刀剣小説・歴史小説・時代小説などは、歌舞伎・講談・新劇・新派などの舞台劇をルーツに持つ小説です。歴史上の人物をモチーフとした、史実に基づいて書かれている歴史小説や架空の人物をモチーフとした、ファンタジー要素のある歴史小説もあります。刀剣が登場する小説・本・書籍は、刀剣の斬り合いや決闘など、激しい描写が特徴的です。
この「刀剣小説」ページでは、これまで出版された刀剣小説家の本・書籍を、その特徴的な刀剣の描写とともに解説。吉川英治先生の『宮本武蔵』や山手樹一郎先生の『桃太郎侍』など、出版の枠を超えて、ドラマ化や映画化された本・書籍もご紹介しています。どれをとっても刀剣好きにはたまらない作品です。

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Web歴史小説「刀剣三十六遣使」の室町時代「がんばれ百次郎 将軍・足利義政を守れ!」第1章~第4章までを公開中!

戦後生まれの刀剣小説家

戦後は、戦前生まれの歴史小説家・時代小説家の名前を冠した数多くの文学賞が生み出されました。吉川英治文学賞、大佛次郎賞、吉川英治文学新人賞、新田次郎文学賞、山本周五郎賞、柴田錬三郎賞、中山義秀文学賞、司馬遼太郎賞、舟橋聖一文学賞、山田風太郎賞、野村胡堂文学賞などが順に創設(直木三十五賞は戦前に創設)。これらの受賞は多くの作家が出版業界で活躍していく端緒となっていきます。
また、戦後に「歴史」を冠した雑誌・本・書籍も数多く出版されました。『歴史読本』、『歴史と人物』、『歴史と旅』、『週刊日本の歴史』、『歴史街道』、『歴史群像』、『歴史人』などが順に誕生します。
戦前には歴史小説・○○時代小説・髷物・新講談・大衆文学と様々に呼称されていた小説ジャンルも、戦後に放送の始まったNHK大河ドラマが10作以上を超えた頃から、歴史小説・時代小説という呼称に集約されていきました。
こうした時代背景を前提とするなかで活動を始めた刀剣小説家による刀剣描写は、賞の名前となった偉大な先輩作家による刀剣描写に真摯に向き合おうとする動きと、異ジャンルからの手つきで異色の刀剣描写を目指す動きとに両極化していきます。

北方謙三

北方謙三
『武王の門』で自身初の歴史小説に挑んだ北方謙三(きたかたけんぞう)。その初期作では、歴史学者・網野善彦による当時最新の中世研究が踏まえられました。後醍醐天皇を中心とした時代を舞台に、武力を有する公家と土地に縛られない武士(悪党)との拮抗を北方謙三はとらえようとしました。

高橋克彦

高橋克彦
『火怨 北の燿星アテルイ』など故郷を舞台にした小説群を書く高橋克彦(たかはしかつひこ)。それらは陸奥3部作・蝦夷4部作と称されます。海音寺潮五郎、早乙女貢、戸部新十郎、藤沢周平、津本陽などと同様に故郷にこだわり続けた作家の系譜です。それら小説群で刀剣描写は、蝦夷の視点から書かれます。

青山文平

青山文平
『白樫の樹の下で』でデビューして以来、江戸中・後期を舞台にした時代小説を書き続ける青山文平(あおやまぶんぺい)。経済系出版社でコピーライターだったその作風は経済・時代小説とも呼べ、刀の時代から金の時代へと移り変わるなかでの武士の生き様が軸となっています。また物語の肝として、あまり知られることのない史実や江戸時代の制度が登場するのも特徴です。その静謐な文体は、山本周五郎や藤沢周平も想起させます。

中村彰彦

中村彰彦
『落花は枝に還らずとも 会津藩士・秋月悌次郎』などで知られる中村彰彦(なかむらあきひこ)。その活動初期から、明治新政府の元で賊軍となった尊皇佐幕派の会津藩にこだわり続けます。歴史の敗者を発掘しようとする取り組みは、戦前では子母澤寛、戦後では山本周五郎、その山本周五郎の弟子・早乙女貢がいます。中村彰彦は先行して会津藩を書き続けた早乙女貢を継承しています。

