刀剣映画(刀剣・歴史映画監督)では、刀剣が登場する作品を、刀剣描写と共に映画監督ごとに時代順でご紹介します。大河内伝次郎・阪東妻三郎・嵐寛寿郎・片岡千恵蔵・市川右太衛門・長谷川一夫の「時代劇六大スタア」の活躍によって大きく発展した時代劇映画。それらの多くは歴史・時代小説を原作としており、映画と小説との相乗効果で観客を魅了し続けています。

刀剣小説
著名な小説家の書籍を、特徴的な刀剣の描写とともにご紹介します。
刀剣漫画
刀剣が登場する漫画作品を、刀剣の描写とともにご紹介します。

明治・大正生まれの
刀剣・歴史映画監督(時代劇映画監督)

明治・大正生まれの刀剣・歴史映画監督は、映画の歴史そのものと歩みを共にしました。映画は舞台劇文化が流れ込むなかで、機械技術的にはサイレントからトーキーへ、モノクロからカラーへと発展します。また、大河内伝次郎・阪東妻三郎・嵐寛寿郎・片岡千恵蔵・市川右太衛門・長谷川一夫の「時代劇六大スタア」も誕生しました。戦後には、三船敏郎・大川橋蔵 (2代目)・市川雷蔵(8代目)・勝新太郎・萬屋錦之介・仲代達矢らが活躍していきます。それら時代劇映画の多くは歴史・時代小説が原作となり、小説の主人公のイメージと映画主演者とが重ね合わされます。時代劇映画の発展の歴史は、同時期に誕生した歴史・時代小説の歴史そのものでもあります。

内田吐夢

内田吐夢
【大菩薩峠】、【宮本武蔵】という戦前に人気を博した時代劇映画を、戦後復活させた内田吐夢(うちだとむ)。その両作では原作に忠実に、剣客を自負する者とその剣客の思いあがる心を諌める者とを対比的に描きます。

伊藤大輔

伊藤大輔
【丹下左膳】の初映画化を手がけた伊藤大輔(いとうだいすけ)。戦前・戦中は剣客の時代劇映画を手がけ、戦後は【大江戸五人男】など歌舞伎作品を多数監督しました。晩年にはテレビ時代劇の影響のなかで【徳川家康】を監督しています。その戦後の時代劇映画の代表作では男性側だけでなく女性の存在も強調して描いています。

稲垣浩

稲垣浩
【大菩薩峠】の初映画化、【宮本武蔵】の初長編映画化を手がけた稲垣浩(いながきひろし)。歴史・時代小説の金字塔を映像化した時代劇映画監督の先駆的な存在です。戦後は三船敏郎主演の時代劇映画を数多く監督し、なかでも【大坂城物語】や【風林火山】では城や旗を通した武士道が見出せます。

松田定次

松田定次
【赤穂浪士 天の巻 地の巻】で忠臣蔵映画の初カラー化を手がけた松田定次(まつださだつぐ)。生涯に亘って数々の歴史・時代小説を映画化しました。【水戸黄門】は映画化とテレビシリーズ演出の両方を手がけています。現在の時代劇イメージの定番を形作った松田定次は、両作で太平の世を舞台にした武士道を描きました。

マキノ雅弘

マキノ雅弘
代表作【浪人街】が計4度リメイクされているマキノ雅弘(まきのまさひろ)。父親が創案した剣劇(チャンバラ)映画を継承しました。剣劇(けんげき)を生み出した劇団、新国劇にかかわる映画を幾本も手がけ、日本映画における刀剣描写・立ち回りに大きな功績を残します。

山中貞雄

山中貞雄
【丹下左膳余話 百萬両の壺】、【河内山宗俊】、【人情紙風船】の時代劇映画3本のみが、ほぼ完全なかたちで遺されている山中貞雄(やまなかさだお)。日中戦争下で若くして病でこの世を去った山名貞雄の時代劇映画は、戦況と同じように喜劇から悲劇性を帯びていきます。その喜劇的世界の刀剣場面においては、粋な立ち回りや心意気が描かれます。

