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江戸時代
おんうまじるし いちのまき いっかん 御馬印 一之巻 一巻 /ホームメイト

本絵の「馬標」(うまじるし:馬印)は、大将が戦場にて自らの陣地を示すため、馬側や本陣に立てた旗や幟(のぼり)のことです。本絵に描かれている馬標の「権現様」は江戸幕府初代将軍「徳川家康」、「台徳院様」は2代将軍「徳川秀忠」(とくがわひでただ)。そして「徳川御三家」(とくがわごさんけ)となる尾張徳川家、紀州徳川家、水戸徳川家などの馬標が続くのです。
そもそも「御馬印」とは、寛永期頃(1624~1644年)に刊行された書物で、全6巻にわたって総計170人分の馬標を掲載しています。本絵はその一之巻にあたり、墨刷(すみずり)と、白・朱・水色の彩色刷を併用。
さらに墨刷となる箇所には金・銀・墨・赤・黄・緑・茶などの手彩色も加えられています。彩色刷であることを示すように、天地や左右には見当(けんとう:複数回刷る際の目印)と推測される墨線があるのが本絵の特徴です。
また料紙の中央には「一ノ」や「四」といった巻数、丁数(和装本における紙の枚数)を表記し、読み手にどの巻やページを開いているのか伝える工夫がみられます。
本絵における伝本は極めて少なく、全6巻揃っているのは「国立国会図書館」(東京都千代田区)のみ。一巻も「宮内庁書陵部」(東京都文京区)や「早稲田大学」(東京都新宿区)が所蔵するのみとなっています。
そして本絵は墨刷と彩色刷を併用するなど、のちの「錦絵」(にしきえ:多色刷のこと)へと進化する最初期に位置付けられる作品。そのため本絵は希少性の高さに加え、日本印刷文化史上においても貴重な史料と言えます。