
「鶴紋」は、鶴をモチーフにした家紋です。鶴は中国では古くから延命や長寿を表す仙禽(せんきん:仙人に仕える鳥)とされており、雌雄を対で描くことにより夫婦和合や子孫繁栄を表すめでたい鳥でもあります。古来、文様として多く描かれており、空に浮かぶ雲の中を飛ぶ鶴を描いた「雲鶴文」(うんかくもん)は、上皇や摂政などの高位者が袍(ほう:貴族階級で用いられていた上着)に使用していたほど由緒ある文様です。
両翼を広げて上で丸の形にした「鶴の丸」の家紋が最も多く使われていますが、同じ鶴の丸でも家ごとに文様が微妙に異なります。また、頭を下にして飛んでいる紋、2羽の鶴が対になった「対い鶴」(むかいづる)の他、珍しい折り鶴の模様も存在。
長寿にあやかって人気のある鶴紋ですが、江戸幕府第5代将軍「徳川綱吉」(とくわがつなよし)の長女の名が「鶴姫」(つるひめ)だったことから、江戸時代に鶴紋の使用を制限する法度(はっと:禁止する法律)が2度にわたって発布された過去があります。1690年(元禄3年)には、歌舞伎の名門である中村屋の座紋「丸の中に舞鶴」が「角切銀杏」(すみきりいちょう)に変更。このように、屋号や地名などが法度によって変更された例がいくつか残されています。