黒澤明

黒澤明
【七人の侍】、【用心棒】で時代劇映画に革命をもたらした黒澤明(くろさわあきら)。両作では人間らしい人物が主人公です。主人公は対立する者の間で揺れ動きます。また、刀の耐久性や、拳銃との勝負を描くうえでもリアリズムがこだわられ、独自の刀剣描写も生み出しました。それは海外文学、西洋演劇への造詣の深さによって支えられています。

市川崑

市川崑
【四十七人の刺客】や【どら平太】など、多作のなかで時代劇映画も遺した市川崑(いちかわこん)。アニメーター出身の実写監督という特異な経歴を有します。その独自の映像演出では光が巧みに使われており、刀剣描写・立ち回りでも変わりません。

小林正樹

小林正樹
【切腹】や【上意討ち 拝領妻始末】などの時代劇映画を監督した小林正樹(こばやしまさき)。第2次世界大戦の応招経験に基づいた反戦映画で名を成し、その時代劇映画では武家の理不尽さを描き出しました。そこでは中間管理職の恐ろしさ、武家が抱える根源的な危うさをあぶり出します。

加藤泰

加藤泰
【瞼の母】、【沓掛時次郎 遊侠一匹】といった長谷川伸原作の時代劇映画を遺した加藤泰(かとうたい)。現代を舞台にした任侠映画へと時代が移行する直前を映画人として生きました。長谷川伸が創始した股旅物に基づく刀剣観には、古き良き剣劇(チャンバラ)映画の香りが漂っています。

三隅研次

三隅研次
【座頭市】シリーズと【子連れ狼】シリーズで共に第1作を手がけた三隅研次(みすみけんじ)。戦前に人気を博した剣客を主人公とする時代劇映画を戦後に監督します。そして、自身の代表作では、その後にテレビ時代劇の人気シリーズとなる作品の映画版を担当し、日本映画史に残る剣客像を造形しています。

岡本喜八

岡本喜八
【座頭市と用心棒】、【EAST MEETS WEST】などの時代劇映画を監督した岡本喜八(おかもときはち)。反戦映画でその名が知れられます。反戦映画と並行して手がけたその時代劇映画では和製西部劇が目指され、決闘の美学が描かれます。

戦前昭和生まれの
刀剣・歴史映画監督(時代劇映画監督)

戦前生まれの刀剣・歴史映画監督は、大衆娯楽が映画からテレビへと移行し始めた時代に活躍しました。テレビ局主催で映画を盛り上げる日本アカデミー賞が創設されたのも彼らが活躍する時期です。映画と同時にテレビ時代劇にもかかわる彼らの時代劇映画では、お茶の間で見るNHK大河ドラマや人気テレビ時代劇シリーズとの差別化が図られ、血生臭く影のある要素が特徴です。

勅使河原宏

勅使河原宏
【利休】、【豪姫】の2作の時代劇映画を遺した勅使河原宏(てしがわらひろし)。華道創流者を父に持ちます。芸術大学に学び、安部公房作品の映像化を手がけるなど前衛的な映像活動でそのキャリアをスタートさせました。そんな勅使河原宏の時代劇映画は陶芸に取り組み、父・妹から継承した3代家元就任以降に企画されました。千利休・古田織部・本阿弥光悦の3部作だったといい、茶道、茶人の美学が描かれます。

五社英雄

五社英雄
【三匹の侍】で映画監督デビューした五社英雄(ごしゃひでお)。テレビドラマの演出家から映像作家としてのキャリアを始め、映画からテレビへ大衆娯楽の中心が完全に移行する時期に映画監督となりました。テレビ演出家でありながら映画監督でもあった五社英雄の時代劇映画は男同士の物語から女性を通じた物語へと移り変わり、時代の変遷を教えてくれます。

工藤栄一

工藤栄一
司馬遼太郎の直木三十五賞受賞作【梟の城】の映画化や、集団抗争時代劇と称されるジャンルの火付け作ともされる【十三人の刺客】など、先駆的な時代劇映画を手がけた工藤栄一(くどうえいいち)。2作は共に近年新たに映画化されるなど高い評価を得ています。そんな工藤栄一の時代劇映画では主人公と好敵手との表裏一体の関係が色濃く描かれます。

