あきひろ
「秋広」は、「相州伝」(そうしゅうでん)における特長のひとつ、「皆焼」(ひたつら)と呼ばれる刃文を創始した刀工です。皆焼とは、刀身全体に網目模様の焼き入れが広がっている刃文のことで、「湯走り」(ゆばしり:沸[にえ]や匂[におい]が刃縁[はぶち]から流れたような模様)や、「飛焼」(とびやき:沸が一部に固まっている状態)を強調した手法です。
秋広の出自は、名工「正宗」(まさむね)の門人説や、正宗の子「貞宗」(さだむね)の門人説、貞宗の弟子「広光」(ひろみつ)の弟、あるいは門人説など諸説あり、詳しくは分かっていません。ただし、「古刀銘尽」(ことうめいじん)によれば、1315年(正和4年)に生まれ、84歳で没したことが分かっています。3代にわたって同銘が用いられ、「3代 秋広」は、拠点を鎌倉から上総国(現在の千葉県中部)へ移し、作刀を続けたと伝えられているのです。
作風は、相州伝における他の刀工に比べてやや穏やかで、その銘は草書風。現存刀は少ないものの、「平造り」(ひらづくり)で身幅が広いのが特長であることが分かっています。