刀剣難解辞典Ⅱ(応用編)
刀剣難解辞典Ⅱ(応用編)
備前伝の刀工「長船春光」が作刀した「刀 銘 備前国住長船十郎左衛門尉春光 天文十六年丁未八月吉日」の原文の一部を現代文に訳し、分かりやすい解説文にしました。
「刀 銘 備前国住長船十郎左衛門尉春光 天文十六年丁未八月吉日」を作刀した春光は、「末備前」(すえびぜん)の刀工のひとり。
①「天文16年」(1547年)紀が銘(めい)に切られている本刀は、②反りは浅く先反りが付く、③室町時代後期の特色をよく示した造込みであることが窺えるのです。
④また、鍛えは板目肌(いためはだ)がよく練れて詰み、地沸(じにえ)が厚く付き、⑤広直刃調(ひろすぐはちょう)に小足(こあし)・葉(よう)が入るなど、⑥末備前物の作風が顕著に示されており、十郎左衛門尉春光の代表作でもあります。
春光は、「末備前」(すえびぜん)の刀工のひとり。
①「天文16年」(1547年)紀が銘に切られている本刀は、
茎(なかご)に銘(めい)として切られた年のことを年紀と呼びますが、本刀は天文16年紀があり
③室町時代後期の特色をよく示した造込みであることが窺えるのです。
室町時代には鎌倉時代初期の刀にならった姿の物が作られましたが、室町時代後期になると先反りが目立つようになりました。本刀もその様子が見て取れます。
④また、鍛えは板目肌(いためはだ)がよく練れて詰み、地沸(じにえ)が厚く付き、
鍛えは、板目肌に粗い感じがなくよく詰み、ネットリとしたやわらかささえ感じられる状態で、地鉄(じがね)には細かい沸が層をなすように厚く付き、
⑤広直刃調(ひろすぐはちょう)に小足(こあし)・葉(よう)が入るなど、
刃文(はもん)は、幅の広い直線状に見える広直刃に、刃文の境界から刃先に向って飛び出す短い足や、刃の中に切れ切れに存在する葉が入るなど、
⑥末備前物の作風が顕著に示されており、
1504年(永正元年)頃から1592年(文禄元年)までに、備前国(びぜんのくに:現在の岡山県南東部)で作られた刀を「末備前」と呼んでおり、その作風が顕著に示されています。
十郎左衛門尉春光の代表作でもあります。
板目肌がよく詰み
いためはだがよくつみ板目肌に柾が流れる
いためはだにまさがながれるよく練れた鍛え
よくねれたきたえ地沸微塵に厚く付く
じにえみじんにあつくつく細直刃に、ほつれ・打除け・喰違刃が交じり
ほそすぐはに、ほつれ・うちのけ・くいちがいばがまじりネットリとした肌合いとなり
ねっとりとしたはだあいとなり鎬高い
しのぎたかい鎬地を削いで
しのぎじをそいで鎬幅広めで鎬高い
しのぎはばひろめでしのぎたかい平地板目鎬地柾目
ひらじいためしのぎじまさめ沸映り
にえうつり沸が凝る
にえがこごる沸崩れる
にえくずれる沸筋入る
にえすじはいる沸匂深く
にえにおいふかく沸よくつく
にえよくつく乱れの谷に沸が凝る
みだれのたにににえがこごる匂口明るい
においぐちあかるい匂口冴える
においぐちさえる匂口の塩相深いところ
においぐちのしおあいふかいところ匂口沈む
においぐちしずむ匂口締る
においぐちしまる匂口深い
においぐちふかい匂口が柔らかい
においぐちがやわらかい