「フェザーミュージアム」は、岐阜県関市日ノ出町にある世界で初めての刃物の総合博物館です。「切る」をテーマに掲げた非常にユニークな博物館で、石器時代から現代までの様々な刃物が展示されています。最新の映像技術を使ったシアターや、実際に触れて学ぶ体験コーナーなども充実したフェザーミュージアムの魅力をご紹介します。なお、フェザーミュージアムの入場料は無料となっています。
フェザーミュージアム
「フェザー」のブランド名で知られるフェザー安全剃刀株式会社は、関安全剃刃製造合資会社を前身とする会社です。
現在のフェザー安全剃刀株式会社の本社は大阪にありますが、生産拠点である主力工場は岐阜県関市にあります。
そんなフェザー安全剃刀株式会社が2000年(平成12年)5月に開館した刃物の総合博物館が「フェザーミュージアム」です。
開館当時は「カミソリ文化伝承館・フェザーミュージアム」という名称でしたが、2016年(平成28年)3月にフェザーミュージアムの名でリニューアルオープン。
このリニューアルオープンによって見学がメインだった施設から「『切る』の未来を考える」をテーマにした体験型ミュージアムへとパワーアップして生まれ変わりました。
関市は古くから上質な刃物が作られてきた地域であり、全国的にも「刃物のまち」として有名です。関市の刃物作りの歴史をたどると、鎌倉時代に確立した日本刀作りの伝法「美濃伝」にルーツがあります。
戦が頻発し、武器としての日本刀の需要が高まった鎌倉時代、各地で日本刀が作られるようになりました。当時関市周辺の地域は「美濃」と呼ばれ、東西を行き来する役人や武将達の中継地点として発展。日本刀の需要に応えるように刀工が美濃へ移住し、美濃伝と呼ばれる伝法が確立しました。
五箇伝の中で最も新しく、強固で美しい美濃伝の日本刀は現在、戦の武器としてではなく貴重な美術品として珍重されています。
このような刃物の歴史や素晴らしい日本の技術をより多くの人に知ってもらおうと、フェザー安全剃刀株式会社が設立したのが、フェザーミュージアムなのです。
切る という行為は、日常生活を営む上で必要不可欠です。食材を切る、布を切る、髪を切るなど、文明の進化と共に切るための道具も発展してきました。
切る の文化を知ることは、すなわち人間の文明について学ぶことにつながります。
フェザーミュージアムでは、切るの歴史や数々の刃物製品を展示。展示だけでなく、随所に体験ゾーンが設置されて、子どもから大人まで楽しめる施設となっています。
フェザーミュージアムは、1階と2階が展示フロアとなっています。
1階のエントランスホールへと入ると、超巨大な髭剃り「ジャイアントフェザー」が来館者を出迎えます。
また、昭和時代にタイムスリップした気分に浸れるのが「広報展示」コーナー。フェザー安全剃刀株式会社の過去の新聞広告や商品パッケージ、テレビCMなどで話題を集めた製品がずらりと並んでいます。
当時に思いを馳せながら、フェザー安全剃刀株式会社の歩みを知ることができるのです。
1階には鮮やかな映像を大画面で映し出す「シアター」コーナーがあり、フェザー安全剃刀株式会社の製品、サービス、剃刀の歴史について視覚や聴覚を通して知ることができます。
様々なクイズを出して来館者を盛り上げるのがフェザーミュージアムのオリジナルキャラクター「ひげ博士」。白衣を着た愛くるしいルックスの博士がシアターに登場し、フェザー安全剃刀株式会社の製品について分かりやすくレクチャーしてくれます。
ミュージアムショップでは、爪切りや剃刀を始めとしたフェザーミュージアムのオリジナルグッズを販売しています。ここでしか手に入らない物も多く、お土産に最適です。他にも、好みのヒゲやカツラを自分で選んで撮影できるフェザーミュージアム限定のオリジナルプリントシール機も設置されています。
記念撮影スポット
施設内には、安全剃刀と医療用メスの大型模型が飾られた「記念撮影」コーナーがあります。
ここは、小人のような気分になれる大人気の記念撮影スポットです。
友達や家族と一緒に撮影をして、SNSにアップしてみるのも良いでしょう。
フェザーミュージアムの2階では、「切る」に関する様々な道具や刃物にかかわる仕事、切るという動作の原理について紹介されています。
また、ガラスケースに覆われて壁一面に展示された刃物、切るをテーマに出題されるクイズコーナーなど刃物の特徴や歴史をより深く追求できるフロアとなっています。
2階に上がって最初に目にするのは、カミソリウォール。その名の通り壁一面に1万7千枚もの剃刀の替刃を埋め込み、絵柄としてひとつの剃刀を浮かび上がらせています。
離れたところからは1枚の絵のように見え、とても剃刀の替刃でできているとは思えませんが、近づくと替刃を使っているのが確認できます。
日本で初めて国産の剃刀生産に成功したフェザー安全剃刀株式会社を象徴する展示となっています。
医療用刃物
医療用メス、理美容のハサミといった専門の道具がずらりと並ぶ精密刃物展示コーナーでは、その道のプロが使用する道具から技術の進化を学ぶことができます。
フェザー安全剃刀株式会社では、医療用メスを始めとしたメディカル製品を開発。ミクロレベルの精密さが要求される医療の現場で、フェザー安全剃刀株式会社は多くの医療従事者から信頼される高い品質の製品を生み出し続けています。
2階の「切るのひみつ(原理・原則)」コーナーでは、切る の仕組みについて分かりやすく紹介しています。刃物の断面図を見ながら、どのような力が加わると物を切断することができるのか、物理的な視点で考察できます。
また、「切るのたくさん」のコーナーは、石器時代からはじまった刃物や刃物にまつわる道具の変遷を解説。
「切るの展示映像」コーナーに入ると、正面と左右の三面がすべて巨大スクリーンになっており、様々な切るにまつわる映像が映し出されます。
2階にあるガラス張りの「収蔵庫」に展示されているのは、1万点を超えるフェザーミュージアムの収蔵品。安全剃刀、ハサミ、包丁など私達の生活に身近な道具をはじめ、日常生活で目にすることの少ない刀剣までが展示されています。
鎌倉時代に関市(美濃地方)で誕生した美濃伝。その技術は現代まで継承され、関市は日本を代表する刃物のまちとなりました。
現在、関市ではまちの魅力を世界へ向けてPRしようと、様々な取り組みをはじめています。
フェザーミュージアムは、その一端を担う観光拠点として大きな期待が寄せられているのです。