無鑑査刀匠の称号を持つ刀工「宮入法廣」の生い立ちや、刀剣に関する功績、そして作刀した刀剣などについてご紹介します。特定の展覧会や団体・個人において、過去の実績をもとに「審査・鑑査」を必要とせずに作品の出品が認められた刀匠である無鑑査刀匠。刀剣における「無鑑査」は「公益財団法人日本美術刀剣保存協会」が開催するコンクールにおいて複数以上、特賞を受賞することで認定されるため、刀匠としては最高位に位置付けされます。
宮入法廣(みやいりのりひろ)は、1954年(昭和29年)に長野県坂城町で生まれました。
1978年(昭和53年)に國學院大学文学部を卒業後、重要無形文化財保持者である「隅谷正峯」(すみたにまさみね)に師事。1984年(昭和59年)に新作名刀展での寒山賞を皮切りに、高円宮賞、文化庁長官賞、薫山賞、全日本刀匠会理事長賞、新作小品展で産経新聞賞など、多数獲得しています。
正峯の下で5年、父の「宮入清宗」(みやいりきよむね)の下で9年修行を積んだのち、長野県東御市(とうみし)に鍛錬場を設立。1995年(平成7年)に39歳で無鑑査刀匠に認定され、2010年(平成22年)には新作名刀展において正宗賞を受賞しました。
父の清宗や伯父の「宮入行平」(みやいりゆきひら)ら、宮入一門は代々五箇伝のうち相州伝をもとにしていましたが、法廣が師事した正峯は備前伝をもとにしており、「隅谷丁子」(すみたにちょうじ)と呼ばれる独自の美しい丁子刃文を生み出した芸術家。法廣は一門とは異なる流派に弟子入りすることで、流派に縛られない作風を切り拓く決心をしたのです。
2011年(平成23年)に長野県無形文化財保持者に認定された法廣は、現在に至るまで精力的に作刀を続けています。