浅田次郎

浅田次郎
『壬生義士伝』で自身初の時代小説を書いた浅田次郎(あさだじろう)。以来、江戸時代後期から幕末を舞台にした多くの時代小説を書きます。武士道の理不尽さを注視するその時代小説群では、あくまでエンターテインメントとして物語が紡ぎ出されます。

東郷隆

東郷隆
『戦国名刀伝』『本朝甲冑奇談』など独自の視点で歴史・時代小説を書く東郷隆(とうごうりゅう)。その物語は、海音寺潮五郎の母校でもある國學院大學に学んだ経歴と武器マニアである卓越した知見に支えられています。「鎧や城と同様、刀は嘘をつかない」を信念とし、膨大な古文書を紐解きながら武具から歴史を見つめ直す視点が貫かれています。

葉室麟

葉室麟
『実朝の首』が初の書き下ろしとなった葉室麟(はむろりん)。『銀漢の賦』で松本清張賞を、『蜩ノ記』で直木三十五賞を受賞しました。54歳で作家デビューし、この世を去るまでの12年の作家活動の間に60冊以上の単行本を出しました。故郷にこだわった題材や静謐な文体から藤沢周平の継承者と語られることも多いものの、葉室麟は白土三平の影響を公言します。その多くの作品では伝奇的な要素が重んじられています。

乙川優三郎

乙川優三郎
中・短編集『生きる』で直木三十五賞を受賞した乙川優三郎(おとかわゆうざぶろう)。その静謐な文体から藤沢周平の継承者としても語られます。時代小説で初の山本周五郎賞を受賞、中山義秀文学賞も受賞した乙川優三郎の刀剣世界には、武家が抱える不自由さを女性を重んじることで解き放とうとする刀剣観が見出せます。

安部龍太郎

安部龍太郎
『信長燃ゆ』で新たな織田信長ブームを起こした安部龍太郎(あべりゅうたろう)。歴史・時代小説への傾倒は隆慶一郎の影響でした。隆慶一郎が主題のひとつにした公武一体を描いた作品を安部龍太郎は多数執筆します。その刀剣世界では、劔(剣)神社や前髪を落とす・前髪執(まえがみとり)などに日本刀にかかわる公武一体の要素が見出せます。

山本兼一

山本兼一
『いっしん虎徹』『おれは清麿』で実在した刀工も取り上げた山本兼一(やまもとけんいち)。42歳の年に作家デビュー後、病で早世するまでの15年間の作家生活のなかで20作以上の単行本を遺しました。その作品の多くでは技術者・職人への注目がなされ、道具に注目し続ける先輩作家・東郷隆も想起させます。そんな山本兼一は体験取材を重んじ、刀工小説では刀匠・河内國平への綿密な取材に基づいたうえで独自の美学が導き出されています。

宮部みゆき

宮部みゆき
時代小説短編集『本所深川ふしぎ草紙』『かまいたち』を皮切りにミステリー作家と同時に時代小説家としても活躍を続ける宮部みゆき(みやべみゆき)。捕物帳物の創始者・岡本綺堂や南町奉行・根岸肥前守鎮衛が書き留めた江戸時代の巷の奇談に大いに影響を受けました。地元・深川を拠点に生み出されるその時代小説では、恐ろしく妖しくも、どこか人情味あふれる日本刀が描かれます。

真保裕一

真保裕一
『覇王の番人』『天魔ゆく空』で時代小説に挑んだミステリー作家・真保裕一(しんぽゆういち)。ミステリー小説と時代小説との両ジャンルの交点は、海外のミステリー小説の時代小説化のはじまりである捕物帳物の創始者・岡本綺堂に辿ることができます。明智光秀と細川政元を題材とした真保裕一の時代小説では、細川家を中心とした独自の戦国時代史観が見出せます。それは織田信長・豊臣秀吉・徳川家康と語られる戦国三英傑と称される歴史の流れとは別の見方です。

宇月原晴明

宇月原晴明
『聚楽 太閤の錬金窟』を含む戦国3部作を発表した宇月原晴明(うつきばらはるあき)。戦国3部作は山田風太郎、司馬遼太郎のオマージュであることを公言しています。歴史・時代小説と同時にフランスの異端文学にも傾倒する宇月原晴明の刀剣世界では、善と悪の二元論を錬金術や両性具有者によって乗り越えようとする幻想的な試みがなされています。

