日本刀鑑賞のポイント

日本刀の姿

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日本刀を鑑賞するポイントは、日本刀の美しさを構成している要素をよく観ること。ズバリ、日本刀の「姿」(すがた)・「刃文」(はもん)・「地鉄」(じがね)、そして「茎」(なかご)です。まずは、日本刀の姿に注目。日本刀の姿を作る、「鋒/切先」(きっさき)・「反り」(そり)・「造込み」(つくりこみ)・「長さ」を良く観て全体的にとらえることができれば、作刀された時代や個性を読み取れるようになれます。そこで、日本刀の姿について詳しくご紹介しましょう。

日本刀の見どころ 日本刀の姿

日本刀の見どころ「日本刀の姿」

そもそも日本刀の姿とは?

姿

日本刀の姿

美術品として日本刀の鑑賞を楽しむとき、見どころとなる部分はいくつかあります。その中でも、作刀された時代を知る有力な手がかりとなるのが姿です。

日本刀は、それぞれの時代の需要に合わせて作られているため、その姿の中に時代ごとの特徴が反映されています。つまり、日本刀の姿を知ることは、日本の歴史そのものを知ることにつながると言えるのです。

日本刀の姿は、別名「体配」(たいはい)とも呼ばれ、刀身(とうしん)の「茎」以外の部分、鋒/切先(きっさき)から「棟区」(むねまち)までを指します。姿は様々な部位から構成されており、日本刀を鑑賞する際には、そのひとつひとつに注目していくことが大切です。

ここでは、時代の変化を読み取りやすい、鋒/切先・反り・造込み・長さの特徴を取り上げ、それらがどこを指し、どのような役割を果たしているのかをご説明します。

「刀剣・日本刀の鑑賞ポイント」YouTube動画

刀剣・日本刀の鑑賞ポイント

日本刀の鋒/切先を観てみよう!

ふくら_横手_三つ頭_鎬筋

ふくら・横手・三つ頭・鎬筋

「鋒」は「切先」ともかかれ、この部位は、刀身の先端部分に当たります。具体的には、「鎬筋」(しのぎすじ)と刃から棟に引かれた「横手」(よこて)が交わる、「三つ頭」(みつがしら)より上の部分。日本刀の美しさが一番際立ち、敵を直接斬ったり、刺したりする部位でもあります。

鋒/切先の仕上がりが、その日本刀の美と威力を左右すると言っても過言ではありません。刀匠達は、この鋒/切先がさらに強固で切れ味の良い物になるように、合戦が繰り返されるたびに、改良を重ねていったのです。

鋒/切先の形状と種類

鋒/切先は長さや形によって、以下の5種類に分けられます。この鋒/切先を観るだけで、ある程度、作刀された時代の判定ができます。

鋒/切先の種類

鋒/切先の種類

かます鋒/かます切先(かますきっさき)
長さ:2~3cm。ふくら枯れる。平安時代~鎌倉時代。

小鋒/小切先(こきっさき)
長さ:2~3cm。ふくら付く。平安時代~鎌倉時代。
猪首鋒/猪首切先(いくびきっさき)
長さ:3~4cm。鎌倉時代中期。身幅(みはば)が広い太刀(たち)に中鋒/中切先(ちゅうきっさき)でふくら付いて詰まった感じに見えます。

中鋒/中切先(ちゅうきっさき)
長さ:3~4cm。ふくら付く。鎌倉時代中期~鎌倉時代後期。または室町時代、江戸時代。
大鋒/大切先(おおきっさき)
長さ:5cm超。ふくら付く。南北朝時代。または室町時代、江戸時代。

直刀時代(奈良時代以前)、鋒/切先の多くは小さく直線的でした。時代が経つにつれて、鋒/切先は伸びて、「ふくら」が曲線的になっていくのが特徴です。また、室町時代になると、日本刀全体のバランスと流行に呼応して、様々なタイプが登場します。

なお、ふくらとは、鋒/切先のカーブのこと。丸みがあることを「ふくら付く」、「ふくら張る」。逆に、丸みがなく鋭くなることを「ふくら枯れる」と表現。特に直刀時代の雰囲気を残した、小鋒/小切先でふくらが付かない直線的な物を「かます鋒/かます切先」と呼びます。

さらに、鋒/切先には刃文があり、鋒/切先の刃文のことを「帽子」(ぼうし)と言います。帽子は日本刀の華とも言える、刀工の個性が最大限に発揮された美しい部分です。

鋒/切先の形と帽子の部分は、時代によって異なる戦闘様式や流行によって変化するのはもちろん、難しい技術が必要な箇所で、刀匠の個性が最も表現される部位でもあります。

日本刀の反りを観てみよう!

