指物
江戸時代 後期
むつきりさきなかくろ さしものはた 六ツ切裂中黒 指物旗/ホームメイト

本旗の素材は練貫(ねりぬき:縦糸に生糸、横糸に練り糸を用いた絹織物)。3枚の生地をはぎ合わせたあと、2つ折りにして二重の旗を作り、各生地を真ん中から裂いた「切り裂き旗」です。
2つ折りの部分に袋縫い(旗を固定するために縁を筒状に縫製すること)を施し、その口部分は「韋」(なめしがわ:加工しやすいように処理を施した動物の皮)で補強しています。
向かって右下の隅にあるのは「巴紋」(ともえもん)。「巴」は、雅楽の太鼓に描かれる文様です。形状の由来については主に2説あり、ひとつは弓具の「鞆」(とも:左腕の内側に付ける道具で、弓の弦が腕に当たるのを防ぐ)を図案化した説。もうひとつは、「勾玉」(まがたま)を図案化した説。
巴紋は、描かれる数によって「一つ巴」、「二つ巴」、「三つ巴」など呼び方が変化する他、家紋などに用いられる場合はその形状に様々な変化が加えられます。
江戸時代には、350余りの大名家や幕臣が、家紋として巴紋を使用しており、幕末期に活躍した「新撰組」の副長「土方歳三」も家紋に「左三つ巴紋」を用いていました。
また巴紋は、現代においても「陸上自衛隊中央即応連隊」が「中」、「即」、「連」の3つの字を巴に乗せてシンボルマークにしている他、全国の神社や寺院で使用される紋であることから、よく見かける紋としても有名です。