「鍋島藤四郎」(なべしまとうしろう)は、肥前国佐賀藩の藩祖「鍋島直茂」(なべしまなおしげ)が所有していた短刀で、号の由来は、この鍋島直茂の所有に因んだものです。
その後、鍋島家から因幡鳥取藩(現在の鳥取県)の「池田光仲」(いけだみつなか)に伝わり、1700年(元禄13年)に「徳川綱吉」に献上。以降、代々徳川家に伝来し、将軍の元服時に先代より贈与される刀剣となりました。昭和時代には東京国立博物館に一時所蔵されていましたが、現在の収蔵場所は不明となっています。
鍋島藤四郎の作者・粟田口吉光は、短刀の名手として知られ、鎌倉時代に山城国で活躍した刀工です。同作中には名物が多く、「徳川吉宗」(とくがわよしむね)の時代に編纂された、刀剣の名物目録「享保名物帳」には、約40振もの刀剣が掲載されました。
本短刀は平造りで、地鉄は小杢目肌が詰まったもの。直刃調の刃文に足が入り、帽子は小丸に掃きかけ、粟田口吉光の特色がよく現れた1振です。