刀剣難解辞典Ⅱ(応用編)
刀剣難解辞典Ⅱ(応用編)
相州伝の刀工「行光」が作刀した「短刀 朱銘 行光 本阿[花押]」の原文の一部を現代文に訳し、分かりやすい解説文にしました。
現存する行光の刀のうち太刀はすべて無銘(むめい)で、在銘作は短刀に限られておりほとんどが①内反り風(うちぞりふう)の姿となっているのは時代の特色です。②平造り(ひらづくり)で三つ棟(みつむね)、③地沸(じにえ)は厚く、地景(ちけい)が働いており、④帽子は浅く流れて先が丸く返ります。⑤彫物(ほりもの)は表に素剣、裏は腰樋(こしび)と掻流し(かきながし)の添樋です。⑥刃文(はもん)は小湾れ(このたれ)に互の目(ぐのめ)交じり。⑦匂(におい)は深く、沸(にえ)がよく付き、砂流し(すながし)や金筋(きんすじ)がかかるのは行光の特徴をよく表わしていると言えるでしょう。
①内反り風(うちぞりふう)の姿となっているのは時代の特色です。
通常の棟側の反りと反対に、内側の刃の方に反っているのは鎌倉時代の短刀の特色です。
②平造り(ひらづくり)で三つ棟(みつむね)、
刀身(とうしん)に鎬筋(しのぎすじ)がない平らな造りで、棟は台形の上部のように3つの辺がある形、
③地沸(じにえ)は厚く、地景(ちけい)が働いており、
地鉄(じがね)に白い沸が幅広く現われており、黒光りする線状の地景が入り、沸の連なりが光り輝き増しており、
④帽子は浅く流れて先が丸く返ります。
鋒/切先(きっさき)の刃文(はもん)は刃に沿って浅く流れていき、先端部分で丸く返ります。
⑤彫物(ほりもの)は表に素剣、裏は腰樋(こしび)と掻流し(かきながし)の添樋です。
彫物は表に素剣、裏は2本の「樋」があり、ひとつは鎺元(はばきもと)からその少し上までの腰樋、もうひとつは茎までつながった添樋です。
⑥刃文(はもん)は小湾れ(このたれ)に互の目(ぐのめ)交じり。
刃文は、ゆったりした小さな湾れ模様のなかに、規則的な互の目が交じり、
⑦匂(におい)は深く、沸(にえ)がよく付き、砂流し(すながし)や金筋(きんすじ)がかかる
刃縁の匂が厚くはっきり見え、そのなかに沸がよくつき、刃のなかに沸が連なってできる砂流しや金筋が見える
のは行光の特徴をよく表わしていると言えるでしょう。