実際にコスプレ衣装を制作するときにポイントとなる工程はいくつもあります。ミシンを使うのもそのひとつ。
ここでは、コスプレ衣装作りでのミシン糸の選び方やミシンの使い方、上手に縫うコツまで、詳しいノウハウをご紹介します。また、生地の違いによる注意点、アイロンのかけ方、そして衣装を傷めずに収納する方法なども取り上げました。
衣装制作のノウハウをマスターして、新しいコスプレにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
ミシン糸には30番手、60番手、90番手という太さを表す「番手」という単位があります。 数字が小さくなると糸は太くなっていき、数字が大きくなると細くなっていくのです。
例えば、90番は9号の針でサテンやオーガンジーなどの薄手の布を縫うときに使い、60番は11号の針でシーチングやツイルなどの普通地を縫うときに使います。デニムや帆布などの厚手の布は、30番で14号の針が良いでしょう。
コスプレ衣装でよく使われる合皮やストレッチ性のある布地の場合は、糸も伸縮するタイプを選ばなければなりません。ストレッチ素材を縫うときは、必ずレジロン(ニット用)のミシン糸を使うようにします。
手芸店には、糸コーナーの近くに見本帳が置いてあるので、実際に使う布をあてて近い色の糸を選びましょう。
色の薄い布の場合は、明るい色の糸を選び、色の濃い布の場合は暗い色を選ぶと縫い目が目立ちません。また柄の場合は、その布で1番多く使われている色の糸を選びます。
まっすぐ縫うだけでも意外とコツが必要です。縫い目のきれいさは作品の出来にも大きく影響するので、確実にマスターしておきます。
縫い目が曲がってしまう1番の原因は「針を見ているから」。目線は針の先ではなく、針板(ミシンの銀色の板)にします。
針板のメモリ
ミシンによっては、針板にメモリの付いた機種があり、これは縫いの幅を示しているのです。
例えば、1.0cm幅で縫いたいなら、10と書かれたメモリに生地の端を合わせて縫うと、針から生地の端までの距離が1.0cmとなり、1.0cm間隔でまっすぐに縫うことができます。
針板のメモリを見ながら縫えば、自動的に縫う幅が決まるので、生地に印をしなくても良いのです。
ミシンの針板にメモリがないときは、身近にある道具を使って代用してみましょう。色付きのマスキングテープなどを縫いたい幅にカットして貼り付け、テープの端に沿って縫うと、まっすぐきれいに縫えます。
ファーや厚い生地を縫うときには、テープでは見えにくい場合があるため、厚紙で高さを付けた物を作り、ガイドにすると良いでしょう。
ミシンでまっすぐ縫うための道具もあり、それがミシン針の上に固定する「ステッチ定規」です。白いネジを回せば左右に動き、縫う幅を自由に変えられます。
また裏が磁石になっていて、針板にくっ付ける「マグネットタイプ」もあり、どんなミシンでも使用可能です。
そもそも縫い線が曲がっていたとしたら、まっすぐには縫えません。また太すぎても、曲がる原因となりますので、必ずまっすぐ細い線を書くようにします。
意外と気が付かないのが姿勢。ミシンの前に斜めに座ったり、座る位置がずれていたりするだけでも、線は曲がってしまいます。
ミシンの針とおへその位置がまっすぐになるよう座りましょう。そして、一定の速さでゆっくり縫うのがポイントです。
衿のパーツ
曲線縫いも直線縫い同様、「ミシン針をゆっくり動かし、カーブラインに沿って手で布を送っていく」のが基本動作となります。
特に難しいのが、衿、袖など異なる形のカーブを縫い合わせる場合。
針の手前で、上下のパーツの形を縫い幅と同じように変形させなければならず、非常に神経を使う部分です。
衿、袖など異なる形のカーブを縫うときは、まず上になるパーツの方に、チャコペンシルでできあがり線の印を付けます。