反り

反り

鋒/切先から棟区までを線で結び、棟とその線までが一番離れている場所の寸法を「反り」と言います。この反りこそ、日本刀を象徴する美しさの要。反りが付くことによって、少ない力で効果的に物を切ることができるのです。

反りの種類

反りも、各時代の戦闘様式や日本刀の種類によって変化します。それは次の6種類です。

腰反り_中反り_先反り_内反り_筍反り_無反り

反りの種類

腰反り(こしぞり)
「茎」(なかご:刀身の手元部分)に近いところに反りの中心があるタイプ。平安時代後期~鎌倉時代前期。

中反り(なかぞり)
反りの中心が刀身の中心にあるタイプ。鳥居反り(とりいぞり)とも言います。鎌倉時代。

先反り(さきぞり)
反りの中心が刀身の中央より先にあるタイプ。室町時代~戦国時代。

内反り(うちぞり)
刀身の反りが棟側ではなく、刃のほうに反っている珍しいタイプ。上古代または鎌倉時代。

筍反り(たけのこぞり)
内反りの一種。刀身に反りが少なく、上身が刃のほうに傾いているタイプ。短刀によく見られる。鎌倉時代。

無反り(むぞり)
全く反りがない。剣術の竹刀に合わせて作られた物。江戸時代。

反りの位置

室町時代を境にして、それ以前は茎から反りが始まる傾向にあり、それ以降の日本刀は、刀身の中央よりも鋒/切先に近い部分の反りの物が多いようです。

反りがあることで得られる効果のひとつは、斬る物に対して刃が斜めに入るようになるため、少ない力でより効率良くその威力を発揮できること。また、重心の位置が「柄」(つか)に寄るようになるため刀身が軽く感じられ、反りがあまりない「無反り」の日本刀よりも、より実践向きでした。

ちなみに、平和な江戸時代中期には剣術が盛んになり、稽古で使う竹刀が真っ直ぐなので、それに応じた反りのない日本刀が制作されています。

日本刀の造込みを観てみよう!

「造込み」とは、日本刀の形状のこと。反り具合や鎬の有無、各部の厚みの違いにより、大きく2種類に分けることが可能です。この形状は日本刀独自の物で、日本刀の美しさは、鎬の高さと身幅のバランスで決定するとも言われています。

造込みの種類

造込みの種類としては、「鎬造り」(しのぎづくり)と「平造り」(ひらづくり)に大別できます。

造込みの種類

造込みの種類

鎬造りとは、別名「本造り」。刀身側の山形に高くなっている部分である鎬を造込むことです。この鎬造りにより、日本刀を強く折れにくくする効果があります。

なお、鎬筋は「棟側」に寄っているのがポイント。鎬造りができる平安時代より前の「切刃造り」(きりはづくり)は、鎬筋が刃側に寄っています。そのため、平安時代前期の物には、鎬筋がまだ中央に近い物も存在するのです。

一方、平造りとは、鎬のない平面的な造込みのこと。平安時代以前の太刀の多くは平造りでした。平安時代以降は短刀に多く、刃先が鋭利で切れ味に優れています。

鎬造り・平造りの断面図

鎬造り・平造りの断面図

鎬造りと平造り以外の造込み

造込みは、鎬造りと平造りの他にも、時代に応じて、以下の物が作られました。

両刃造り(もろはづくり)
両側に刃が付いている、剣タイプの造込み。室町時代に多い。

冠落造り(かんむりおとしづくり)
棟の上半分の肉を削ぎ落とし、菖蒲造りにした造込み。古刀期の大和伝、短刀に多い。

菖蒲造り(しょうぶづくり)
「菖蒲」(しょうぶ)の葉に似ているので、名付けられました。横手がなく、鎬筋が鋒/切先まで伸びる物。室町時代中期~室町時代後期。

切刃造り(きりはづくり)
日本刀が完成する前の直刀に多い造込み。鎬が刃側に寄っているのが特徴。鎬造りは、この切刃造りが進化した物。奈良時代に多い。

おそらく造り(おそらくづくり)
横手筋が刀の中心ぐらいまで下がり、鋒/切先が大きく鋭くなる造込み。室町時代の駿州助宗の短刀にこの造りがあり、「おそらく」と銘が切られていたので名付けられた。

