「脇差 銘 大和住月山貞利謹作 花押」を作刀した月山貞利(がっさんさだとし)は、のちに人間国宝(にんげんこくほう)となる月山貞一(がっさんさだかず)の三男として、1946年(昭和21年)に大阪府で生まれました。本名は月山清。
大阪工業大学在学中の1967年(昭和42年)に父・月山貞一が無鑑査刀匠(むかんさとうしょう)に認定されたことから、大阪月山派(おおさかがっさんは)の後継を決意し、父の門下で鍛刀の技術を学びます。刀匠名の「貞利」は、本間薫山(ほんまくんざん:本間順治)による命名。1975年(昭和50年)の新作名刀展で高松宮賞を受賞。そのあと数々の特賞を受賞し、1982年(昭和57年)に無鑑査刀匠に認定されました。
月山派に特徴的な綾杉肌(あやすぎはだ)から刀身彫刻(とうしんちょうこく)、そして相州伝(そうしゅうでん)など、様々な作風を得意としています。個展を各所にて開催し、メトロポリタン美術館やボストン美術館で作品が展示されるなど、国内外から高い評価を受けている刀匠です。また、後進の育成に努め多くの門弟を育てています。
本脇差は、刃文(はもん)は直刃(すぐは)で、匂口(においぐち)は明るく絞まり、刃縁(はぶち:刃文と平地の境界となる部分)に小沸(こにえ)がよく付いています。地鉄(じがね)は月山肌(がっさんはだ)とも呼ばれる綾杉肌で、精緻な地鉄です。差表(さしおもて)に「大和住月山貞利謹作[花押]」、裏に「平成十一年十一月七日」の年紀銘(ねんきめい)が切られています。