本鞍には、右の「滝口」(たきぐち:乗り手が腰を下ろす「居木」[いぎ]と、足をかける「鐙」[あぶみ]の「鉸具頭」[かこがしら:鐙の頭部にある革緒を通す鉄輪]とをつなぐ革「力革」を通すために居木に開けられた穴[力革通しの穴]に沿って居木の裏側に掘り込まれた溝)に花押を刻んだ銘がありますが、作者は不明です。
「前輪」(まえわ)と「後輪」(しずわ)の外側中央では、疾走する3頭の野生馬の様子を「金蒔絵」で表現。本鞍の骨格をなす「鞍橋」(くらぼね)は重厚で堅固であるため、室町時代に制作された物であるとも考えられますが、鞍に装飾が施されたのは、江戸時代であると考えられます。