鞍(くら)
未査定
くろうるしじきりほうおうもんまきえくら 黒漆地桐鳳凰文蒔絵鞍/ホームメイト

本鞍は、居木(いぎ:乗り手が腰を下ろす部分)の裏側に、「延寶五年二月吉日」の日付と、「花押」(かおう:署名の代わりに使用される記号)が墨書されています。そのことから、江戸時代初期の1677年(延宝5年)2月に制作したと考えられる鞍です。
本鞍、「前輪」(まえわ)・「後輪」(しずわ)の艶のある黒漆地の上には、鳳凰が羽を伸ばした様子を「金高蒔絵」(きんたかまきえ:下地塗りした漆の上に漆を盛り、その下地の上から漆で絵を描き、金粉を蒔いて乾燥させる技法)で表現。この「鳳凰」(ほうおう)とは、中国の伝説に登場する瑞鳥(ずいちょう:めでたいことの起こる前兆とされる鳥)であることから、吉祥の象徴として多くの意匠に用いられました。
そして「雉股」(きじまた:前輪・後輪の足の部分)には、「桐紋」(きりもん)の金高蒔絵が施されています。桐紋は皇室の紋である「菊紋」に次ぐ格式ある紋で、「鳳凰がとまる木」とされる神聖な植物。このため「桐紋」と「鳳凰」は一揃いで表現されることの多い意匠です。どちらの金高蒔絵も手の込んだ技が使われており、保存状態も良いことから格調高い逸品だと言えます。