裁縫が苦手な人、初心者にも始めやすいのが、既製品の改造(アレンジ)です。中学生で習う家庭科程度の知識があれば、裁縫が必要なアイテムにも挑戦できます。コスプレ衣装の制作は、普通の裁縫とは違い、工作的要素が強いことから、ミシンが使えなければ手縫いでも良いですし、それも難しければ、強力両面テープなどで貼り合わせたって構いません。コスプレには衣装が必須なので、失敗覚悟でとにかく一歩踏み出すことが大事。失敗を繰り返すうちに、衣装作りの勘どころが分かり、腕が上がっていくのです。
市販のコスプレ衣装
自作初心者は、1万円くらいの既製のコスプレ用衣装を購入し、部分的に改造してみましょう。これにワンポイントを加えるだけで簡単に衣装ができ上がります。
例えば、エンブレムなどは、接着剤の付いたフェルトで作れば、簡単に取り付けることが可能。
ラインを入れたい場合の作業では、ラインをまっすぐにしたいならサテンリボンを、カーブにしたいならバイアステープを使って縫い付けます。
ボンドを使って接着する場合には、洗濯ができるように工夫が必要です。
アクセサリー、ボタンなどは、アクセサリーショップ、もしくは100円ショップで揃えられます。
エンブレムを付けたり、ラインを付けたりするなど、部分的な改造だけでも、全体の印象はガラリと変わります。
以上の観点から、既製品のどこをどう変えれば理想のイメージに近付けられるのか、考えてみましょう。頭だけで考えるのではなく、キャラクターの描かれた絵をもとにメモやイラストで整理して、既製品のどこを改造するのかを自分なりにイメージすることが大事です。
コスプレ衣装のイメージを固める
完成した状態を思い浮かべて、そのために何が必要になるのかを考えましょう。
絵やメモに書き出しながら、イメージを固めていきます。
さらに、書き出したイメージに対して、パーツごとにどう布を使うのか、何の布を使うのかといった詳細まで考え、書き込んで可視化。
これが最も大切な設計図となりますので、なるべく多くの書き込みをして実際の制作にそなえます。
バイアステープには、「両折タイプ」と「ふちどりタイプ」の2種類があり、ふちどりに使う場合は、縫い目の見えないふちどりタイプを、カーブの強い生地端の処理や見返しの代わりなどに使うなら、両折タイプを選びましょう。手芸店や100円ショップの手芸コーナーで購入できます。
【バイアステープの貼り方】
バイアステープは、アイロンで接着できる物と、のりのついていない物があります。のりなしの物は布用ボンドで貼り付けるか、縫い付けて使用します。
バイアステープをボンドで貼る手順は、以下の通りです。
ポイントは「貼るときにテープを引っ張らない」こと。バイアステープは伸びやすい素材なので、ひっぱりながら貼ってしまうと、貼り終わった後で、布のほうにしわがよってしまいます。
テープを貼り固定したあとに、ミシンで縫いつけると耐久性が増し、キレイに仕上げることができるのです。ミシンがない場合は、手縫いでも構いません。縫い目が見えないように細かく縫い合わせましょう。
ダーツ位置の例
ジャストサイズの既製品に出会うのは意外と難しいもの。身体のパーツによってサイズの合っていない部分もあるでしょう。その場合、ダーツの入り方を調整することで、サイズを調整することができます。
「ダーツ」とは、服を身体のラインに合った立体構造にするため、生地をつまんで縫ってある部分のことです。服によっては、複数のダーツが入っていることがあります。
既製品がきつい場合は、ダーツの縫い目を解き、ゆるい場合は、折りたたんで縫い直して調整可能。
ダーツ部分で±4cm程度は、シルエットを調整することができます。
ワッペンを貼り付ける、ボタンを付け替える、一部だけ素材を変えるなどのことです。
この方法は、ディテールに満足できない既製品を買ってしまったときに使われるテクニック。ベルト、胸飾り、マフラー、レース部分など、細かいところの素材を変えるだけでも、コスプレ衣装のクオリティがぐんと上がります。
布製品用の顔料は、インターネットや手芸ショップで手に入りますが、耐水性のアクリル絵の具や紅茶を代用して布を染める方法もあります。
布を染める場合、注意しなくてはならないのは、もとの生地の素材と色です。綿100%の布は洗濯してもほとんど色落ちしませんが、化学繊維の布は繊維に染料が染み込まないので、洗うと色落ちしてしまいます。市販のコスプレ衣装にはポリエステル製が多く、使用できる塗料が限られるので注意が必要です。
また、着色すると濃い色の生地は、地の色が透けてしまうことがあります。白色や薄い色の生地の方が、容易に着色ができます。
コスプレ衣装に模様を描く
初心者にうってつけなのが、アクリル絵の具や油性マジックで布に直接柄を描く方法。
用意する材料が少なく、時間がないときでもすぐ取り組めます。
デメリットは、洗濯ができない点と塗料がはがれて模様が崩れる可能性があること。
画力に自信がない方は、ステンシルを使う方が、失敗が少なくて良いでしょう。
