入門書(上級編)
入門書(上級編)
著者:本阿彌光遜の「日本刀の掟と特徴」をご紹介します。
本阿彌家の子孫である「光遜」氏が刀剣鑑定について記した書籍として知られる本書。第1章「鑑定法を学ぶ基礎知識」から始まり、第2章「古刀五箇伝の鑑定」、第3章~第5章「全国の日本刀の掟と特徴」まで、細やかかつ懇切丁寧に解説され、さらに巻末には本阿彌家代々の家系図と花押も掲載されています。そのため、刀剣愛好家のみならず、本阿彌家や広く美術工芸に関心を寄せる人にもおすすめしたい1冊です。
また、装丁も美しく、表紙には安土桃山~江戸時代初期の肥後の金工「平田彦三」(ひらたひこぞう)作の鉄線唐草象嵌の鍔(つば)があしらわれ、裏表紙には同じく安土桃山時代の三大名鍔工のひとりとされる京の金工「埋忠」(うめただ)作である鍔の象嵌により「君ならで誰にか見せん梅の花」、「色をも香をも知る人ぞ知る」の上の句が、金で箔押しされています。
「装幀解説」で本阿彌光遜氏は「梅鉢は本阿彌家古来の紋処、之と梅の花を掛け、伏せた下の句(色をも香をも知る人ぞ知る)に本書の利用価値を倣った訳である。」と記していました。当初は1,000部に限って刊行された本書ですが、刀剣の専門家や愛好家の要望に応え再版が繰り返されました。多くの刀剣鑑賞入門者に愛され、その後の刀剣関連書籍にも影響を与えた本書。いわば刀剣鑑賞のバイブルとも言える1冊です。
著者の「本阿彌光遜」氏は、本書刊行後わずか数日後の1955年(昭和30年)7月26日に逝去。生涯を刀剣研究に捧げた氏の渾身の遺作とも呼べるのが本書です。