれぞれ、田村正和(たむらまさかず)、松方弘樹(まつかたひろき)、萬屋錦之介が務めました。

けれども、時代劇スペシャルは3年間で終了しました。

また、水曜夜に長らく放送していた2代目・大川橋蔵主演、野村胡堂(のむらこどう)原作【銭形平次】(1966~1984年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:水曜午後8時から56分間)も終了しました。

なお、同作は、1人の主演者による「テレビの1時間番組世界最長出演」としてギネスブック認定されています。

その水曜夜の枠では、新たに連続テレビ時代劇を放送しますが、半年間3作品で現代劇枠へ変更されました。

3作品は、名高達郎(なだかたつろう:現・名高達男:なだかたつお)主演、小池一夫原作/神江里見(こうえさとみ)作画原作【弐十手物語】(〔東映東京撮影所〕共同制作)。オムニバス【夏の怪談シリーズ】(〔東映東京撮影所〕共同制作)。田村正和主演、小池一夫原作/神田たけ志(かんだたけし)作画原作【乾いて候】(〔東映東京撮影所〕共同制作)でした。

テレビ朝日はアメリカ産の連続テレビ時代劇【将軍 SHŌGUN】を放送

テレビ朝日の1980年代前半は、全米で平均視聴率32.6%を記録したアメリカの連続テレビ時代劇の放送が話題になりました。

ジェームズ・クラベル原作【将軍 SHŌGUN】です(国内放送1981年3月30日~4月6日:8日連続午後8時から184分間→42分間→44分間)。

主演はリチャード・チェンバレン、日本からは三船敏郎、島田陽子(しまだようこ)他が参加しています。テレビ版を編集した映画版(〔東宝〕配給)の公開後、テレビ版が8日連続で放送されました。

1980年代前半は他に、正月特番として、宮尾登美子(みやおとみこ)原作【天璋院篤姫】(1985年1月3日午後9時から168分間〔テレビ朝日〕制作)も放送しています。主演は、佐久間良子です。

DVD 【将軍 SHŌGUN 其の壱】

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【将軍 SHŌGUN 其の壱】

この時期のテレビ朝日の連続テレビ時代劇は、減少し始めた時期にあたります。

テレビ朝日ではもっとも古い連続テレビ時代劇の伝統枠「土曜時代劇」(1967~1971年:午後8時から54分間)を、東映京都撮影所の共同制作として復活させていました(1976~1998年)。

1980年代前半は、1978年に始まった【暴れん坊将軍】シリーズ、【源九郎旅日記 葵の暴れん坊】を放送。主演はそれぞれ、松平健、西郷輝彦です。

火曜夜の連続テレビ時代劇の伝統枠もあります(1969~1983年:午後9時から54分間)。

1980年代前半は、池波正太郎原作【鬼平犯科帳】シリーズ(1980~1982年〔東宝〕共同制作)に始まります。主演は、萬屋錦之介です。

以後、【柳生あばれ旅】(1980~1981年〔東映京都撮影所〕共同制作)、松本清張(まつもとせいちょう)原作【文吾捕物帳】(1982~1983年〔三船プロ〕共同制作)、【柳生十兵衛あばれ旅】(1982~1983年〔東映京都撮影所〕共同制作)を放送しましたが、同枠は一旦終了しました。

主演はそれぞれ、千葉真一(ちばしんいち)、滝田栄(たきたさかえ)、千葉真一です。
 

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また、連続テレビ時代劇枠「木曜時代劇」(1979~1985年:午後8時から54分間)は、1979年から続く【長七郎天下ご免!】(1979~1982年〔東映京都テレビプロ〕共同制作)、陣出達朗(じんでたつろう)原作【遠山の金さん】(1982~1985年〔東映京都テレビプロ〕共同制作)を放送後、一旦終了します。

主演はそれぞれ、里見浩太朗(さとみこうたろう)、高橋英樹(たかはしひでき)です。

この時期は他に、北大路欣也主演、早乙女貢(さおとめみつぐ)原作【若き日の北条早雲】(1980年〔東映京都撮影所〕共同制作「ゴールデン劇場」:木曜午後9時から54分間)も放送しています。

また、遠山の金さんは、火曜の夜にシリーズII(1985~1986年〔東映京都テレビプロ〕共同制作:火曜午後9時から54分間)として一時的に復活しますが、放送終了後、現代劇の枠となりました。