片切刃造り(かたきりはづくり)
片側が平造りで、もう片側が鎬造りになっている造り込み。南北朝時代の相州伝や江戸時代前期、幕末に多い。

鵜首造り(うのくびづくり)
棟側から観ると、鵜の首の形に似ている。鋒/切先部分と下半分の棟を残し、その間の鎬地を削った物。鎌倉時代、南北朝時代の短刀、脇差に多い。
長巻造り(ながまきづくり)
薙刀を大きくしたような物。反りは浅く、中心が長い。室町時代に登場し戦国時代に多い。
薙刀造り(なぎなたづくり)
先身幅が張って反り、中心が長い。鵜の首造りに多く、長巻よりも寸が詰まる。江戸時代。
鎧通造り(よろいどおしづくり)
鎧の隙間を狙って刺し貫けるように作った物。身幅が狭く、重ねが厚い。鎌倉時代、室町時代。
(けん)
長さに関係なく、両刃で表裏、左右均等の物。

毛抜型太刀造り(けぬきがたたちづくり)
平安時代後期に流行。茎に毛抜に似ている透かしがある。

日本刀の鎬を観てみよう!

鎬/鎬筋・鎬地

「鎬」(しのぎ)とは、鎬造りの日本刀に現れる、刀身の側面(刃と棟の間)にある山形に高くなっている筋のこと。切れ味を良くするために刃の部分は薄く、さらに衝撃を緩和するためにこのようなくさび形になったと言われています。鎬は、刀身の中央に横手筋から棟区まで続き、これを「鎬筋」と呼び、鎬筋と棟の間の面を「鎬地」(しのぎじ)と言うのです。

鎬の高さを観る方法

鎬の高さを観る方法

鎬の高さを観る方法

鎬の高さを観るには、刀剣を真っ直ぐに立て、棟を正面にして鎬の山形が棟の左右に突起する具合を確かめます。鎬の高い刀剣とは、重ね(厚さ)と鎬の高さの差が2mm以上の物。平均的な鎬の刀は1mm。鎬の高さがほとんどない日本刀もあります。

身幅とは、棟から刃先までの幅のこと。大和伝の日本刀は、鎬が高いだけでなく身幅も広く、相州伝や備前伝は、比較的、鎬が低く身幅が広い物が多いのが特色です。

また、「鎬を削る」という言葉がありますが、語源はまさに、この日本刀の鎬。日本刀同士で闘うと、刃の鎬の部分が接触して削られてしまうことから、激しく争う様をそう表現するようになったのです。

日本刀の棟を観てみよう!

「棟」(むね)は、刀身の背にあたる、刃が付いてない側のこと。「峰」(みね)とも呼ばれ、刃が付いてない方で斬らずに打撃を与えることを「棟打ち」、「峰打ち」と言います。

棟の種類

棟は4種類あり、「三つ棟」(真の棟)、「丸棟」(草の棟)、「角棟」、「庵棟」(行の棟)です。

三つ棟_丸棟_角棟_庵棟

三つ棟・丸棟・角棟・庵棟

三つ棟(真の棟)は山城伝、相州伝の刀剣または短刀に多く、丸棟(草の棟)は九州や北陸の刀剣によく見られます。角棟は「平棟」とも言い、棟先の筋がなく平らに仕立てられています。庵棟(行の棟)は大太刀に多く、山形部分の傾斜が鋭い物を「庵高い」(いおりたかい)と言い、部分の傾斜がゆるい物を「庵低い」(いおりひくい)と言います。

重ねが薄い_重ねが厚い

重ねの厚さ

また、日本刀を「縦」にして、棟のほうから観た厚み、つまり棟部の厚さのことを「重ね」と言います。「重ねの厚さ」を観るには、刀剣を真っ直ぐに立て、棟を正面にして確かめるのです。

「棟の形」、重ねの厚さが合わなければ、刀身を鞘に収めることはできません。

上下の身幅の差・重ねの厚さ

また、柄の身幅と重ねをそれぞれ「元幅」(もとはば)・「元重ね」(もとかさね)、同じように先端部分の身幅と重ねを「先幅」(さきはば)・「先重ね」(さきかさね)と呼んでいます。

「身幅」の差「重ね」の厚さ

「身幅」の差「重ね」の厚さ

「身幅」の差「重ね」の厚さ 全体図

「身幅」の差「重ね」の厚さ 全体図

先幅と元幅の差が大きいことを「踏ん張りがある」と言い、この形状の物は鋒/切先が小さくなり、優美な印象のある姿になるのです。こうした踏ん張りがある姿は平安時代まで多く見られていましたが、鎌倉・南北朝時代には、先幅と元幅の差が小さくなっているのも特徴的。

