輸入古式西洋銃
すたーるM1858きへいじゅう(おかやまけんこくいん) スタールM1858騎兵銃(岡山縣刻印)/ホームメイト

「刀剣ワールド財団」が所蔵する本鉄砲は、アメリカの「スタール・アームズ・カンパニー」が生産し、幕末期の日本へ大量に持ち込まれた「スタール騎兵銃」です。
スタール騎兵銃は、1861年(万延2年/文久元年)にアメリカで起こった「南北戦争」において、北軍が装備していた主力兵器のひとつでした。しかし、南北戦争が終結した1865年(元治2年/慶応元年)以降、同戦争の余剰兵器となったスタール騎兵銃は、「スペンサー銃」や「エンフィールド銃」などと共に、日本へ輸入されるようになったのです。
本鉄砲の銃身に打たれている「明治廿年[20年]十一月〇千百七十九番岡山縣」の刻印は、1872年(明治5年)から国によって行われた銃砲調査に基づいて与えられた登録番号です。「壬申刻印」(じんしんこくいん)と呼ばれるこの番号により、本鉄砲は、現在の岡山県にあたる地域の藩が使用していたと推測できるのです。
幕末のこの地域は岡山藩(現在の岡山県岡山市周辺)が、天皇を尊んで外敵を排除しようとする「尊王攘夷派」(そんのうじょういは)、津山藩(現在の岡山県津山市)・備中松山藩(現在の岡山県高梁市)が、尊王攘夷や討幕に反対し、江戸幕府を支持する「佐幕派」(さばくは)となって分裂していました。1868年(慶応4年/明治元年)に始まった「戊辰戦争」でも対立して戦火を交えており、両派のいずれかが、本鉄砲のようなスタール騎兵銃を用いていたと考えられます。
スタール騎兵銃の製造元であったスタール・アームズ・カンパニーは、南北戦争が終結した2年後に倒産しています。このような経緯から日本国内外を問わず、現存するスタール銃はほとんど見られないため、本鉄砲は、当時の西洋式銃を知るための史料となる貴重な1挺(ちょう)だと言えます。