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昭和時代
まえだせいそん さく「ほうたいこう」 前田青邨 作「豊太閤」 /ホームメイト

本絵画は、1972年(昭和47年)に発売された「前田青邨作品集」に収録されている1枚です。朝鮮半島と中国大陸の古地図(赤印は左下から上海・北京・漢城)を背景にして、豊太閤(ほうたいこう:豊臣秀吉の敬称)「豊臣秀吉」の肖像画を配した独創的な着想で描かれています。
豊臣秀吉と言えば、天下統一を成し遂げたあと、2度に亘る「朝鮮出兵」(文禄の役・慶長の役)を行なったことでも有名です。本絵画からも、日本に止まらず、朝鮮半島から中国大陸への勢力拡大を目指した豊臣秀吉の「野心」を感じ取られずにはいられません。
本絵画の作者「前田青邨」(まえだせいそん)は1885年(明治18年)、岐阜県恵那郡中津川町(現在の岐阜県中津川市)で生まれました。1937年(昭和12年)に現在の「日本芸術院」の前身となる「帝国美術院」の会員となったあと、他界する1977年(昭和52年)まで40年に亘って、日本芸術院の会員を務めるなど、戦前戦後における日本美術(日本画)の発展に貢献。逝去した92歳まで絵筆を握り続けました。
また、晩年には「法隆寺」の金堂壁画再現事業や、「高松塚古墳」の壁画模写事業において総監修者を務めるなど、文化財保護事業にも尽力したことでも知られています。
平安時代に発達したと言われる日本的な画法「大和絵」(やまとえ)の伝統的精神を受け継いだ前田青邨の得意分野は歴史画。武者絵における甲冑(鎧兜)の精緻な描写は、他を寄せ付けないと言われています。さらに「琳派」(りんぱ)の要素が取り入れられたことで、より深みを増し、「青邨芸術」と言うべき独自の世界観を確立しました。
このように、大正・昭和期における日本画壇の巨匠として活動した前田青邨の代表作には、1929年(昭和4年)に制作され、「重要文化財」に指定されている「洞窟の頼朝」(大倉集古館所蔵)や、1935年(昭和10年)に制作された御即位記念献上画「唐獅子」(三の丸尚蔵館所蔵)などがあります。