また、身幅の変化を考えるときには重ねとの関係にも注目すると、より詳細に時代が見えてきます。身幅が広く、重ねが厚い姿の日本刀は、平安時代後期から鎌倉時代中期にかけての物で、身幅が広く、重ねが薄くなっている物は鎌倉時代後半から南北朝時代に主流になりました。

このように、「鎬の高さ」、「身幅」、棟の形と重ねの厚さのバランスが、刀剣の印象、美しさだけでなく、実用の際の使用感にも大きく影響するのです。

日本刀の長さを観てみよう!

日本刀の長さも、実は時代ごとに定まっています。長さとは姿と同じく鋒/切先から棟区までのこと。この長さにより、次の5つに分類できます。

「長さ」を観てみよう!

「長さ」を観てみよう!

太刀(たち)
2尺3寸~3尺(約70~90cm)。平安時代~室町時代まで。

大太刀(おおたち)
3~10尺(約90cm~3m)。主に南北朝時代。

打刀(うちがたな)
2尺(約60.6cm)以上の物。太刀よりは短い。室町時代以降。

脇差(わきざし)
1~2尺(約30.3~60.6 cm)以下の物。

短刀(たんとう)
1尺(約30.3cm)未満。

1尺は約30.3cm。1885年(明治18年)までは尺貫法が用いられていたため、日本刀の長さは「尺」で表記されるのが一般的です。

どうして長さが違うの?

時代によって長さが違う一番の理由は、戦闘の様式が変化したため。平安時代から室町時代前期までは、馬に乗って戦う馬上戦が主流でした。それも、位の高い者同士が1対1で戦う一騎打ち。したがって、平安時代から鎌倉時代の太刀の長さ2尺3寸~3尺(約70~90cm)は、乗馬して片手で抜刀・なぎ払うのに最適なサイズだったと言えるのです。

しかし、鎌倉時代後期に「元寇」(げんこう)を受け、集団戦を仕掛けられます。これにより、一騎打ちでは想定していなかった日本刀の欠点が明らかになるのです。重ねが厚く平肉が厚いと、重くて振り回すことができません。そして、焼き幅が広いと、硬度も裁断力も高いけれど欠けやすく、何度も太刀を合わせると折れてしまいます。さらに、元人が扱う両刃の剣に比べて、太刀自体が小さいことも欠点でした。

元寇には打ち勝ち、追い払ったものの、作刀方法の改善に迫られます。そして、硬軟の地鉄を組み合わせ、「折れない・曲がらない・甲鎧をも断ち切る」強度と軽量化を実現した相州伝が完成するのです。

これにより、南北朝時代には、日本刀が巨大化し、大太刀が主流に。大太刀は、巨大でも軽いので、馬上戦で背中にかついで、なぎ倒す戦闘スタイルになりました。長大で派手な武器を扱うことが、武士にとってのステータスとなったのです。

室町時代後期には戦国大名が出現し、戦が頻繁に起こります。戦闘様式は徒歩戦・一騎打ちスタイルに再変化し、打刀が登場。打刀は徒歩戦で日本刀が抜きやすく、太刀よりも少し短め。持ち主の身長・腕の長さに合わせて作られ、「磨上げ」(すりあげ)・「大磨上げ」という、太刀や大太刀の茎を短く切り整えて使用する手法も行なわれるようになりました。

さらに江戸時代には、「定寸」(じょうすん)が定められ、日本刀の長さは「2尺3寸5分」(約70cm)と決められたのです。

日本刀の茎を観てみよう!

これまでは、日本刀の姿を作る、「鋒/切先」・「反り」・「造込み」・「長さ」について紹介しました。次に、日本刀を観賞する上で重要な部分「茎」について観ていきましょう。

茎と上身

茎と上身


そもそも茎とは、日本刀を持つときに、直接触ることを許された部分です。そして茎には、「銘」(めい)という刀工名や制作年などの情報が記されているので、日本刀を鑑賞する上で、とても重要とされています。

日本刀の刀身は、大きく茎と「上身」(刃部分)に二分できます。茎は「中心」、「柄心」、「忠」と書いて「なかご」と読むことや「こみ」と呼ぶ場合もあるのです。茎の先端を「茎先」(なかごさき)、茎先の尻の面を「茎尻」(なかごじり)と言います。

