本短刀は、南北朝時代に備前国(現在の岡山県東部)で活躍した刀工「長重」(ながしげ)が作刀した短刀です。刃長は26.0㎝、浅い内反りが特徴。
本短刀の制作者である長重は、沸(にえ)や地景(ちけい)が激しく働く相伝備前と称される個性的な作風の刀剣を制作した南北朝時代の名工「長義」(ながよし/ちょうぎ)と兄弟の関係であったと言われています。本短刀は、「豊臣秀吉」に仕えた刀剣鑑定家「本阿弥光徳」(ほんあみこうとく)が差料として使用し、本阿弥家に受け継がれてきた名刀です。本阿弥家では、長義の傑作をも凌ぐ出来と太鼓判を押されました。
静かな焼にはじまって、物打上で激しく鎬(しのぎ)に迫る焼が入り、特に差裏は目を見張る素晴らしさです。刃縁(はぶち)よく沸付きも冴えが光り、地肌は杢目肌(もくめはだ)が目立つ造りとなっており、くっきりと目立つ地景がしきりに働き、相伝を強調しているのが特徴。
本短刀は、政治運動家の「杉山茂丸」氏の旧蔵品でしたが、現在は東京都の個人蔵となっています。