山下耕作

山下耕作
【緋牡丹博徒】シリーズ第1作の監督を手がけた山下耕作(やましたこうさく)。任侠映画、実録任侠映画、テレビ時代劇、大作時代劇映画シリーズなどと時流に合わせながら作品を発表し続けました。そんな山下耕作が手がけた独自の時代劇映画では女性との関係に悩む侠客・剣客像が描かれます。

深作欣二

深作欣二
【仁義なき戦い】シリーズの監督で知られる深作欣二(ふかさくきんじ)。時代劇映画の監督作では【柳生一族の陰謀】、【魔界転生】などを遺しました。衰退していた時代劇映画の復活を託された深作欣二は大胆な歴史改変によってヒット作に導きました。そこでは柳生十兵衛が大活躍します。

黒木和雄

黒木和雄
ドキュメンタリー出身から時代劇映画の監督も手がけた黒木和雄(くろきかずお)。戦争と学生運動の体験を背景に生み出されるその映像では虚実ない交ぜの演出がなされます。それは時代劇映画【竜馬暗殺】と【浪人街 RONINGAI】でも変わらず試みられます。

山田洋次

山田洋次
【男はつらいよ】シリーズの監督として知られる山田洋次(やまだようじ)。同シリーズ終了後、藤沢周平原作の時代劇映画に取り組みます。3部作となったそのシリーズでは原作の時代設定をすべて幕末に移し、西洋近代化が進む時代背景のなかで生きた迷える武士として描きました。

中島貞夫

中島貞夫
山田風太郎原作による時代劇映画【くノ一忍法】で監督デビューした中島貞夫。以後監督した【真田幸村の謀略】、【女帝 春日局】の時代劇映画では真田幸村率いる草の者(忍び)、明智光秀の重臣の娘に着目しました。そこには歴史の敗者に光をあてようとする企てがあります。

降旗康男

降旗康男
高倉健主演の監督作を数多く遺した降旗康男(ふるはたやすお)。手がけた時代劇映画では主に徳川将軍家が悪と設定されます。そんな徳川将軍家を支える・挑む登場人物達には、降旗康男が任侠映画で育んできた耐える美学が隠されています。

小泉堯史

小泉堯史
黒澤明の遺稿【雨あがる】の映画化で56歳の年に監督デビューした小泉堯史(こいずみたかし)。その時代劇映画では山本周五郎、司馬遼太郎、葉室麟という歴史・時代小説の中心的な作者が原作です。著名な原作者の作品のなかでも主に、静かながらも知略に優れた浪人や侍を主人公に描きます。

戦後昭和生まれの
刀剣・歴史映画監督(時代劇映画監督)

戦後生まれの刀剣・歴史映画監督は、映画からテレビへと大衆娯楽が完全に移ってから活躍し、再び映画の魅力を掘り起こします。そのとき、旬の俳優による往年の時代劇映画のリメイクやSF的要素の導入など、より娯楽的側面が強調されます。殺陣の見せ場だけでなく、恋愛や夫婦愛も深く描かれ不可欠な要素となります。

原田眞人

原田眞人
【関ヶ原】など司馬遼太郎作品の映画化に近年取り組む原田眞人(はらだまさと)。学生時代に山手樹一郎や五味康祐、司馬遼太郎の時代小説に大いに親しみ、映画監督デビュー直後には司馬遼太郎に映画化の打診をし、断られたエピソードもあります。司馬遼太郎作品への想いは特に強く、映画監督デビューから40年以上の時を経て司馬遼太郎作品の映画化を実現させました。

森田芳光

森田芳光
【椿三十郎】のリメイクで初めて時代劇映画に挑んだ森田芳光(もりたよしみつ)。自主制作映画・映画祭の興隆期に監督デビュー後、人気映画監督として長らく活動を続けるなかで晩年の取り組みが時代劇映画でした。晩年であっても、黒澤明リバイバルや時代劇映画ブームのなかで監督作を手がけ、常に日本映画の先導的な役割を果たし続けました。その森田芳光の時代劇映画では、刀を抜かない心得が描かれます。