茎は上身のように刃が付いていないので、直接触っても手が切れる心配はありませんが、そのままではとても握りにくいところ。握りをしっかりするために、柄に収めて使用します。具体的に説明すると、茎を柄に入れたあと、茎の真ん中に開けられた「目釘穴」(めくぎあな)に「目釘」(めくぎ)を通し、固定して使用するのです。

また茎は、時代や流派、刀匠の個性や違いが表現される部分だと言われています。それは、刀工が日本刀作りをする際、茎部分が最終工程にあたるため。日本刀全体のバランスを観た、最後に全精力を注ぐのが、茎なのです。

日本刀作りの仕上げは、「茎仕立て」(なかごじたて)と言い、茎が柄から抜けにくくするために、鑢(やすり)をかけてきれいに整え、目釘穴を開け、銘を切って完成させます。

茎・茎尻の形状とは?

茎を鑑賞する際は、「茎の形」、「茎尻の形」をしっかりとらえることが重要です。茎と茎尻は、時代や流派、刀工の個性や違いが顕著に表現される部分だと言われています。

実は、刀工が作品ごとに茎と茎尻の形状を変えるということはありません。そのため、茎と茎尻の形は、本当にその刀工の作品かどうかを見分けるヒントにもなるのです。

茎の形状の種類

「生ぶ」(うぶ:作られたままの姿)の茎を観ると、いくつかの形があることが分かります。茎は長さや形によって、以下の7種類に分類が可能です。この茎の形を観るだけで、ある程度、作刀された時代の判定ができます。

茎の形状

茎の形状

普通形(ふつうがた)
古刀から新刀時代全般。一般的な茎。
雉子股形(きじももがた)
平安時代から鎌倉時代。鳥の股の形に似ていることにちなんだ呼称。
振袖形(ふりそでがた)
鎌倉時代の短刀に多い。和服の振袖を思わせる形の茎。

舟底形(ふなぞこがた)
鎌倉時代、室町時代の相州伝に多い。舟底に似ていることからこの名が付いた。
タナゴ腹形(たなごはらがた)
室町時代の村正とその一門に見られる。魚のタナゴの腹に似た形。
薬研形(やげんがた)
江戸時代初期、繁慶(はんけい)一門のみに見られる。薬種を粉末にする「薬研」(やげん)という道具に似て、ゆるやかな弧を描く物を言う。
御幣形(ごへいがた)
江戸時代初期の伊勢守国輝(いせのかみくにてる)のみに見られる。神社に奉納する御幣(ごへい)に似て、最下部が切れ込んでいるのが特徴。

茎尻の形状の種類

茎尻も、刀工の個性がよく表れる部分。代表的な物は、以下の5種類です。

茎尻の形状

茎尻の形状

栗尻(くりじり)
一般的。丸い栗の実のようなタイプ。

刃上栗尻(はあがりくりじり)
栗尻のように丸みがあり、鎬筋を境にして、棟側よりも刃側の角度が急になるタイプ。
剣形(けんぎょう)
先端が左右対称に尖ったタイプ。

入山形(いりやまがた)
刃側が長く棟側が短く仕立てられ、先端が尖っているタイプ。

切り(きり)
横一文字に切り揃えたようなタイプ。一文字と呼ばれることもある。「切り」は磨上げの日本刀に多く、生ぶにはほとんど見られない。

鑢目の種類

鑢目

鑢目

茎の仕上げは、鉋(かんな)で整えて、さらに鑢をかけて完了。茎に鑢で仕上げた跡を「鑢目」(やすりめ)と呼びます。

鑢目は、主に10種類。鑢目があることで、ザラザラして滑りにくくなり、柄から茎が抜けるのを防ぐことが可能です。さらに鑢目は、時代や流派によって顕著に違いが表れる部分。右利きか左利きかなど、刀工個人の癖が出やすい場所であり、時代が経つにつれ、美しく装飾を施されるようになった部分でもあります。

鑑定上でも、刀工個人を特定する重要な決めどころとなるのです。

切鑢(きりやすり)
鑢を横(平行)に掛けた物。
勝手上り鑢(かってあがりやすり)
棟側の鑢目が少し上がった状態の物。
勝手下り鑢(かってさがりやすり)
棟側の鑢目が少し下がった状態の物。
筋違鑢(すじかいやすり)
刃側の鑢目がかなり傾斜良く上がった状態の物。
大筋違鑢(おおすじかいやすり)
筋違鑢の角度が急になった物。
檜垣鑢(ひがきやすり)
檜垣(檜の薄板を編んだような模様)が付いた物。
鷹の羽鑢(たかのはやすり)
鷹の羽のように鋒/切先方向へ山形になっている物。
逆鷹の羽鑢(ぎゃくたかのはやすり)
山形の鑢目が、鷹羽の鑢と逆になった物。
化粧鑢(けしょうやすり)
茎の美観を増すために、複雑に考案された物。新刀、新々刀期に限られる。

磨上げとは?

