本太刀は、伊予西条藩(現在の愛媛県西条市)の松平家に伝来しました。制作者の「久国」(ひさくに)は、山城国(現在の京都府)を拠点とした「粟田口派」(あわたぐちは)を代表する刀工で、「後鳥羽上皇」の「御番鍛冶」(ごばんかじ)のひとりとされています。
久国の銘がある現存品は少数で、ほぼ手を加えられていない本太刀は貴重な作品です。鎬造り(しのぎづくり)、庵棟(いおりむね:屋根の形に見える峰/棟[みね/むね])、小鋒/小切先(こきっさき)で、反りが高く踏ん張りがある太刀姿は均整が取れており優美。また、小板目精緻に詰み地沸(じにえ)厚く付き沸映りの立つ地鉄(じがね)は、粟田口派の特色と言えます。刃文(はもん)は、小沸(こにえ)本位の直刃(すぐは)に小乱れ交じり。明るく冴えて表情豊かです。
本太刀は1931年(昭和6年)12月14日、重要文化財(美術品)に指定。1951年(昭和26年)6月9日には国宝に指定されました。現在は、東京都台東区にある「東京国立博物館文化庁分室」が保管しています。