とんきょ帽
江戸時代
まるにうめばちもんとんきょぼう 丸に梅鉢紋とんきょ帽/ホームメイト

本陣笠における最大の特徴は、「とんきょ帽」と称される珍しい形状にあります。工事現場や学校の運動場などで使用されている三角コーンのように、側面が平坦になっており、従来の陣笠よりも細身で先端が尖った円錐形です。
とんきょ帽は、幕末の兵学者「高島秋帆」(たかしましゅうはん)が考案した雑兵用の被り物。西洋砲術を学んでいた高島秋帆は、幕末の動乱期における日本の軍隊でも、西洋流の兵器や戦陣を取り入れるべきだと主張し、それらに合わせた装備として、とんきょ帽の形状を編み出したのです。
表地の正面中央に配された紋章は、「梅鉢紋」(うめばちもん)と呼ばれる意匠。梅の花をかたどった紋章は、梅を好んだ「菅原道真」(すがわらみちざね)を祀る全国の多くの「天神さん」(天満宮)で、その神紋に用いられています。
また、菅原道真の末裔を名乗る「前田利家」も自身の家紋に梅紋を定めており、その意匠は、本陣笠と同類である梅鉢紋でした。「梅鉢紋」の呼称は、花の中央から放射状に伸びた花弁の形状が太鼓の「バチ」に見えることが由来です。さらに本陣笠正面下部の折り返し部分に描かれているのは、より写実的な梅の花の文様。こちらは、表地の梅鉢紋の意匠に合わせて施されたことが窺えます。