垣根涼介

垣根涼介
『光秀の定理』で自身初の時代小説を発表した垣根涼介(かきねりょうすけ)。歴史・時代小説への目覚めは司馬遼太郎でした。大手求人広告会社、旅行代理店での勤務経験を持ち、時代小説のなかでも人が働く、人が動く心理に注目します。そこでは定理や原理を掘り下げるなかで、無頼(アウトサイダー)や落ちこぼれの存在の重要性が見出されます。

佐藤賢一

佐藤賢一
『新徴組』であまり注目されていなかった故郷の史実を取り上げた佐藤賢一(さとうけんいち)。明治新政府の下で賊軍となった庄内藩への注目は、同じく賊軍となった会津藩を描き続けた早乙女貢と同じ志向です。自身初の日本を舞台にした時代小説では織田信長は女性だったとした佐藤賢一。その刀剣世界には、歴史に別の角度から光を当てようとする視点が常にあります。

木下昌輝

木下昌輝
デビュー作の中編『宇喜多の捨て嫁』を収録した単行本が直木三十五賞候補となるなど鮮烈なデビュー期となった木下昌輝(きのしたまさき)。その作風には司馬遼太郎を乗り越えるようとする強い意志があります。その際あまり知られることのない歴史の敗者に光を当て、骨太な歴史・時代小説の装いのなかに講談的な物語が描かれます。

冲方丁

冲方丁
『天地明察』で知られる冲方丁(うぶかたとう)。その時代小説では帰国子女だった冲方丁の視点による日本が描かれます。国と国やジャンルの違いのなかに共通点を見出し、日本の根源を見つめ、幕府と朝廷との融合に注目します。

大正・昭和生まれの刀剣小説家

大正・昭和生まれの刀剣小説家は、戦前に出版された本・書籍で育まれた刀剣観と刀剣小説の成果を乗り越えようとしました。忍者や隠密に注目し、それまで注目されていなかった剣客も発掘します。そこでは著者の故郷出身の剣客を通した故郷復興も行なわれます。

柴田錬三郎

柴田錬三郎
『眠狂四郎無頼控』でその名を知られる柴田錬三郎(しばたれんざぶろう)。剣豪作家を名乗った柴田は、戦前に育まれた歴史小説・時代小説の魅力を戦後に蘇らせた功労者です。

五味康祐

五味康祐
『柳生武芸帳』で知られる五味康祐(ごみやすすけ)。柳生家を中心に多彩な剣客像を生みだしました。柳生十兵衛三厳を公儀隠密(忍者)として描くなど、五味の多彩な着想はその後多くの後発作品に取り入れられています。

山田風太郎

山田風太郎
忍法帖シリーズを生みだした山田風太郎(やまだふうたろう)。多種多様な忍法を描き続ける中で山田は、日本刀は柳生十兵衛を通して描きました。

池波正太郎

池波正太郎
『鬼平犯科帳』『剣客商売』で知られる池波正太郎(いけなみしょうたろう)。もともと戯曲に力を入れていた池波の躍進はテレビ時代劇の発展と歩みを共にしています。池波は、出版したその代表作で在銘の日本刀を数多く登場させています。

司馬遼太郎

司馬遼太郎
『竜馬がゆく』『燃えよ剣』などで知られる司馬遼太郎(しばりょうたろう)。司馬が独創的に描き出版された刀剣・歴史小説は、坂本竜馬像や新選組像はテレビ時代劇化を通して、教科書的な存在となっていきます。

隆慶一郎

隆慶一郎
『吉原御免状』で歴史小説・時代小説に新風を送り込んだ隆慶一郎(りゅうけいいちろう)。テレビ時代劇の脚本家だった時代には描けなかった、映像では表現しにくい独自の物語設定にこだわりました。

早乙女貢

早乙女貢
長編『会津士魂』で知られる早乙女貢(さおとめみつぐ)。曾祖父が会津藩士だった早乙女は、会津藩士で京都見廻組の剣客・佐々木只三郎を見いだすなど、生涯に亘って故郷の再興を描き続けました。