日本テレビは年末時代劇スペシャルをスタート

日本テレビの1980年代前半は、日曜夜に放送した若者向けの時代劇も特徴です。

日本テレビ開局25年記念番組【西遊記】(1978~1980年)シリーズの人気から、【猿飛佐助】(1980年)、【黄土の嵐】(1980年)が放送されました(すべて〔国際放映〕共同製作:日曜午後8時から54分間)。

猿飛佐助では主演を太川陽介(たがわようすけ)、真田幸村を川崎麻世(かわさきまよ)が演じています。共に人気のアイドルでした。

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そして、連続テレビ時代劇では、杉良太郎と里見浩太朗を主軸に据えた時期です。製作は、ユニオン映画(〔東映太秦映像〕制作協力)が手がけます。

火曜夜の連続テレビ時代劇のレギュラー枠(1973~1997年:午後8時から55分間)では、1980年代前半は、杉良太郎主演、陣出達朗原作【新五捕物帳】(1977~1982年〔ユニオン映画〕製作)が引き続き放送されます。

以後、佐々木味津三(ささきみつぞう)原作【右門捕物帖】(1982~1983年〔ユニオン映画〕〔杉友プロ〕共同製作)、村上元三(むらかみげんぞう)原作【長七郎江戸日記】(1983~1986年〔ユニオン映画〕製作)が続きました。

主演はそれぞれ、杉良太郎、里見浩太朗です。
 

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そして日曜の夜、連続テレビ時代劇枠が復活します(1981~1983年:午後9時から54分間)。

【幻之介世直し帖】(1981年〔国際放映〕製作)に始まり、【松平右近事件帳】(1982年〔ユニオン映画〕製作)とその続編【新・松平右近】(1983年〔ユニオン映画〕製作)のオリジナルドラマを放送しました。

主演はそれぞれ、小林旭(こばやしあきら)、2作は里見浩太朗です。

けれども、この3作品で同枠の連続テレビ時代劇は終了しました。

単発の時代劇も、杉良太郎主演による2作品を放送します。

【大江戸桜吹雪、八千両の舞】(1981年〔ユニオン映画〕製作)、【春姿ふたり鼠小僧】(1982年〔ユニオン映画〕製作「杉良太郎・時代劇スペシャル」)です。

他にも、主演と原案を武田鉄矢が務め、数多くの音楽家が登場した【幕末青春グラフィティ 坂本竜馬】(1982年〔ティンダーボックス〕制作協力「サントリー・ドラマスペシャル 日本テレビ開局30年・読売テレビ開局25年記念番組」)も放送。

当時大手アイドル事務所所属・田原俊彦(たはらとしひこ)主演、【燃えて散る 炎の剣士 沖田総司】(1984年〔ジャニーズ事務所〕製作協力・〔三船プロ〕製作)を放送しています。

そして、日本テレビでは「年末時代劇スペシャル」に取り組みます(1985~1993年)。同枠もユニオン映画(〔東映太秦映像〕制作協力)が製作を手がけます。

第1弾は、2夜連続放送の【忠臣蔵】(1985年12月30・31日午後9時2分から144分間〔東映太秦映像〕製作協力・〔ユニオン映画〕製作)です。

主演は里見浩太朗、脚本は杉山義法です。同作は、第3回ATP賞テレビグランプリで大賞を獲得しました。

DVD【忠臣蔵】

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朝日放送では【必殺】シリーズの新春長時間スペシャルを放送

テレビ朝日系列の朝日放送(現・朝日放送テレビ)の1980年代前半は、1972年にスタートした【必殺】シリーズが引き続き人気となっていました(金曜午後10時から54分間)。

1980年代前半は、藤田まこと主演【必殺仕事人】(1979~1980年)、新春の単発番組で同じく藤田まこと主演【特別編必殺仕事人 恐怖の大仕事―水戸・尾張・紀伊―】(1980年1月2日午後9時から138分間)で始まりました。同シリーズの長時間スペシャルの第1弾でした。

長時間スペシャルは【必殺シリーズ10周年記念スペシャル 仕事人大集合】(1982年10月1日)以後は、年末にも放送されます。

【(秘) 必殺現代版 主水の子孫が京都に現われた 仕事人vs暴走族】(1982年12月31日)、【年忘れ必殺スペシャル 仕事人アヘン戦争へ行く 翔べ!熱気球よ香港へ】(1983年12月30日)です。

