刀装具・拵

日本刀の柄とは

文字サイズ

「柄」(つか)とは、刀剣の握る部分を指し、内部に「茎」(なかご)を収めています。柄の芯はほとんどが木製で、多く用いられる素材は「鞘」(さや)にも使われる「朴の木」(ほおのき)。また刀剣の柄は実用面ばかりでなく、装飾的な価値を決める刀装具の一部としても重要視されました。柄の構造と作り方、柄糸(つかいと)の巻き方、柄の種類について見ていきます。

柄の構造と作り方

鮫皮と呼ばれるエイの皮を使用

柄

刀剣の柄は、「鞘師」(さやし)が作った柄木地(つかきじ)に、磨き上げた「鮫皮」(さめがわ)を続飯(そくい:飯粒で作ったのり)で接着し、柄糸を巻くのが基本的な構造です。

鮫皮と呼ばれていますが、実際はエイの皮。エイの皮は、柄木地が割れるのを防ぎ、柄糸のずれを防止して、美観を保つための素材として使用されているのです。

日本近海では柄の材料として適したエイが獲れないため、東南アジア諸国からの輸入に頼っていました。

柄の作り方

親粒

親粒

鮫皮には最も大きな粒である「親粒」(おやつぶ)という真珠のような大粒の突起があり、これは1枚の皮からひとつしか取れません。

この親粒をいかに際立たせるかが、専門の職人である「柄巻師」(つかまきし)の腕の見せどころ。

また、柄糸の巻き方も多様で、柄巻師の技術力が物を言います。

  1. 鮫皮を磨く

    はじめに柄巻師が用意するのは、乾燥させた鮫皮。これを水で濡らしてやわらかくします。

    続いて磨きの作業。最初に目の粗いブラシで汚れを落とし、その後、研磨剤を使って竹製ブラシで丹念に磨いていきます。

  2. 鮫皮の艶を出す

    うづくり

    うづくり

    茅(かや)の根を干して束ねた道具「うづくり」を使い、イボタ蝋で鮫皮を磨く作業。

    イボタ蝋は、植物のイボタに付くイボタムシの幼虫の分泌液から精製されます。

    鮫皮に宝石のような艶が出るまで根気よく磨かなければなりません。

  3. 鮫着せ

    柄木地に鮫皮を巻く作業。鮫皮は湿気によって伸縮するため、寸法を合わせるために、鮫皮を柄に巻いて紐で固定し、数日置いたのち開いて余った部分を切除するという工程を繰り返す場合があります。

    最終的に余りがないことを確認したら、続飯で糊付け。どのタイミングで糊付けするかは柄巻師それぞれのやり方で決まります。

  4. 柄糸を巻く

    柄巻師

    柄糸を巻く

    先の尖った「くじり」という道具を使って、和紙を柄糸と鮫皮の間に入れながら巻いていく作業。

    和紙を入れるのは、手に持ったときの感触を良くするためと、立体的な美しさを出すため。松脂(まつやに)を油で煮て練った「薬練」(くすね)を塗り、接着効果を高めます。

    柄糸を巻く際は、親粒がきれいに見えるよう菱形に巻くのが肝要。柄糸の素材は、正絹の他、鹿革や鯨のひげ、藤の蔓など多種多様です。

柄の種類

柄は柄糸の巻き方や素材によって、様々な種類に分かれています。

また、馬上で使用するのに適した太刀の柄は片手でも持ちやすいように反りがありますが、南北朝時代から室町時代にかけて主流となった打刀の柄は、両手で持って地上で戦うために真っすぐです。

さらに、打刀の柄は中央部がやや細くなっており、このへこみによって刀剣はより持ちやすくなりました。

太刀柄(たちづか)

太刀柄

太刀柄

太刀専用の柄です。柄は長めで、馬上戦で素早く抜けるよう刀身から柄まで滑らかに反っています。

柄糸を巻かず、鮫皮のままの太刀柄もありました。これは、弓を射るために「鞢」(ゆがけ)という革手袋を身に付けていたので、ざらざらとした鮫皮の柄を握っても痛くなかったからと言われています。

糸巻柄・蛇腹組
(いとまきづか・じゃばらぐみ)

蛇腹糸で巻いた柄。

蛇腹糸とは、強く縒り(より)をかけた糸を2本合わせて、さらに縒りをかけた糸のことです。

柄巻では、右縒り糸2本と左縒り糸2本の4本1組で巻きます。

糸巻柄_蛇腹組

糸巻柄・蛇腹組

糸巻柄・常組(いとまきづか・つねぐみ)

混じり物がない本絹のみで編んだ常組糸を巻いた柄。

常組糸は蛇腹糸と同じく、右縒り糸と左縒り糸を組み合わせ、偶数の糸で仕上げた組紐です。

糸巻柄_常組

糸巻柄・常組

革巻柄(かわまきづか)

