鞍(くら)
安土桃山時代
くろうるしぬりなまりひょうもんびわもんうみありくら 黒漆塗鉛平文枇杷文海有鞍/ホームメイト

本鞍の「前輪」(まえわ)と「後輪」(しずわ)の外側は黒漆の下地の上に鉛を用いた「平文」(ひょうもん:金、銀、錫[すず]等の金属の薄い板を文様の形に切り取って貼り付け、その上に漆を塗って平坦に研ぎ出す技法)によって1本の枝に多くの実を付けた枇杷を文様化しています(枇杷の実は黄銅で表現)。
そして、前輪・後輪の内側にも鉛を用いた平文を確認することが可能です(文様・銘共に不詳)。乗り手が腰を下ろす「居木」(いぎ)の表面は、文様が施されておらず、黒漆が塗られただけの簡素な造りとなっています。
本鞍の重量は2,500g。「四方手」(しおで:鞍の前輪と後輪の左右の4ヵ所に付けた金物の輪で「胸繋」[むながい:「鞍橋」 (くらぼね) を固定するため、馬の胸から前輪の四方手につなぐ緒]と「尻繋」[しりがい:鞍橋を固定するために、馬の尾の下から後輪の四方手につなぐ緒]を留めるための部品)は、すべて備わっています。
本鞍は、戦前に「有職故実」(ゆうそくこじつ:朝廷、幕府の制度や儀礼、習慣や装束などを研究する学問)を研究し、有名な古美術品収集家でもあった「関保之助」(せきやすのすけ)の旧蔵品です。