DVD【特別編必殺仕事人 恐怖の大仕事 ―水戸・尾張・紀伊―】

DVD【特別編必殺仕事人
恐怖の大仕事
―水戸・尾張・紀伊―】

1980年代前半の必殺シリーズ本編は、京マチ子(きょうまちこ)主演【必殺仕舞人】(1981年)からです。

同作では、三田村邦彦(みたむらくにひこ)と中条きよし(なかじょうきよし)の関係が人気を博しました。

そして、「新」を掲げたシリーズも始まります。

藤田まこと主演【新・必殺仕事人】(1982年)、京マチ子主演【新・必殺仕舞人】(1982年)です。

以後も、藤田まこと主演【必殺仕事人III】(1982~1983年)、中村雅俊主演【必殺渡し人】(1983年)、藤田まこと主演【必殺仕事人Ⅳ】(1983~1984年)、京マチ子主演【必殺仕切人】(1984年)、藤田まこと主演【必殺仕事人Ⅴ】(1985年)、津川雅彦(つがわまさひこ)主演【必殺橋掛人】(1985年)、藤田まこと主演【必殺仕事人Ⅵ・激闘編】(1985~1986年)が放送されていきます。

なかでも、必殺仕事人Ⅴでは京本政樹(きょうもとまさき)と村上弘明(むらかみひろあき)が出演し、新たなファンを獲得しています。

DVD【必殺仕事人V 上巻】

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関西テレビでは映画版とのメディアミックス企画【影の軍団】シリーズが人気に

フジテレビ系列の関西テレビでは、1970年代後半から火曜夜を連続テレビ時代劇枠としていました(1978~1985年:午後10時から54分間)。

1980年代前半は、1979年から続く陣出達朗原作【騎馬奉行】(1979~1980年〔東映東京撮影所〕)が引き続いて放送されました。主演は、6代目・市川染五郎(いちかわそめごろう:現2代目・松本白鸚:まつもとはくおう)です。

そして、元々映画版との同名企画のメディアミックスとして始まった【服部半蔵 影の軍団】(1980年〔東映京都撮影所〕)が続きます。

テレビ版の主演は、千葉真一です。

第1シリーズは、徳川家綱(江戸幕府第4代将軍)の時代に始まります。

以後、第2と第3シリーズは徳川家重(江戸幕府第9代将軍)の時代、第4と第5シリーズは徳川家茂(江戸幕府第14代将軍)の時代と、5年にわたって全5シリーズが放送された人気シリーズとなりました(1985年)。

【服部半蔵 影の軍団 DVD COLLECTION VOL.1】

【服部半蔵 影の軍団
DVD COLLECTION VOL.1】

影の軍団シリーズの合間には、様々なオリジナルの連続テレビ時代劇を放送します。

【旅がらす事件帖】(1980~1981年〔国際放映〕共同製作)、【闇を斬れ】(1981年〔松竹〕共同制作)、【暁に斬る!】(1982年〔ヴァンフィル〕共同制作)、【大奥】(1983~1984年〔東映京都撮影所〕共同制作「関西テレビ放送 開局二十五周年記念番組」)、【流れ星佐吉】(1984年〔松竹〕共同制作)、【暴れ九庵】(1985年〔東宝〕共同制作)です。

主演はそれぞれ、小林旭、天地茂(あまちしげる)、北大路欣也、栗原小巻(くりはらこまき)、郷ひろみ、風間杜夫(かざまもりお)です。

なかでも大奥は、かつて開局10周年を記念して放送した【大奥】(1968~1969年)を新たに制作しました。テレビ時代劇における大奥ものの系譜となっています。

単発では他に、三浦綾子(みうらあやこ)原作【千利休とその妻たち】(1983年〔俳優座映画放送〕共同制作「関西テレビ開局25周年記念番組」)も放送。主演は、栗原小巻です。【中原理恵の怪盗!女ねずみ小僧】(1984年〔東阪企画〕共同制作「花王名人劇場」)も放送しています。

けれども、影の軍団シリーズの終了に伴って、火曜夜の枠の連続テレビ時代劇は終了しました。

1980年代前半のテレビ時代劇。NHK大河ドラマではオリジナルドラマの増加や近現代を題材にしました。また民放では、連続テレビ時代劇が減少する一方で、長時間スペシャルに各局が取り組むなど、テレビ時代劇の形式が模索された時期でした。

著者名:三宅顕人

大型テレビ時代劇の時代
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