刀装具
刀装具
著者:川見典久の「刀装具ワンダーランド」をご紹介します。
本書は、刀装具を高精細デジタル撮影し、より近くで、より詳しく鑑賞できるビジュアルブックです。刀装具の鍔(つば)、目貫(めぬき)、小柄(こづか)、笄(こうがい)、縁(ふち)、頭(かしら)などが意匠別で掲載。画像は正面だけでなく、俯瞰像、別角度からの写真を掲載して美術館よりもじっくり鑑賞できるほどに鮮明であり、気配りが感じられる作りになっています。
刀装具は目にする機会が少なく、美術館で鑑賞できても小さく、細部までは見にくいといった悩みに十分すぎるほど応えてくれる内容です。
本書は黒川古文化研究所で2010年(平成22年)に開催された「武士の華・刀装具」展、2012年(平成24年)に開催された「武士の華Ⅱ 鍔」ならびに、2つの展示に合わせて編集された「所蔵品選集」をもとに作られました。
執筆は黒川古文化研究所の研究員である川見典久氏が担当し、高精細画像に添えられている解説、刀装具の基礎知識はもちろん、金属素材と色、技法、意匠の解説も充実しています。
刀装具は意匠別で掲載されており、各刀装具にほどこされた草花、生き物、道釈人物、四季の情景などの図柄に込められた願いや逸話についても解説。
また、掲載されている刀装具のほとんどが江戸時代の物で、武士が理想として掲げた「国を治め天下を平和にする」想いなどが基本的な思想として通底していることも解説されています。
本書は、刀装具の魅力、日本刀の武器としての側面だけでなく、刀装具の美術品としての側面を知る上でも貴重な機会になる本です。著者が「日本の美術工芸におけるひとつの到達点とも言える近代の刀装具」と書くように、刀装具を通じて日本美術にふれるきっかけになるでしょう。
今まで刀剣に興味があったが、刀装具にも興味がわいてきた方、また刀剣以外の古美術に興味があった方でも、この本を読めば刀装具の深い美に魅せられるはずです。