茎を鑑賞するときに、一番重要なのは、その日本刀が生ぶなのか、磨上げをされているのかを見極めることです。

磨上げが頻繁に行なわれるようになったのは、室町時代後期から。その理由は、戦闘様式が徒歩戦・一騎打ちスタイルに再変化し、打刀が主流になったため。打刀は、太刀よりも長さが短く、刃を上向きにして帯刀し、抜刀しやすいのが特徴です。したがって、従来の太刀・大太刀を実戦で使用するために、打刀に磨上げされました。

ちなみに、なぜ上身部分を短く詰めなかったのかと言うと、鋒/切先をカットすると、帽子が無くなってしまうからです。帽子はあとから付けることができないので、短く詰めるならば茎部分しかないということです。

茎の種類

茎の種類は、生ぶと磨上げに大別できます。さらに、生ぶは2種類、磨上げは4種類、合計6種類に細分されるのです。

茎の種類

茎の種類

生ぶ茎(うぶなかご)
作られたままの茎。磨上げをしていない物。

区送り(まちおくり)
「刃区」(はまち)と「棟区」の上部を削って、刃長を短くした物。茎は生ぶ扱いになる。

磨上げ茎(すりあげなかご)
日本刀の茎を切って短くすること。銘が残る物。

大磨上げ茎(おおすりあげなかご)
もとの銘が残らないくらい磨上げること。

折り返し茎(おりかえしなかご)
大磨上無銘(おおすりあげむめい)になるのを惜しんで、銘の部分を折り返した物。
額銘茎(がくめいなかご)
銘の部分を切り取って、茎に埋め込んだ物。

日本刀の銘を観てみよう!

銘

銘は日本刀を作った刀工が、茎に入れた名前や製造年月日などのこと。太刀は「佩表」(はきおもて)、打刀は「差表」(さしおもて)に入れることが決められています。

銘にはどんな種類があるの?

日本刀に銘を入れることが定められたのは、701年(大宝元年)に制定された「大宝律令」(たいほうりつりょう)によって。日本刀を作った作者は、法によって銘を入れることを義務づけられていました。時代が経つに連れて、刀工の居住地名や俗名など、様々な銘が見られるようになるのです。銘には、主に以下の種類があります。

刀工銘(とうこうめい)
刀工の名前。
刀 銘 井上真改
刀 銘 井上真改
井上真改
鑑定区分
重要美術品
刃長
69.1
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕
居住地銘(きょじゅうちめい)
刀工の居住地。
脇差 銘 勢州桑名住村正
脇差 銘 勢州桑名住村正
勢州桑名住村正
鑑定区分
特別保存刀剣
刃長
40.0
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕
受領銘(ずりょうめい)
国の長官である「受領」(現在の都道府県知事のような職務)の名前。
注文銘(ちゅうもんめい)
日本刀を注文した人の名前。
所持銘(しょじめい)
日本刀を所持した人の名前。
刀  銘 (葵紋)於武州江戸越前康継 以南蛮鉄末世宝二胴 本多五郎右衛門所持
刀 銘 (葵紋)於武州江戸越前康継 以南蛮鉄末世宝二胴 本多五郎右衛門所持
於武州
江戸越前康継
以南蛮鉄末世宝二胴 本多五郎右衛門所持
鑑定区分
重要美術品
刃長
72.6
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕
折返し銘(おりかえしめい)
磨上げをしたときに、銘を切らずに折り返した銘。
刀 折返銘 備前国住吉次
刀 折返銘 備前国住吉次
備前国住吉次
鑑定区分
重要美術品
刃長
67.6
所蔵・伝来
徳川宗直→
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕
短冊銘(たんざくめい)
銘の部分を短冊形に切り取って新しく仕立てた茎に嵌入(かんにゅう:はめ込み)をした物。
裁断銘(さいだんめい)
試し切りの評価。
刀 銘 摂津守源正友入道作(裁断銘)寛文十年戌十一月十四日 貳ツ胴裁断上大脇毛下二ノ胴 柴崎伝左衛門正次(花押)
刀 銘 摂津守源正友入道作(裁断銘)寛文十年戌十一月十四日 貳ツ胴裁断上大脇毛下二ノ胴 柴崎伝左衛門正次(花押)
摂津守
源正友入道作
寛文十年戌
十一月十四日
貳ツ胴裁断
上大脇毛下二ノ胴
柴崎伝衛門正次
鑑定区分
特別保存刀剣
刃長
71.2
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕
名物銘(めいぶつめい)
「号」(愛称)。

象嵌銘とは?

