刀装具
刀装具
著者:水藤龍彦の「知られざる日本工芸コレクション」をご紹介します。
ドイツのハンブルク美術工芸博物館は、1877年に開館した美術館です。当時ドイツ随一と言われるほど、充実した日本美術コレクションを誇りました。
現在も館内に茶室を備え、イベントが行われなるなど、日本文化と深くかかわりがあります。ユストゥス・ブリンクマンは、ハンブルク美術工芸博物館の提唱者で、弱冠30歳にして初代館長となり、1915年に亡くなるまで館長を務めました。
本書では、日本の美術・工芸に魅了され、一生をかけてそのヨーロッパにおける影響力を拡大しようと努力したブリンクマンのライフワークを、文献をもとに紹介しています。
「7章『博物館年報』から―刀装具(その1)」と、「10章『博物館年報』から―漆器・刀装具(その2)」にて、刀装具が紹介されています。
現在、ハンブルク美術工芸博物館には2,000点を超える数の刀装具が収蔵されています。刀装具には鍔、小柄、笄、目貫、縁頭などがありますが、ブリンクマンが最も関心を示していた刀装具が鍔でした。
当初ブリンクマンは、鍔を植物・動物・幾何学模様などのモティーフで分類し、「世界図絵」(17世紀にチェコの教育学者コメニウスにより出版された子供向けの絵入り百科事典)のような展示を試みていました。
その後1896年、東京帝国大学出身でドイツのフライブルク大学に留学していた原震吉と知り合い、彼の協力のもと、さらなる鍔の研究と収集に力を注ぐようになったのです。
ブリンクマンの情熱により、ハンブルク美術工芸博物館の鍔コレクションは、後藤派、浜野派、石黒派などが名を連ねています。ブリンクマンによる鍔解説をはじめ、当時のヨーロッパにおける鍔コレクターの様子なども垣間見ることのできる、興味深い本です。