まち針やクリップで留めるだけでは縫いずれしやすいので、しつけ糸できちんと仮縫いを。しつけ糸は、縫う線より0.2cmほど外側を並縫いします。
準備が済んだら、ミシンでゆっくりと縫っていきますが、下の生地がタックやギャザーになりやすいため、左手で下の生地を平らにしながら、右手で縫い幅に気を付けて縫うのがコツです。
大切なのは「縫う部分を平らにする」ということ。カーブに合わせて、布を手で回しながら縫っていきます。ミシンをこまめに止めて、カーブに沿って方向を変えながら縫いましょう。
針が生地に刺さっているのを確認してから、押さえを上げて、向きを変えたらまた押さえを下げて、縫い進めます。針が刺さってないと、縫い目がガタガタになってしまうのです。
上になるパーツを立て気味(立体的)に起こして、下の生地端と合わせて縫うと、平らに持つよりもカーブの形が合いやすくなります。
もっと簡単にカーブを縫えるのが、切り込みを入れる方法です。
カーブの強いところに、切り込みを入れると直線に近いラインになり、縫い合わせがやりやすくなります。
ただし、切り込みを入れると負荷がかかり、ほつれたり、破れの原因になったりする場合もあるので、切り込みは浅めに入れましょう。
ニットは、どんどん伸びたりずれたりして長さが合わなくなってくるため、非常に難しい布です。普通の縫い方では糸が切れるので、ニット用のレジロン糸を用意し、上糸の調子を強めにして縫います。
紙やすりをはさむ
ずれ防止には、細かい番手の紙やすり(なければコピー用紙でも可)を帯状に切って、布と押えの間にはさむ方法も有効。
また、紙では下地が見えなくなるため縫いにくいという場合は、透けているセロファンがおすすめ。
いずれにしても、一緒に縫ってしまわないよう注意が必要です。
合皮は縫うと穴があき、もとに戻らないので縫い直しが難しい生地。1度でうまく縫えるように、しつけをします。しつけでなくても、仮止めクリップやステープラを使っても良いでしょう。
合皮を縫うためのミシン針は、普通の生地用の針で良い(薄地なら11号、厚地なら14号の針がおすすめ)ですが、レザー用のミシン針もあります。これは、普通の針より針先が尖っており、合皮の生地を切るように刺さるため、厚い合皮生地もスムーズに縫えるのです。
また合皮は摩擦が強く、細い糸だと途中で切れてしまうことがあるため、ミシン糸は、普通生地用の30番がおすすめ。
縫い目の大きさは、普通生地より粗めにし、糸調子や押さえの圧力も弱めに設定を。すべての設定ができたら、はぎれで試し縫いをします。合皮は滑りが悪く、押さえの裏にくっついてうまく進まないことがあるので、本番に挑む前に必ず縫い方に慣れたり、縫い目の状態をチェックしたりしましょう。
縫い方は、縫い始めと縫い終わりは返し縫いをしないで糸を長めに残し、裏側で糸を結びます。厚みに耐えきれず針が折れてしまうことがあるので、様子をみながら手動ではずみ車を回すことが大切。縫い直しが必要になってしまった場合は、丁寧に糸をはずし、同じ穴に針が落ちるように縫いましょう。
それでもうまく縫えないときは、押さえにメンディングテープを貼る、シリコン剤を塗る、トレーシングペーパーやクッキングシートなど、薄い紙を合皮の上にのせて縫う、フッ素樹脂押さえを購入するなどの工夫がおすすめです。
縫った服が野暮ったく感じることがあります。それは「縫い代が落ち着いていない」から。
それを解決するには、アイロンを丁寧にかけてみましょう。1ヵ所ミシンをかけたら、すぐにアイロンをかけるのが基本です。
片倒し(片返し)アイロンは、縫い代を開かずに片方に返して落ち着かせる方法。縫い代を2枚まとめてロック始末をしてから、片側へ倒し、アイロンをかけます。倒す方向は、身頃なら後身頃側へ、袖なら後袖側です。
まず、縫い目にあて布(手拭いがおすすめ)をしてアイロンをかけ、落ち着かせます。そのあと布を開かずに、縫い代を2枚一緒に縫い目で折り返しに。こうすることで縫い目線がきれいに仕上がります。
