拵・刀装具
刀装具のすべて①(鐔・目貫・笄・小柄・縁頭・鎺・柄・鞘)
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刀装具のすべて①(鐔・目貫・笄・小柄・縁頭・鎺・柄・鞘)

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「刀装具」(とうそうぐ)とは、日本刀(刀剣)の拵(こしらえ)に付いているすべての部品のことです。刀装具が付けられている目的や種類は多岐に亘り、日本刀(刀剣)が持つひとつの特徴でもあります。ここでは、刀装具について詳しくご紹介していきます。

刀装具(とうそうぐ)とは?

「刀装」(とうそう)とは「」(こしらえ)とも言い、日本刀(刀剣)の外装のことです。刀装に使われる道具類を「刀装具」と言います。

刀装具の目的

刀装具は、日本刀(刀剣)を保護し、帯びやすく、かつ使いやすくするための物です。本来は実用的な物ですが、機能面だけでなく、装飾面でも美しく華やかであることが求められました。日本刀(刀剣)は、武器であると同時に、地位や権力を表す物でもあったからです。

戦国時代に入る頃には、日本刀(刀剣)は装飾品、つまりお洒落なアクセサリーとしても扱われるようになりました。武将にとって合戦とは晴れ舞台であり、人生最期となるかもしれない場所。最期の日を精一杯着飾りたいという武将達の想いが、華やかな刀装にも表れているのです。

さらに江戸時代以降には、日本刀(刀剣)は装飾品としての価値を高めていきます。こうして刀装具は、次第に豪華で華美な物になっていくのです。それに伴い、日本の金工の芸術性が見事に開花し、多くの名工が素晴らしい作品を生み出しました。

刀装具の種類

刀装具には、以下のような物があります。いずれも当初は実用的な目的で装備されましたが、江戸時代になると、装飾品としての芸術性が重視されるようになっていきます。

(つば)
鐔

日本刀(刀剣)を握る「柄」(つか)と「刀身」(とうしん)の間にある刀装具です。

主に、手を保護する役割のために取り付けます。

目貫(めぬき)
目貫

目貫

柄中央あたりの表裏に装着された小さな金具。

柄の表裏に通して、刀身が柄から抜け出さないための留め具です。

(こうがい)
笄

髪の手入れなど、身だしなみを整えるための道具。

「笄櫃」(こうがいひつ:笄を収めるために鞘[さや]に設けられた溝)と呼ばれる櫃に収められました。

小柄(こづか)
小柄

小柄

細工用の小刀です。木を削る際や、緊急時の武器として使用されました。

笄櫃の裏側に作られた「小柄櫃」(こづかひつ:小柄を収めるために鞘に設けられた溝)と呼ばれる櫃に収めます。

縁頭(ふちがしら)
縁頭

縁頭

柄を補強するために、先端に取り付けた金具を「頭」(かしら)、口のほうに取り付けた金具を「縁」(ふち)と言い、頭と縁はセットで「縁頭」(ふちがしら)と呼ばれます。

(はばき)
鎺(はばき)

鎺(はばき)

刀身の手元に装着して、鞘内に固定するための金具。

刀身が鞘に触れないように保護するためと、鞘から刀身が抜けないようにする目的があります。

(つか)
柄

日本刀(刀剣)の手で握る部分。多くは刀身の「茎」(なかご)を木で覆って、「鮫皮」(さめかわ)で包み、「菱糸巻」(ひしいとまき)を施しています。

江戸時代に装飾性が重視されるようになると、柄巻にも工夫がなされ、多色使いの凝った物が現れました。

(さや)
鞘

刀身を収める部分。雨や埃などから刀身を守ります。古い時代には、牛革や竹、木製などの薄手の物が多かったのですが、のちに厚みを増した漆塗鞘が多く作られるようになりました。

装飾性の高い「太刀拵」(たちこしらえ)には、金銀製や、精巧な「螺鈿」(らでん)や「蒔絵」(まきえ)を施した物も見られます。

江戸時代以降には、彫金や漆塗の高度な技法を用いた芸術性の高い鞘が多く作られました。その結果、本来刀身を守るべき鞘にも価値が生まれ、保護されるようになります。刀身が保存用の「白鞘」(しらさや)に収められるようになったのは、刀身の保存だけでなく、鞘を大切に保管するためでもあったのです。

鞘から生まれた言葉

「もとの鞘に収まる」という言葉は、一度別れた人や物が元通りになること。「鞘当」(さやあて)は、武士がすれ違いざまにお互いの鞘が触れて争いになることから、現在では、些細なけんかや、男女の三角関係を表わすようになりました。

また、鞘と刀身の反りの角度がわずかでも違うと、うまく収めることができないことから、気が合いそうで何となく合わない人のことを「反りが合わない」と言うのも、鞘と刀身の関係から生まれた言葉と言えます。

後藤祐乘(ごとう ゆうじょう)と後藤家

日本刀(刀剣)は「本阿弥家」(ほんあみけ)によって鑑定が行なわれ、「折紙」(おりがみ)が発行されました。物事の価値を保証する「折紙付き」という言葉の由来はここから来ています。

刀装具も同じように後藤家によって鑑定され、5代徳乗(とくじょう)からは折紙も発行するようになりました。

後藤家は刀装具刀工の家系の中では、最も有名で由緒ある家柄。大判鋳造と墨判、両替屋の分銅(ふんどう)の鋳造を請負い、幕府の経済や財政上も大きな力を持っていたのです。

その祖である「後藤祐乘」(ごとうゆうじょう)が現れた室町後期から江戸時代が終わるまで、後藤家は「御用達彫金師」(ごようたしちょうきんし)として、約400年間刀装具の世界に君臨し続けました。

戦国武将と傾奇者(かぶきもの)

戦国時代から江戸時代初期に現われた、江戸や京都などの都市を舞台に異様な身なりをし、常軌を逸した反体制的な行動をした武士や奉公人などを「傾奇者」(かぶきもの)と呼びます。

当時の男性が地味な色合いの着物を好む中で、傾奇者は、女物の色鮮やかな着物を羽織ったり、大きな襟(えり)を付け、ひげを伸ばして、奇妙な髪型をしたりと、とにかく派手な服装を好んだのです。

彼らは、ただ大きな日本刀(刀剣)というだけでなく、より派手で目立つ刀装を好みました。特に目にも鮮やかな色や細かい細工を施した鞘を競うように持ったのです。

それには理由がありました。彼らの多くは、武家に雇われた奉公人で、合戦の際には足軽として戦いましたが、身分は不安定で、戦国時代の終わりとともに、さらに活躍の場が狭まっていきました。そんな彼らにとって、戦国時代の武将の豪華絢爛(ごうかけんらん)で華やかな刀装は憧れでした。

その後、幕府の取り締まりが厳しくなり、派手な刀装も傾奇者の文化も姿を消していきますが、彼らの好んだ美意識は、「歌舞伎」(かぶき)という芸能によって開花するのです。

傾奇者の中でも「戦国三大美少年」と称された「不破万作」(ふわばんさく)・「浅香庄三郎」(あさかしょうざぶろう)・「名古屋山三郎」(なごやさんさぶろう)のうち、名古屋山三郎は戦国時代の武将で、「歌舞伎の祖」と言われています。

刀装具のすべて①(鐔・目貫・笄・小柄・縁頭・鎺・柄・鞘)

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