藍色に染めた鹿革や、藁の煙で燻した燻革などで巻いた柄。

江戸時代初期まで多く用いられました。

革巻柄

革巻柄

出鮫柄(だしざめづか)

柄巻をせず鮫皮を着せた柄。短刀(こしらえ)に多い柄です。

鮫皮のみの柄は素手で握ると痛く実用的ではないため、儀礼用としての側面が重視されたと考えられています。

出鮫柄

出鮫柄

圧出鮫柄(へしだしざめづか)

鮫皮着せの代わりに、金属板に鮫皮状の突起を圧出してかぶせた柄。古くは飾剣の柄として用いられました。

安土桃山時代作品には、装飾のために金粉を塗った豪華な柄もあります。

圧出鮫柄

圧出鮫柄

塗柄(ぬりづか)

柄巻がなく、漆で塗った柄。鮫皮は使用していません。

塗柄

塗柄

唐木柄(からきづか)
紫檀(したん)など中国を経由して輸入された唐木を使用した柄。鮫皮は使っていません。
唐木柄

唐木柄

糸片手巻柄(いとかたてまきづか)
柄の地肌が見えないよう密に糸を巻いた柄。
糸片手巻柄

糸片手巻柄

皮片手巻柄(かわかたてまきづか)
皮紐を螺旋状に巻いた柄。
皮片手巻柄

皮片手巻柄

藤蔓巻柄(ふじつるまきづか)
藤の蔓で巻いた柄。藤蔓は柔軟で強度もある素材です。
藤蔓巻柄

藤蔓巻柄

柄巻の種類・巻き方

柄は、柄糸の素材だけでなく、柄糸を捩じったり、撮(つま)んだりするなど多くの手法があり、さらに色や組み方を変えることで個性を生み出しているのです。

数多くある柄糸の巻き方のうち、主な種類をご紹介します。

文字掛け・巻戻し(もじかけ・まきもどし)
平打ちの糸をそのまま巻く手法。
文字掛け

文字掛け・巻戻し

平巻(ひらまき)
平織した糸を上下にクロスさせて重ねた巻き方。柄糸の重なった部分が盛り上がらず平坦に仕立てられます。
平巻

平巻

諸捻巻(もろひねりまき)
上下の糸を共に捻って巻く手法。柄糸による盛り上がりが高くなります。
諸捻巻

諸捻巻

方撮巻(かたつまみまき)
上糸を撮んで、下糸を捻って巻く手法。
方撮巻

方撮巻

諸撮巻(もろつまみまき)
上下の糸を共につまんで巻く手法。重ねた部分は高く盛り上がります。
諸撮巻

諸撮巻

篠巻(しのまき)
3本の柄糸を1組として中央の糸だけを捻り、左右を折り返す巻き方。
篠巻

篠巻

絡巻(からめまき)
篠巻と同じ巻き方で、左右の柄糸を捻る手法。
絡巻

絡巻

結巻(むすびまき)
篠巻の左右の柄糸を結んだ巻き方。
結巻

結巻

捩巻(ねじりまき)
上下の柄糸を2度捩じって巻く手法。
捩巻

捩巻

雁木巻(がんぎまき)

階段状の雁木のように、柄糸を1本ずつ並べた巻き方。

剣豪の「宮本武蔵」が考案したとされ、「武蔵巻」とも言います。

雁木巻

雁木巻

蛇腹糸組上巻(じゃばらいとぐみあげまき)

上下に1度巻いた上に、さらにもう1段組んで巻く手法。蛇の背中にある鱗の模様のようになります。

蛇腹糸組上巻

蛇腹糸組上巻

スペーサー画像

日本刀の柄とは

日本刀の柄とはをSNSでシェアする

「刀装具・拵」の記事を読む


刀装具(鍔・目貫・笄・小柄・鎺・柄・鞘)

刀装具(鍔・目貫・笄・小柄・鎺・柄・鞘)
「刀装具」(とうそうぐ)とは、日本刀の拵(こしらえ)に付いているすべての部品のことを指しています。刀装具が付けられている目的や種類は多岐に亘り、日本刀が持つひとつの特徴です。ここでははじめに刀装具とは何か解説し、次に刀装具を部品ごとに詳しくご紹介していきましょう。 名古屋刀剣ワールドの刀装具 YouTube動画 play 刀装具 鍔 play 刀装具 鎺 play

刀装具(鍔・目貫・笄・小柄・鎺・柄・鞘)

刀装具とは

刀装具とは
「刀装具」とは、「日本刀」の外装のことで、元々は刀を守る役割の保護具でした。しかし、時代を経るにしたがい、歴史に名を残す将軍や戦国武将をはじめ、武士階級以外の者もそれぞれの嗜好に合わせた刀装具をあつらえるなどしたため、見た目を意識した物へと変化していったのです。

