入門書(基礎編)
入門書(基礎編)
著者:渡邉妙子・住麻紀の「日本刀の教科書」をご紹介します。
日本刀の教科書というだけあり、取扱っている題材が幅広いのが特徴です。日本刀の定義にはじまり、日本刀の作り方・種類・見どころ・歴史・鑑賞の仕方などを網羅。科学的な観点からの日本刀の保存方法にも言及されており、日本刀にまつわる様々な知識を得ることが可能。カラー写真は巻頭の口絵16振にわたっており、単に名刀を紹介するのみならず、日本刀ファンが知りたい情報も詰まっています。
著者は佐野美術館館長である「渡邉妙子」(わたなべたえこ)氏と同美術館学芸員の「住麻紀」(すみまき)氏。静岡県三島市にある佐野美術館に展示されている美術品は、創設者である「佐野隆一」氏のコレクションが中心です。なかでも日本刀は特に名品が多く、一般向けに日本刀初心者講座や展覧会などのイベントも定期的に開催しています。
本書の第1章では日本刀に関する基礎知識を紹介。なかでも「日本刀の歴史的変遷」の項は、日本刀が歩んできた歴史が簡潔にまとめられており、日本刀における歴史の流れを知りたいという方は必見です。続く第2章では、刀工及び名刀の所有者にスポットが当てられています。「備前友成」(びぜんともなり)や「一文字吉房」(いちもんじよしふさ)、「長船長光」(おさふねながみつ)など、有名な刀匠の来歴や作品、それぞれの特長を紹介。
また「日本刀を愛した人々」の項では、番鍛冶を設置した「後鳥羽上皇」をはじめ、「織田信長」(おだのぶなが)・「徳川家康」(とくがわいえやす)など名だたる武将達と日本刀との関係が語られています。そして、第3章は実践編です。日本刀がどこで鑑賞できるのか、日本刀鑑賞のコツ、鑑賞記録の残し方などを紹介。また、「日本刀を発見した場合」というテーマもあり、美術館の学芸員こその視点が随所に見られます。全体を通じて平易な文章なので、とても読みやすく、頭に残りやすいため「日本刀のイロハを知りたい」という方におすすめの1冊です。