戸部新十郎

戸部新十郎
『前田利家』を描いた戸部新十郎(とべしんじゅうろう)。生涯に亘って加賀前田家を描き続けた戸部は、前田家の刀剣の世界を教えてくれます。

藤沢周平

藤沢周平
『蝉しぐれ』で知られる藤沢周平(ふじさわしゅうへい)。故郷・東北を舞台に繰り広げられる藤沢の時代小説では、日本刀は女性にかかわる物として描かれ、初期の作品から重要な要素となっています。

津本陽

津本陽
短編「明治撃剣会」で当時珍しかった明治時代初頭を物語の舞台とし、時代小説に新風を送り込んだ津本陽(つもとよう)。剣道と抜刀道の有段を活かし、出版した刀剣・歴史小説で日本刀の立ち合いの描写にも新風を送り込みました。

明治20年代生まれの刀剣小説家

明治20年代生まれの刀剣小説家は、主にサイレントからトーキーとなる映画の移行期に活躍しました。彼らが出版した主な本・書籍は、映画を通して剣豪のイメージを生みだしていきます。大河内伝次郎・阪東妻三郎・嵐寛寿郎・片岡千恵蔵・市川右太衛門・長谷川一夫の「時代劇六大スタア」が主に主役を演じ、俳優のイメージと小説の主役とが重ね合わされます。

国枝史郎

国枝史郎
『八ヶ嶽の魔神』を含む三大伝奇長編を遺した国枝史郎(くにえだしろう)。日本の伝奇小説を大きく発展させたひとりです。そんな国枝は、江戸時代の2大流派に注目し、その剣技を出版された伝奇小説の中に巧みに取り入れました。

白井喬二

白井喬二
長編『富士に立つ影』で一躍有名になった白井喬二(しらいきょうじ)。芥川龍之介にも賞賛されたその想像力で日本の伝奇小説を大きく発展させました。その刀剣観も独特のものでした。

三上於菟吉

三上於菟吉
『雪之丞変化』でその名を残す三上於菟吉(みかみおときち)。翻訳・現代物から髷物へ移行し人気を博した三上は、時代小説の幅を大きく広げました。そこには日本刀を用いない試みがなされています。

直木三十五

直木三十五
『日本剣豪列伝』が遺稿となった直木三十五(なおきさんじゅうご)。その名は現在直木賞として知られます。初恋は劇場で観た女剣舞師と記した直木は生涯に亘って剣を描きました。

子母澤寛

子母澤寛
『新選組遺聞』を含む新選組三部作を遺した子母澤寛(しもざわかん)。その後、多くの新選組小説を生みだしていく端緒となった子母澤は、幕末に生きた実在の剣客に関心を寄せ続けました。

吉川英治

吉川英治
長編『宮本武蔵』でその名が知られる吉川英治(よしかわえいじ)。当初伝奇小説で人気を博していた吉川の想像力は『宮本武蔵』にも流れ込んでいます。伝奇小説が歴史小説とみなされていくその広がりには当時の時代背景が大きく影響しています。

土師清二

土師清二
『砂絵呪縛』でその名を残す土師清二(はじせいじ)。歌舞伎の時代小説化で小説家としてのキャリアを始めた土師は、傾奇者や隠密・浪人など武士道をはみ出す日本刀の世界を描きました。

佐々木味津三

佐々木味津三
『旗本退屈男』でその名を残す佐々木味津三(ささきみつぞう)。純文学から大衆文学へ移行してきた佐々木は、当時人気を博していた『半七捕物帳』と『丹下左膳』の時代小説を巧みに換骨奪胎しました。それは当時の時代小説の人気ぶりを教えてくれます。

明治30~40年代生まれの刀剣小説家

明治30~40年代生まれの刀剣小説家は、主に映画の時代からテレビの時代となる移行期に活躍します。出版された本・書籍の多くはNHK大河でドラマ化され、現在の時代劇や、刀剣のイメージに大きな影響を及ぼしています。

大佛次郎

大佛次郎
『赤穂浪士』を執筆した大佛次郎(おさらぎじろう)。髷物『鞍馬天狗』で一躍人気となった大佛はもともと海外文学の翻訳を手がけていました。大佛の日本刀の物語は、西洋文学が背景となっています。

