陣笠
未査定
くろうるしぬりなみうさぎずきんまきえじんがさ 黒漆塗波兎図金蒔絵陣笠/ホームメイト

「黒漆塗波兎図金蒔絵陣笠」(くろうるしぬりなみうさぎずきんまきえじんがさ)は、表面全体に兎が波の上を走り回る図柄の「波兎」(なみうさぎ)が金蒔絵(きんまきえ)で描かれた陣笠。裏は朱漆塗(しゅうるしぬり)です。
頭の形に合わせた頭形陣笠(ずなりじんがさ)で、中央の前後にかけて鎬(しのぎ)が立ち、桃形兜(ももなりかぶと)や南蛮兜(なんばんかぶと)のような雰囲気を感じさせます。
何度も寄せて返す波は、永遠・不滅を連想させる吉祥文様(きっしょうもんよう:縁起が良いとされた事物の図案)として流行。兎も、月信仰や日本神話の「因幡の白兎」により神聖視された他、高く跳ねることや子沢山なことが好まれて吉祥文様に用いられました。
この2つの吉祥文様を組み合わせた「波兎」の原典は、能の曲目「竹生島」(ちくぶしま)と考えられます。
近江国(おうみのくに:現在の滋賀県)の琵琶湖に浮かぶ竹生島の景色をたたえた一節「緑樹影沈んで 魚木に登る気色あり 月海上に浮かんでは 兎も波を走るか 面白の島の景色や」(竹生島に生える緑色の木々の姿が琵琶湖に映り、魚達がまるで木に登っているように見える。月が湖面に映ると、月に住んでいる兎達も波間を走っていくのだろう。不思議な島の景色だなあ。)からの着想とされ、「波兎」は特に江戸時代初期に流行し、焼き物や漆器、衣服など様々な工芸品にあしらわれました。