無鑑査刀匠の称号を持つ刀工「二代 尾川兼國」の生い立ちや、刀剣に関する功績、そして作刀した刀剣などについてご紹介します。特定の展覧会や団体・個人において、過去の実績をもとに「審査・鑑査」を必要とせずに作品の出品が認められた刀匠である無鑑査刀匠。刀剣における「無鑑査」は「公益財団法人日本美術刀剣保存協会」が開催するコンクールにおいて複数以上、特賞を受賞することで認定されるため、刀匠としては最高位に位置付けされます。
「尾川兼國」(おがわかねくに)は初代「尾川兼圀」(おがわかねくに)の次男として1953年(昭和28年)に生まれました。父である尾川兼圀は岐阜県重要無形文化財保持者で、刀匠界では人間国宝に次ぐ名誉である無鑑査に認定された刀匠です。
尾川兼國は、父の仕事を継ぎたいという想いから、1986年(昭和61年)33歳のときに父に弟子入りします。二代目を継承したのちは「兼國」を名乗りました。初代・二代目ともに「かねくに」と読みますが、初代兼圀とは違い、二代目は「國」という漢字を用いています。
尾川親子は、1997年(平成9年)新作刀展にて、ともに特賞を受賞。2009年(平成21年)には尾川兼國も無鑑査認定を受け、現代の刀匠界を語るのに欠かせない親子となりました。
尾川兼國の作品の特徴は、打ち寄せる大きな波を思わせる相州伝の濤乱刃(とうらんば)と呼ばれる刃文。先代も得意とした濤乱刃の技法を受け継ぎ、数々の刀剣を作刀しています。2019年(平成31年)には、平成の30年間に優れた作品を作り上げ、刀匠界に大きく貢献した刀匠を表彰する「平成の名刀・名工展」において名工選を受賞。
作刀活動以外にも、2011年(平成23年)には全日本刀匠会理事兼東海地方支部の支部長を務め、日本刀の文化保持と今後の発展に尽力しています。