入門書(上級編)
入門書(上級編)
著者:鈴木卓夫の「作刀の伝統技法 」をご紹介します。
名刀の解説書や日本刀鑑賞の手引き書は数多くありますが、意外にも日本刀の伝統技法の解説書はそれほど多くありません。
本書の著者「鈴木卓夫」氏は、1945年(昭和20年)神奈川県厚木市生まれ、東京工業大学で、たたら製鉄の研究により博士号を取得し、日本美術刀剣保存協会たたら課長、同協会新作刀展覧会審査員、刀剣研磨・外装技術発表会審査員、重要・特別重要刀剣審査員、保存・特別保存刀剣審査員などを歴任された方です。
本書では、原材料の玉鋼の製鉄から、刀匠による「刀鍛冶」(鍛錬)の工程、そして研師による「研磨」の技から、工芸的な要素を含む拵(こしらえ)の工程までを、永年にわたり日本刀を自分の目で確かめ、調査研究に打ち込んできた著者が丁寧に解説。日本刀は多方面の高度な技術が結集して完成されることを教えてくれます。
また、日本刀制作に用いられる鋼の折り返し鍛錬法や心鉄(しんがね)と皮鉄(かわがね)による構造といった、日本刀ならではの高度な技術を科学的知見から豊富な写真・図版を用いて説明するなど、作刀工程について幅広く網羅した1冊です。
日本刀の専門知識に加え、たたら製鉄を研究し、博士号まで取得した著者だけに、わが国の伝統的な製鉄の技術・技法を知るには最適の書です。本書に記された製造工程を知ることで、日本刀鑑賞の楽しみ、奥深さがさらに増すことでしょう。
また、日本刀の愛好家だけではなく、日本古来の工業技術に関心を持つ人、刃物の文化、日本料理に欠かせない和包丁の愛用者や製造過程などに興味を持つ人が読んでも学べることが多い1冊となっています。