関市における刃物と観光

世界に認められた関市の刃物

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関市は「刃物のまち」として多くのファンを持ち、国内では高いブランド力を誇ります。実は、関市の刃物は国内のみならず海外の人々からも支持されています。関市の刃物ならではの品質やデザイン性の高さが、このような人気の背景にあるようです。
ここでは刀剣の特徴をふまえつつ、関市の刃物が世界でどのように評価されているのか紹介します。

「刃物の3S」として海外での知名度も高い

関市は、世界的な刃物の産地として有名なドイツのZWILLING(ゾーリンゲン)やイギリスのSheffield(シェフィールド)と並び、美しく品質の良い刃物を生み出す地域として知られています。この3地域は「刃物の3S」と称され、現在では関市で作られた刃物の多くが、世界各国で販売されています。

特に関市のポケットナイフ出荷額は、日本のポケットナイフ出荷総額の50%以上を占めているほど。

世界には膨大な数の刃物産地があるにもかかわらず、これほどまでに関市の刃物が評価されているのはなぜなのでしょうか。その理由を紐解いていきましょう。

価格よりも品質で世界に進出

1985年(昭和60年)までは、手ごろな価格でスタンダードな商品を輸出するのが、関市の刃物業界の方針でした。

ちょうどこの頃、プラザ合意で円高が進み、品質は良くても価格で中国に負けることが続いたため、一部メーカーが安価路線に方針を変更したという歴史があります。

しかし、価格競争で中国製に勝つことは難しく、関市の刃物輸出額は一時低迷します。

その後、関市の刃物メーカーは「低価格を追及するのではなく、関市の名に恥じないハイグレードな商品を提供する」というポリシーに立ち返ります。そして、関市の刃物の品質が諸外国で認められ、先述した刃物の3Sと呼ばれるまでに成長。

現在、海外への刃物出荷額は1985年(昭和60年)のプラザ合意のころに比べると、出荷額が減ったものの、2008年(平成20年)には地域団体商標として「関の刃物」を登録し、ブランド名としてその名が知られるようになりました。

有名フレンチレストランのシェフが愛用して話題に

株式会社スミカマは、高級刃物を制作する関市の刃物メーカー。同社は、欧米では食材によって包丁を使い分ける人が多いということに着目し、高品質で豊富な種類の包丁を展開しています。

2002年(平成14年)には、ドイツで開催された国際的な展示会「アンビエンテ」にて、スミカマの商品がDESIGN PLUSを受賞。高級感がある洗練されたデザインや関市の伝統技法による高い品質が人気を呼び、市場が世界各地へ拡大したのです。

さらに、フレンチでその名を知らない者はいないとされる有名シェフ、アラン・デュカス氏が愛用していることでも話題を集めました。

美濃伝から続く関市の刃物づくり

廃刀令

廃刀令

かつては斬れ味がよく、堅牢な「美濃伝」と呼ばれる刀剣作りで栄えた関市。

1876年(明治9年)の「廃刀令」(士族の帯刀を禁止した法令)で刀剣市場が打撃を受け、生活に根ざした刃物づくりへと転換しました。

関市が刃物の輸出を始めたのは、1894年(明治27年)「日清戦争」のころ。軍刀の需要が増え、第一次世界大戦によって輸出はさらに拡大します。

やがて関市の刃物の生産規模が大きくなり、1918年(大正7年)には岐阜県の認可による「関打刃物同業組合」が誕生し、地場産業として成長していきました。

関市の刃物が海外で評価されたのは、美濃伝から受け継がれてきた確かな品質にあったと言われています。

分業により付加価値をプラス

刀剣作りは制作から販売までを刀工がひとりで担っていた時代もありました。今でもそうした刀工は国内に存在しています。

しかし、現代の関市における刃物作りは、メーカーを中心とした分業体制が主流です。

具体的には、刃物を作る工程で発生するプレス、荒研磨、研削、研磨、刃付け、メッキといった必要な加工を専門の業者が担当。金型やプラスチック、木柄などの部品もそれぞれのメーカーが製造する物を使用するという分業体制となっています。

こうして各プロセスで専門家が培ったノウハウを活かし、刃物が完成する仕組みを確立。様々な種類の刃物を少量生産することや、付加価値の高い刃物を生み出すことが可能となっているのです。