しかし、広範囲に複雑な柄を描くデザインなどの場合は、直接描いてしまう方が楽です。
絵の具のように、筆を使って布に模様などを書き込むことができるので、誰でも使うことができ、初心者におすすめの塗料です。コストパフォーマンスも優れています。
描いた部分が乾いたら、アイロンをあてて定着させます。アイロンは、描いた模様の上にあて布をしてから行ないましょう。
靴の塗装
布製品専用のスプレー塗料です。描きたい形に切ったシートを用意し、スプレーを吹いて模様を描きます。
スプレー塗料は、にじみが少ないため、部分的な着色向きです。
色数も豊富で、マスキングしながら色を塗り分ける表現や、美しいグラデーションの表現をすることができ、革に使えるスプレーなら、靴の色を変えることもできます。
文字や模様の形に切り抜きをした型紙の上から、好きな色を塗布して転写する「ステンシル」は、シンプルな柄向き。きれいに素早く柄を入れたいときや、同じ模様を量産したいときに重宝します。
転写に必要なシートを「ステンシルシート」と言い、100円ショップやネット通販で入手が可能です(クリアファイルを使う人もいます)。
作業には、シートを押さえるためのマスキングテープ、まわりを汚さないようにする新聞紙、塗料、スポンジ、布用絵の具、アクリル絵の具などを使って柄を描くならスポンジや筆、塗料を入れる皿などを用意すると良いでしょう。
また、作業前に下に紙やすりを敷いておくのがおすすめ。布がずれないので、きれいに塗ることができます。
コスプレ衣装にマスキングで模様を着色
「マスキング」とは、色を付けたくない部分をマスキングテープや紙などで隠すことで、必要な部分だけに着色する方法です。
スプレーなどできれいに模様を入れるための処理で、まるでプリントしたかのような仕上がりとなります。
【マスキングの手順】
手描きでも良いですが、パソコンを使って模様を印刷すると、よりきれいに作れます。
両面テープを模様からはみでるように貼付します。
模様を丁寧に切り抜きましょう。切り抜いた部分に色が付きます。
紙が浮いてしまうと模様がぼやけてしまうので、隙間ができないようにしっかり貼り付けましょう。
うっかり他の部分に色が付かないようにするために、新聞紙でガードします。
1mくらい離れてさっと吹き付けます。にじんでしまうので、厚塗りをしないように注意が必要です。重ねる場合は、乾いてから再度吹き付けます。
アイロン接着のシートを使う方法。無地のアイロン接着シートにパソコンでデザインを印刷して貼り付けます。白い布用、濃い色の布用、ニット地用などがあり、家電量販店やインターネットで購入が可能です。
この方法は、ワンポイントのワッペンや手描きスプレーでは表現できない細かい模様・グラデーションなどを入れる作業を行なうときに向いています。
ただしアイロンプリントは、塗料に比べて色は薄く、ポリエステル系の布との相性は良くないので注意が必要。
データを出力する場合は、イラストレーターなどの画像編集ソフトを使用することになるので、パソコンが得意な人向きです。
コスプレ衣装にラバーシートで柄を接着
ムラなくきれいな柄を貼り付けることができる単色のカラーシールで、金や銀、メタリックカラーなどもあります。
柄は切り絵のように裏側からカットするので、左右反転させて切り出すことが必要。
このシートは、アイロンの「熱」と「圧力」で接着するので、雑誌や新聞紙を重ねて固めのアイロン台を作って、体重をかけて接着するのがコツです。
くっきりとした模様を表現したい場合や、激しく動き回る野外ロケで着用する衣装は、布を縫い付けて丈夫にします。塗料と違って貼り付ける前に模様の形が正確に確認できるため、失敗が少なく初心者向けです。
また、布の上に別の素材を貼り付けることで、簡単に質感を変えられます。例えば、シルバーやゴールドの合皮を使うと、金属のような質感が再現可能です。
ただし、ミシンの押さえがすべりにくいので、テクニックが必要となります。慣れていない人は、簡単な直線などで練習してから、複雑な柄にチャレンジしてみましょう。
布を貼り付けるボンドは、布用ボンド「裁ほう上手」、コニシの「速乾ボンドG10」や透明な「Gクリヤー」などがよく使われています。
ただし、エナメルなどの薄い生地に大量に使うと裏地が溶けてしまうことがあるため、まず端布などで試してから使うようにしましょう。
ワッペンやパーツ、布などを貼り付けるときには、まずテープやしつけ糸、のりなどで仮留めをして少し離れた位置から衣装全体を見ることが大事です。バランスが悪くないかをきちんと確認してから貼り付けると、失敗が少なくなります。
ハイミロンは、ベルベット状の起毛素材で、宝石ケースなどにも使われている素材。
切りっぱなしでもほつれることがなく、リボンやネクタイ、貴族風の衣装の模様入れなど、ワンポイントで使うだけで衣装が引き立つ高級感があります。
合皮
合皮とエナメルは、どちらも合成生地。
マットな質感の物が「合皮」、光沢のある物が「エナメル」です。
ブーツやベルトの表面に貼ることで質感をガラリと変えることができます。