本直刀(ちょくとう)は、茨城県鹿嶋市の「鹿島神宮」(かしまじんぐう)に神宝として伝わる刀剣で、「韴霊剣」(ふつのみたまのつるぎ)とも呼ばれています。 韴霊剣は、日本神話に登場する霊剣であり、「建御雷神」(たけみかづちのかみ)の神刀です。
「神皇正統記」(じんのうしょうとうき)には、「初めは大和[現在の奈良県]の石上に座し、のちには常陸[現在の茨城県]の鹿島神宮に座す」という記載も見られます。
本直刀は、刀身(とうしん)が223.4cm、鞘長が228.1cm、柄長が40.2cmのサイズで、全長は271cmに及ぶ非常に大きな刀剣です。現存する直刀としては、日本最古最大とも言われています。その長大な刀身を作るために、途中の4ヵ所を繋ぎ合わせるという、非常に珍しい手法で作られているのが特徴です。
本直刀の制作者や由来について、詳しいことは分かっていません。刀身は奈良時代から平安時代、拵(こしらえ)は平安時代の制作ではないかと推測されています。 外装には黒漆塗りの上に平文(漆工芸の技法のひとつ)などが施されていることから、制作は「正倉院」(しょうそういん)(現在の奈良県奈良市)の「金銀鈿荘唐大刀」(きんぎんでんかざりのからたち)の流れを汲むものではないかと考えられています。