鞍(くら)
江戸時代
こくもちたてもっこうもんいちまつもんきんまきえらでんうみありくら 石持竪木瓜紋市松文金蒔絵螺鈿海有鞍/ホームメイト

本鞍の「前輪」(まえわ)と「後輪」(しずわ)の外側は、「海」(うみ:前輪・後輪の外側のくぼんでいる部分)に黒漆地の「金蒔絵」で「市松模様」(いちまつもよう)を描き出し、「磯」(いそ:前輪・後輪の外側で隆起している部分)には「螺鈿」(らでん:貝殻を文様形に切り出して、器物の表面に貼り付けたり、嵌め込んだりして、その上から漆で固めた物)を密に敷き詰めています。
そして、前輪と後輪の外側の中央には、「金沃懸地」(きんいかげじ:蒔絵の手法のひとつで、金粉を密に蒔いた上から漆をかけ、研ぎ出す手法)で「石持」(こくもち:黒い餅[黒餅]を象った印のこと=黒丸)の中に「竪木瓜紋」(たてもっこうもん)が描き込まれているのです。
前輪・後輪の内側と乗り手が腰を下ろす「居木」(いぎ)の表面は「叢梨子地」(むらなしじ:梨子地粉の蒔き方にむらを持たせ、淡蒔[うすまき]の中に斑を現わす手法)で、居木は螺鈿になっています。
鹿皮に菖蒲が染め抜かれた「菖蒲韋」(しょうぶかわ)を丸く絎けた(くけた:縫い目が表に出ないようにする縫い方)「丸絎け紐」を環状にして「四方手」(しおで:鞍の前輪と後輪の左右4ヵ所に付けた金物の輪で「胸繋」[むながい:「鞍橋」(くらぼね) を固定するため、馬の胸から前輪の四方手につなぐ緒]と、「尻繋」[しりがい:鞍橋を固定するために、馬の尾の下から後輪の四方手につなぐ緒]を留めるための部品)としているのです。
本鞍は、全体的に出来ばえがよく、保存状態も良好だと言えます。