本甲冑(鎧兜)は、武士の子の初節句に制作されたとする「雛鎧」(ひなよろい)です。
「兜」は各筋に金覆輪(きんぷくりん)が施され、前側には「三鍬形前立」(みつくわがたまえだて)が付いた見栄えの良い「黒漆塗筋兜」(くろうるしぬりすじかぶと)。そして胴には、「金切付小札」(きんきりつけこざね)を白糸と緋糸で「毛引威」(けびきおどし)をしたきらびやかな仕立てです。
三具と呼ばれる「籠手」(こて)、「佩楯」(はいだて)、「臑当」(すねあて)には、豪華な金箔が貼られています。
全体的に丁寧で凝った作域は、親が息子の成長を願って制作させたと想像できる仕上がりです。
本甲冑は、雛鎧としては珍しく本格的な造込み仕立てであることや、江戸時代当時に流行していた復古調の「大鎧」ではなく「当世具足」形式で作られていることから貴重な1領だと言えます。