山手樹一郎

山手樹一郎
『桃太郎侍』『遠山の金さん』を執筆した山手樹一郎(やまてきいちろう)。共にテレビ時代劇としてもよく知られる小説です。小説版『桃太郎侍』では日本刀の存在が物語で重要な役割を果たします。

林不忘

林不忘
『丹下左膳』でその名を残す林不忘(はやしふぼう)。『丹下左膳』は時代小説(大衆文学)全体が人気ジャンルとなっていく中で依頼を受けて執筆されました。林が生みだした大小一対の妖刀のアイデアは現在まで多くの後発作品に受け継がれています。

海音寺潮五郎

海音寺潮五郎
上杉謙信を描いた『天と地と』を執筆した海音寺潮五郎(かいおんじちょうごろう)。ノンフィクションを目指す史伝に重きを置きました。リアリズムを重んじる海音寺はやがて愛刀家にもなっていきます。

山本周五郎

山本周五郎
『樅ノ木は残った』でその名を残す山本周五郎(やまもとしゅうごろう)。歴史の敗者を描くことに終生こだわった周五郎は、日本刀を通して正しさを追求し続けました。

舟橋聖一

舟橋聖一
『花の生涯』を執筆した舟橋聖一(ふなはしせいいち)。歌舞伎に慣れ親しみ、最初の人気作は歌舞伎の女形を描いたものでした。そんな舟橋は多くの自作で日本刀を女性にまつわる視点で描きます。

角田喜久雄

角田喜久雄
『鍔鳴浪人』で当時の文壇でトップの原稿料を誇ったとも言われる角田喜久雄(つのだきくお)。探偵小説の素養を背景に持つ角田は、日本の伝奇小説を大きく発展させたひとりです。そこでは謎めいた日本刀の世界が描かれます。

山岡荘八

山岡荘八
『徳川家康』で知られる山岡荘八(やまおかそうはち)。戦後に家康ブームを起こした山岡は家康の他、多数の戦国武将を描きました。そこには戦中戦後を生きた山岡の日本刀を通した自身の想いが秘められています。

村上元三

村上元三
『源義経』を執筆した村上元三(むらかみげんぞう)。時代小説を禁止したGHQの占領政策後期、『佐々木小次郎』を描いた村上は、戦後の歴史小説・時代小説の扉を開きました。

明治元年~10年代生まれの刀剣小説家

明治元年~10年代生まれの刀剣小説家は、主に戯曲を通して自身が出版する本・書籍に新しい刀剣像を生みだしました。彼らは、近代化の中で荒唐無稽な歌舞伎の脱却を目指した新歌舞伎運動や、「剣劇」と呼ばれた沢田正二郎が主宰する新国劇の活動などに大きくかかわったと言われています。

岡本綺堂

岡本綺堂
「綺堂物」と呼ばれた新歌舞伎の戯曲、『半七捕物帳』の小説などを執筆した岡本綺堂(おかもときどう)。明治末期に興った新歌舞伎運動の中心人物のひとりでもあり、捕物帳物を創始した綺堂は、戯曲と小説とで明治人の視点から日本刀を描きました。

行友李風

行友李風
戯曲『月形半平太』を書いた行友李風(ゆきともりふう)。「剣劇」と呼ばれた新国劇の沢田正二郎のイメージを決定付ける役割を果たしました。小説も執筆した李風は独自の日本刀観を貫きます。それは「怪異」です。

野村胡堂

野村胡堂
『銭形平次捕物控』を執筆した野村胡堂(のむらこどう)。空想科学小説から髷物へ移行してきた歴史・時代小説家です。その幅広い知識で、新刀よりも古刀に重きを置いた刀剣観を描きます。

長谷川伸

長谷川伸
戯曲『関の弥太ッペ』『瞼の母』など「股旅物」と呼ばれる多数の人気戯曲を遺した長谷川伸(はせがわしん)。武士を描いた多数の小説も遺した長谷川は、博徒も浪人も武士も刀の描写を違えども、「義」を描き続けました。

中里介山

中里介山
未完の長編『大菩薩峠』を生涯執筆し続けた中里介山(なかざとかいざん)。『大菩薩峠』はその後、多くの剣豪小説を生みだしていくことになる原典です。出版されたこの歴史小説には、多数在銘の日本刀も登場します。

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