刀装具とは

刀装具の歴史

刀装具の歴史
「刀装具」(刀剣の外装)は、刃物である「日本刀」を安全に持ち運ぶことや、日本刀を最良の状態で保つことを目的に作られています。日本刀は武具ですが、信仰心や美意識を見せるために装飾も重視されていました。今回は、時代によって刀装具がどのように変化していったのかをご紹介します。

刀装具の歴史

鎺の種類・図柄

鎺の種類・図柄
「鎺」(はばき)は、柄(つか)や鞘(さや)などと同じ刀装具のひとつで、刀身と鍔(つば)が接する部分にはめ込まれた筒状の金具です。「鞘走留」(さやばしりどめ)、「腰巾金」とも呼ばれます。刀剣にとって鎺は必要不可欠な刀装具。そんな鎺とは、どのような役割を担っているのでしょうか。鎺の種類や素材、施されている図柄についても併せて見ていきます。 名古屋刀剣ワールドの刀装具~鎺~ YouTube動画

鎺の種類・図柄

鍔の種類

鍔の種類
日本刀の「鍔」(つば)は、刀装具のひとつと言うだけでなく、独立した美術工芸品としての価値も高く、多くの日本刀愛好家に注目されています。その種類は多様で、とてもひとくくりにはできません。良く目を凝らせば、鍔の奥深い世界を垣間見ることができるのです。鍔の種類では鍔工の系統別に取り上げ、使用されている地金の特徴や、図柄とそれを施す技法、さらに時代背景も織り交ぜてご紹介します。 名古屋刀剣ワールドの刀装具~鍔~ YouTube動画

鍔の種類

甲冑師鍔(かっちゅうしつば)とは

甲冑師鍔(かっちゅうしつば)とは
刀剣における「鍔」(つば)の本来の役割は、「柄」(つか)を握る際に、手を守ることにあります。刀身と柄の間を挟むように、刀剣に施されている鍔は、戦場で「突き」の攻撃を行なうときに、刀身のほうへ手がすべるのを防いでいたのです。刀剣が登場した当初は、この鍔がなかったり、付けられていたとしても、小さな形状であったりしましたが、時代が進んで刀剣の様式が確立されると、次第に大振りな形状へと変わっていきます。 そんな鍔の中でも「甲冑師鍔」(かっちゅうしつば)は、鉄板を打ち出し、透かし紋様を施した芸術性の高い鍔です。刀装具として独立した価値を有する鍔。力強さと繊細な技術を伝える甲冑師鍔の世界をご紹介します。 名古屋刀剣ワールドの刀装具~鍔~ YouTube動画

甲冑師鍔(かっちゅうしつば)とは

鍔の図柄

鍔の図柄
日本刀の重要な一部である「鍔」(つば)。刃と刃を切り結んだとき、柄を握る手を守ることをはじめ、刀身と柄部分との重量のバランスを取ることなど、様々な役目があります。現代では、日本刀の一部であるに留まらず、鍔自体が独立した美術品として評価されているのです。 そして鍔には、戦での勝利や家の繁栄を願った武士の想いも込められました。鍔の図柄に焦点を当て、意匠に表された意味と、縁起について解説していきます。 名古屋刀剣ワールドの刀装具~鍔~ YouTube動画

鍔の図柄

切羽とは

切羽とは
「切羽」(せっぱ)とは、刀剣を構成する刀装具のひとつ。鍔(つば)を表裏から挟むように装着する金具のことで、「物事に追われて余裕がなくなる」という意味を持つ慣用句「切羽詰まる」の語源としても知られており、その形状は刀剣の種類によって様々です。切羽の基本知識をご紹介します。

切羽とは

目貫の図柄

目貫の図柄
様々な部位で構成されている日本刀の刀装具の中でも、横幅が3cmほどしかない小さな「目貫」(めぬき)。もともと目貫は、「茎」(なかご)に設けられた穴に挿し通し、刀身が「柄」(つか)から抜け出ないように固定するための「目釘」(めくぎ)の両端を留める役割を果たしていました。 しかし目貫と目釘は、時代が降る(くだる)につれて分離されるようになり、目貫は、柄を握る際の手溜まり(てだまり)に安定感をもたらすだけでなく、柄を華やかに彩る飾り金具として、そのデザイン性が高められていったのです。 目貫の意匠のなかでも、戦国武将達に最も好まれ、多く用いられていたのが、繁栄や幸福を意味する「吉祥文様」(きっしょうもんよう)の図柄。戦国武将達は、そのような意匠を自身の日本刀に装着することで、合戦の勝利や家の存続、発展といった願いを託していたのです。ここでは、小さな目貫の世界に自由な発想で施された、多種多様な意匠にはどのような意味があるのか、また、どのような想いが込められていたのかを観ていきます。 名古屋刀剣ワールドの刀装具~目貫~ YouTube動画

目貫の図柄