本太刀(たち)は、鎌倉時代末期から南北朝時代に備前国(現在の岡山県東部)で活躍した刀工「近景」(ちかかげ)が作刀した太刀です。
刃長(はちょう)は約80.6cm、反りは約3.0cmの大きさで、佩表(はきおもて:腰に付けた状態での表)には「備前国長船住近景」の長銘(ながめい)、佩裏(はきうら)には「嘉暦二二年□月日」の年紀銘が切られており、わずかに小丸の形状となっているのが特徴。
本太刀は、上総国(現在の千葉県中部)大多喜藩主「大河内家」に伝来し、大河内家の子孫で物理学者の「大河内正敏」(おおこうちまさとし)氏から、工具メーカー「株式会社ベッセル」の創業者「田口儀之助」氏などを経て、現在は個人蔵となっています。1935年(昭和10年)4月30日に旧国宝指定、1953年(昭和28年)11月14日に国宝指定となりました。
本太刀の制作者である近景は、「長船三作」や「長船四天王」のひとりに数えられる「長光」(ながみつ)に師事し、国宝や重要文化財に指定される名刀を多く作った名匠として知られています。