安土桃山時代になると、「本阿弥光悦」(ほんあみこうえつ)が豊臣秀吉の命によって、日本刀鑑定の極め所となり、日本刀の価値を記載した「折紙」(おりがみ)の発行を許可されました。

現代でも「折紙付きの~」と言うと、信用性が高いことを意味しますが、本阿弥家の鑑定はまさにそれ。その職務は、本阿弥家に代々引き継がれ、本阿弥家が鑑定をした証として、茎に銘文(磨上げ銘、極め銘、鑑刀者の氏名花押)が嵌入されました。これを「象嵌銘」(ぞうがんめい)と言い、次の4種類に分類できます。

金象嵌銘(きんぞうがんめい)
銘を象って金を嵌めて入れた物。大磨上げ、無銘の日本刀に限る。
刀 (金象嵌銘) 来国真
刀 (金象嵌銘) 来国真
(金象嵌銘)
来国真
鑑定区分
重要刀剣
刃長
70.4
所蔵・伝来
徳川吉宗→
雅楽頭酒井家 →
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕
銀象嵌銘(ぎんぞうがんめい)
銘を象って銀を嵌めて入れた物。大磨上げ、無銘の日本刀に限る。
朱銘(しゅめい)
銘を朱漆で入れた物。生ぶ、無銘の日本刀に限る。
太刀 朱銘 友成
太刀 朱銘 友成
(朱銘)友成
鑑定区分
重要刀剣
刃長
74.9
所蔵・伝来
鷹司松平家 →
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕
金粉銘(きんぷんめい)
金粉を交ぜた漆で銘を入れた物。生ぶ、磨上げを問わない。
刀 金粉銘 備前国兼長
刀 金粉銘 備前国兼長
磨上金粉銘
備前国兼長
貞享参寅年七日
代金子
弐拾枚折紙
鑑定区分
特別重要刀剣
刃長
70.3
所蔵・伝来
刀剣ワールド財団
〔 東建コーポレーション 〕

どうして無銘の日本刀があるの?

大宝律令という法律によって、銘を入れることが決められたはずの日本刀ですが、銘が入れられていない無銘の物も存在します。それは、以下の5種類です。

  1. 制作時には銘が入っていたが、磨上げをしたときに銘が切断されてしまった日本刀。
  2. 神社や仏閣に奉納する日本刀には、銘を入れない習わしがある「奉納無銘」という日本刀。
  3. 身分の高い人に献上する際には、銘を入れるのは失礼にあたるので入れない「献上無銘」という日本刀。
  4. 日本刀を新規に注文する場合、3振作った中から1振選び、残りの2振は銘を入れない「影打無銘」という日本刀。
  5. 大量生産品の日本刀。

銘の入った刀は価値が高いと思われがちですが、このような理由で無銘の日本刀があり、無銘の中でも国宝「無銘一文字」(山鳥毛一文字)や国宝「石田正宗」のように、価値の高い物が数多く存在します。

「銘を切る」の意味

銘を切る

銘を切る

「銘を切る」という言葉をご存じでしょうか。これは日本刀に名を入れること。

「タガネ」という棒状の工具を「槌」(つち)で叩くことによって、鉄の表面に切り込みを入れていきます。なぜ「彫る」ではないかと言うと、彫ると鉄クズを出してしまい、体積が変わってしまうから。鉄クズを出さず、体積を変えない方法が、銘を「切る」なのです。

このような理由で、刀工が名前を切ることはとても難しいとされています。銘だけを観ていると、お世辞にも銘が美文字という人は多くありませんが、「少しヘタ」または「ヘタうま」と言える味がある人など、とても個性的です。

一風変わった銘としては、「一」の文字だけを切った日本刀があります。これは、備前国の刀工一派、「一文字派」に共通する銘です。

姫鶴一文字(ひめつるいちもんじ)
「福岡一文字」作の「姫鶴一文字」(ひめつるいちもんじ)は、上杉家伝来の重要文化財です。一だけなら、文字の上手・下手が分からなくて合理的。