滝田洋二郎

滝田洋二郎
【陰陽師】の監督以降、【壬生義士伝】【天地明察】など時代劇映画を多数手がけるようになった滝田洋二郎(たきたようじろう)。時代劇映画への関与はテレビ局主導の映画製作がちょうど華やかになっていく時期でした。そんな滝田洋二郎は時代劇映画ではベストセラーに寄る大作を委ねられ、原作を脚色するうえで主に斬り合いや切腹を美徳とする武士の姿が強調されます。

石井岳龍

石井岳龍
【五条霊戦記 GOJOE】で初の時代劇映画に挑んだ石井岳龍(いしいがくりゅう)。パンク・ロックに大いに影響を受けた前衛的と評される監督作品を発表し続けています。その破壊的な世界観から静けさに耳を傾けることを主題とした音楽ジャンルのひとつ、アンビエント(環境的)になぞらえた内的世界へと関心を移すなかで発表したのが自身初の時代劇映画でした。その後2作目の時代劇映画は、パンク・ロッカーが書いた小説の映画化でした。石井岳龍監督作品では時代劇であっても常に音楽的アプローチが試みられています。

中野裕之

中野裕之
SF時代劇映画【SF サムライ・フィクション】で劇場用映画監督デビューした中野裕之(なかのひろゆき)。映像監督としてミュージックビデオの黎明期から活躍し、映画監督として手がける長編映画の多くが時代劇です。ピースを自身の主題と語るその映像作品のなかでも時代劇映画では剣の腕前と平和の世が常に対立化され、観客に問いが投げかけられます。

田中光敏

田中光敏
【火天の城】で自身初の時代劇映画を手がけた田中光敏(たなかみつとし)。続く【利休にたずねよ】でも時代劇映画を手がけました。それらは共に山本兼一の時代小説が原作です。武士よりも技術者・職人に関心を寄せ続けた山本兼一の想いを反映し、田中光敏も技術者・職人の矜持を武士以上に色濃く描きました。

犬童一心

犬童一心
【のぼうの城】で自身初の時代劇映画を監督した犬童一心(いぬどういっしん)。続けて【引っ越し大名!】も手がけました。それらは現在人気の時代小説家・和田竜と土橋章宏作品が原作です。両映画では槍術・剣術と知略との組み合わせが重要な要素となっています。

三池崇史

三池崇史
約50年前の名作時代劇映画【十三人の刺客】と【切腹】のリメイクを託された三池崇史(みいけたかし)。両作では江戸時代に形成された「忠孝一致」を重んじる武士道の否定が描かれます。その後も同じく「忠孝一致」の否定を主題とする人気漫画【無限の住人】の映画化も託されます。三池崇史はそれらの時代劇を手がけるにあたり、万民、家族愛などを強調し、さらに現代の感覚で武士道を描きます。

篠原哲雄

篠原哲雄
【山桜】、【花戦さ】など自然にちなんだ時代劇映画を監督する篠原哲雄(しのはらてつお)。藤沢周平の時代小説映像化ブームのなかで時代劇映画を手がけることになりました。その自然にちなんだ題材は、自然の力によって武士の力に立ち向かおうとする意志が描かれます。

本木克英

本木克英
【超高速!参勤交代】シリーズで近年の時代劇映画ブームを後押した本木克英(もときかつひで)。大手の映画・配給会社出身という恵まれた経歴によって巨匠達の技芸を受け継いでいます。また配給会社出身の経験からその監督作では女性の観客を大きく意識した時代劇映画が目指されています。

中村義洋

中村義洋
【殿、利息でござる!】、【忍びの国】と人気作家の映画化にあたり監督を務めた中村義洋(なかむらよしひろ)。それら原作小説は共に作者2作目の映画化で、勢いに乗る作者作品の映像化を託されています。そんな中村義洋の時代劇映画では、金銭問題と武士文化が主題となっています。

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