扇
江戸時代 後期
てっせんがたのはちわり 鉄扇形の鉢割/ホームメイト

本鉢割は、鉄扇の形をした鉢割です。
「鉢割」とは、「兜割」(かぶとわり)の別名であり、打撃武器の一種。
柄の端に取り付けられた紅四ツ打ちの組紐と柄を結ぶ鐶(かん:金属製の輪のこと)は、後付けされた物です。
片側には、「雨龍紋」の片切彫(かたぎりぼり:片切たがねを使用して線を描く彫金技法)と「正次作」と言う銘が彫られており、もう片側には「敵をただ 討と思ふな 身を守れ おのすからもる 賎(しず)か家の月」と言う歌が彫られています。
この歌は、「一刀流剣術」の祖である剣客「伊東一刀斎」が詠んだ歌と言われており、「敵をむやみに討とうとするのではなく、身を守りながら相手の隙をつくような戦い方をすると良い」という意味が込められています。
刃を持たない打撃武器である鉢割は、刀での攻撃を防ぐことができる盾であり、また命を奪うような威力がないために、叩いた相手の戦意を欠く他、致命的な傷を負わせないで弱らせることができる優れた捕縛用の武器でもありました。
なお、兜割の形状は江戸時代の奉行所が所持していた「十手」(じって:棒身の柄側に鉤爪[かぎづめ]状の突起がついた道具)に近い物が一般的であり、本鉢割のように鉄扇の形状をした兜割は非常に珍しいと言えます。