「長篠一文字」(ながしのいちもんじ)は、織田信長が所有していた太刀で、1575年(天正3年)に起こった「長篠の戦い」で功績を挙げた「奥平信昌」(おくだいらのぶまさ)に、織田信長から褒賞として下賜された刀剣です。このことから、本太刀は奥平信昌によって「長篠」の号が付けられ、奥平家の家宝となりました。 その後は奥平信昌の子孫である武蔵野国忍藩(現在の埼玉県行田市)松平家に伝来し、「西郷隆盛」に渡ったのち、現在は個人蔵となっています。
本太刀は鎌倉時代中期に備前国(現在の岡山県)で興隆した、福岡一文字派の刀工の手による刀剣。刃文が絢爛なため、福岡一文字派の刀剣は古くから珍重されていますが、銘は一とのみ切られるものや、個銘を添えるものもあります。
本太刀の姿は鎬造りで身幅が広く、鍛えは板目肌に乱映りが立ったもの。刃文は華やかな大丁子乱れに足・葉共によく入り、小沸が付き、金筋がかかっています。
本太刀のような沸出来は、福岡一文字派の作中では稀少。しかし、華やかな大丁子乱れの刃文に、福岡一文字派の特色がよく現れています。