刀剣は海外のコレクターにも人気

関市で作られる刀剣は、芸術品として人気です。国内でも刀剣にまつわるゲームが流行するなどファンが多く、世界各国に刀剣を収集するコレクターがいます。

美濃伝は切れ味がよく、刀身が丈夫で刃こぼれしにくいといった特徴が高く評価されています。

近年はインターネットが普及したことで、刀剣専門店などが海外からの注文にも対応できるようになりました。また、刀剣を作る刀工が海外へ出向き、刀剣の魅力を伝えるイベントなども実施されているほど。今後もさらなる海外での市場拡大が期待されています。

海外クリエイターと刀工の共同制作

近年では海外の著名デザイナーと日本の刀工がコラボレーションして刀剣を制作することも珍しくありません。

刀鍛冶は現在日本に300人ほどいるとされますが、刀作りだけで生計を立てられる刀工はほんのひと握り。このような刀工の環境を改善し、後継者不足を改善するとともに、海外の刀剣コレクターにも販路を拡大したいというのがコラボレーションの狙いです。

一方で、1000年以上受け継がれてきた刀剣は、デザイン性はもちろん「日本の物作りの精神が宿っている」と海外のデザイナーやアーティストからも注目されています。

刀剣をPRしたい日本側と新たなプロダクトを生み出したい海外デザイナー側の思惑が一致した取り組みなのです。

マーク・ニューソン氏とコラボレーション

aikuchi

aikuchi

最近では「iPhone6」や「Apple Watch」のデザインを担当したデザイナー、マーク・ニューソン氏がデザインを手掛けた刀剣「aikuchi」が話題を集めました。

このプロジェクトは、日本のデザインスタジオ「WOW inc.」がマーク・ニューソン氏にオファーしたことで実現したものです。

制作した刀剣の鞘には、彼が好んで使うボロノイ図(平面上にいくつかの点を配置する図)を敷き詰めてあり、華やかで目を惹く仕上がりとなっています。モダンなデザインが日本の伝統工芸品をより引き立てる、そんな1振に仕上がったのです。

「ミラノ・サローネ」でお披露目された日本刀

イタリアでは、毎年4月に家具・インテリアデザインの展示会ミラノ・サローネが開催されます。世界最大規模の展示会となるミラノ・サローネには、ヨーロッパを中心に世界中から約30万人が来場。この世界最高峰の展示会で2017年(平成29年)に関市の刀剣が展示され、話題を集めました。

試作品が話題を呼び、世界に向け限定販売

岐阜県関市にある長谷川刃物株式会社。同社のプロデュースした日本刀が「Honsekito」(本関刀)です。スイスのインテリアデザイナーであるパトリック・レイモン氏と関市に工房を構える刀匠、26代藤原兼房(ふじわらかねふさ)氏のコラボレーションにより生み出されました。

といった(こしらえ)は牛革製で金メッキ加工の銅を螺旋状に巻き付けてあり、匠の技を受け継ぐという思いを表しています。

このHonsekito(本関刀)の試作品は展示会で大きな話題を集め、10本限定で世界の美術品コレクターに販売することが決定しました。

こうした刀剣は1振数千万円で取り引きされることも珍しくなく、美術品としても高い評価を得ています。

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日本のほぼ中央に位置する岐阜県関市。2014年(平成26年)の刃物製品の出荷額は369億円、同年の輸出額は106億円(出典:岐阜県輸出関係調査、平成29年度[関市の工業])を誇ります。名実共に、日本の刃物産業を支えているのが関市です。輸出額はピーク時の1985年(昭和60年)より減少していますが、日本を代表する刃物の産地であることに変わりはありません。 鵜飼いと清流で有名な長良川の中流部にあり、人口約8万9,000人(2018年[平成30年]4月1日現在)を数える関市で、なぜ刃物産業が勃興したのでしょうか。刀匠が関市に移り住んだところから始まる関市の刃物産業の歴史。こちらのページでは、関市独特の刃物産業の構造をご紹介しましょう。

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医療の現場で活躍する関市の刃物

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関市の家庭用刃物

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九州から刀匠「元重」が移り住み、関市で初めて日本刀が作られたのは鎌倉時代。その後、室町時代には孫六兼元、兼定といった有名な刀匠を輩出しました。明治時代以降は家庭用刃物の生産に転向したものの、関市は今も刃物の町としてその名を知られています。 質の高い家庭用刃物を作る関市は、家庭用刃物の全国シェアの50%近くを占め、全国1位です。日本刀の時代から移り変わっても、包丁、ハサミ、ナイフなどの家庭用刃物の生産にシフトし、刃物産業を支え続ける関市。そんな刃物産業の中で重要な一角を担う関市の家庭用刃物についてご紹介します。

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関市の刃物 包丁の製造工程

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