まち針やしつけ糸が残っていたら、かならず取り除いてからアイロンをかけましょう。まち針やしつけ糸の上からアイロンをかけてしまうと跡が残ってしまうからです。
ミシンで縫ったあとは、どうしてもミシン目がつった状態になりますが、これを落ち着かせるために、まず縫い代を割る前にミシン目にあて布をしてアイロンをかけます。このとき、布は少しひっぱりぎみに。
次に縫い目が曲がらないように開き、指で縫い代を開きながら、先端部分で縫い目を押さえるようにしてアイロンをかけていきます。
縫い代が安定したらもう一度開いた縫い代にアイロンをかけて整えましょう。このときもあて布を忘れずに。
ドライアイロンだけではうまく縫い代が割れないウールなどの厚い生地の場合は、縫い代を手で割り、はけで水をのせ、ドライアイロンで縫い目を押さえるようにしてアイロンをかければきれいに縫い代を割ることができます。
ギャザーを寄せて厚くなった縫い代には、アイロンの先を少しずつあてて落ち着かせると、きれいな仕上がりに。
ただし、合皮など布地によってはアイロンしにくい物もあるので、そのときは、ステッチをかけたり、Gボンドなどを使って貼り合わせたりしても良いでしょう。
コスプレ衣装の制作におけるポイントは、制作過程は自分のアイデアで自由に作って構わないということです。ミシンがないなら布用ボンドや両面テープでも作れますし、型紙がなくても布を自分に巻いて切り貼りする手法も。
自作コスプレイヤーは、お互いに同じ苦労をしていますので、作り方が気になったらぜひ直接聞いてみましょう。
衣装のクオリティは、アイロンで決まると言っても過言ではありません。
生地には、地の目によって伸びやすい方向があり、アイロンをかける際は、地の目の方向を考え、布に対して縦方向か横方向にかけます。斜めにかけると、バイアス方向なので布が伸びたり歪んだりするので絶対にしてはいけません。
また、袖などのどうしてもかけにくい部分以外は、生地を傷めないようにするため基本的に布の裏からかけます。
素材によって、温度を使い分けることも重要。間違えると、しわが取れなかったり、生地が溶けてしまうことがあったりするので、もし適温が分からなければ切れ端を使ってアイロンをかけてみて、問題がないか試してみましょう。
生地のしわを取るときは、まずはスチーム。そして、ドライアイロンをあてて生地の水分を飛ばします。生地に水分が残っていると、かえってしわがつきやすくなってしまうため、丁寧に行ないましょう。
衣装が完成してもまだ気は抜けません。実際に着てみたり、トルソーから眺めてみたりして、あらゆる角度から以下の点をチェックしてみましょう。
様々な形や大きさのコスプレ衣装や小道具をどう収納しておくのかは、コスプレイヤーが悩む問題のひとつです。せっかく作った衣装や小道具をいつでも取り出せる状態にしておくためのアイデアをご紹介します。
すぐ使う、頻繁に使う場合、また、合皮やエナメルなどのシワを伸ばすのが難しい素材の衣装は、ハンガーに吊るしておいた方が、しわになりません。
そうでない場合は汚さないよう圧縮袋に収納しておきましょう。圧縮袋は100円ショップやホームセンターなどで購入できます。
ウィッグの収納例
100円ショップで購入できる透明・半透明のファスナーケースやクリアケースが収納に重宝します。
開けなくとも中のウィッグの色が分かる上、背中にキャラ名を書いておけば、棚にしまった状態でもすぐに欲しい物が取り出せます。
武器や鎧などの造形物は、大きい物が多いため、はじめからパーツごとに分解できるように制作することをおすすめします。
例えば、全長2mの長斧を、1m×2本の柄と刃(先端)の3パーツに分けるなど、イベント時の持ち運びやすさ、家での保管のしやすさを考えておくと良いでしょう。