上杉謙信のエピソードや、関連のある刀剣・日本刀をご紹介します。。

「志津三郎兼氏」(しづさぶろうかねうじ)の銘
美濃国志津系の祖「志津三郎兼氏」(しづさぶろうかねうじ)の銘。「兼氏」の「兼」の文字が「魚」にしか見えないと言われ、とてもユニークです。

日本刀制作における代表的な刀工「兼氏」をご紹介致します。

刀 金象嵌 貞宗 本阿[花押]
(かたなきんぞうがんさだむねほんあ[かおう])
刀工に比べると、刀剣鑑定家・本阿弥家の歴代当主は、銘を切るのがとても上手と言われています。「本阿弥光温」(ほんあみこうおん)により、貞宗と定められた尾張徳川家に伝来する「刀 金象嵌 貞宗 本阿[花押]」。

特に、「本阿弥光徳」(ほんあみこうとく)による金象嵌は「光徳象嵌」と呼ばれ、在銘品以上の価値を付ける場合もあるのです。

「折紙」の起源と刀剣鑑定家・本阿弥家のつながりについてご紹介します。

これから日本刀を鑑賞するときは、銘の文字に注目すれば、いろいろなことが分かります。文字が左に寄っている人、右に寄っている人、大きい人など様々。文字から刀工の人柄や性格を想像してみるのも、面白いかもしれません。

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日本刀鑑賞ポイント

日本刀鑑賞ポイント
日本刀を鑑賞する際には、いくつかのポイントを知っておくと、より日本刀を楽しむことができます。観るポイントを押さえ、日本刀の美しさを体感しながら鑑賞することで、その深い魅力に気付くことができるのです。ここでは、そんな日本刀の鑑賞ポイントをご紹介します。

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刀剣鑑賞のマナー

刀剣鑑賞のマナー
2015年(平成27年)に「刀剣ブーム」が起こったことで、関連書籍も数多く発売されました。ところが、写真だけで伝えるのがとても難しく、専門用語を多く用いて説明しなくてはならないのが日本刀の特徴でもあります。そこで、難しく感じてしまう前に、実際に触れてみて、日本刀を味わってみるのはいかがでしょうか。 写真や展示では分からない重量感、茎(なかご)の感触など、直に触って分かることが沢山あります。作法を身に付ければ、刀剣鑑賞は難しいことではありません。日本刀に親しむことを目的としたビギナー向けのイベントは各地で催されており、その形式も様々ですが、ここでは、直に鑑賞することを前提に、必要な知識やマナーをご紹介します。

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日本刀の地鉄

日本刀の地鉄
「地鉄」(じがね)の美しさに気付くことは、日本刀を鑑賞する上で、とても重要なポイントです。地鉄とは、「折り返し鍛錬」によって生じた、「鍛え肌」(きたえはだ)・「地肌」(じはだ)の模様のこと。「姿」(すがた)や「刃文」(はもん)とともに、その刀が作られた時代や流派を見分ける決め手となり、刀工の個性を楽しむことができる見どころです。ここでは、日本刀の地鉄の見方について、詳しくご紹介しましょう。

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日本刀の刃文

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日本刀を鑑賞する最大の魅力と言えば、「刃文」(はもん)の美しさでしょう。刃文とは、「焼刃」(やきば)に入った「刃先」(はさき)の模様のこと。「帽子」(ぼうし)もまた「鋒/切先」(きっさき)に入った刃文です。刃文は「姿」(すがた)や「地鉄」(じがね)と共に、その刀が作られた時代や流派を見分ける決め手となり、刀工の個性を楽しむことができる物。ここでは、日本刀の刃文について詳しくご紹介します。

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日本刀の刀身彫刻・鑢目・疵・疲れ

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「日本刀」には様々な見所があります。それは、刀工によって細部までこだわりぬかれた結果です。ここでは、日本刀鑑賞における細かなポイント(刀身彫刻・鑢目・疵・疲れ)についてご紹介します。

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五箇伝(五ヵ伝、五ヶ伝)

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五箇伝とは、「大和伝」(奈良県)、「山城伝」(京都府)、「備前伝」(岡山県)、「相州伝」(神奈川県)、「美濃伝」(岐阜県)のこと。この5つの地域に伝わる日本刀作りの伝法は、独特であると同時に、優れた技術を互いに共有し、発展したのです。以下、五箇伝と呼ばれる、伝法の歴史と特徴をご紹介します。(※なお「五箇伝」は、「五ヵ伝」「五ヶ伝」と表記する場合もあります。)

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