武器と日本刀
武器と日本刀
著者:臺丸谷政志の「日本刀の科学」をご紹介します。
「武器としての合理性と機能美に科学で迫る」と題されている通り、日本刀について科学的な視点からアプローチした稀なる著作です。
著者は、室蘭工業大学名誉教授である「臺丸谷政志」(だいまるやまさし)氏。臺丸谷政志氏は、本書の他にも衝撃工学、熱応力及び日本刀に関する研究論文を多数執筆。
本書は著者が高校生のときに読んだ雑誌で「武士が刀で打ち合っている最中に、目釘[めくぎ]が折れて刀身[とうしん]が抜け落ちた」という一文に惹かれたことから始まっています。この疑問に答えるために研究を重ね、刀匠に教えを乞い、研究会にも参加し、その実績が集積した結果の一部が本書に集約。他の書籍とは一味違った切り口であるため、日本刀愛好家の方が読んでも面白い1冊です。
本書の前半部分は、日本刀の基礎知識が解説されています。1章では「日本刀とは何か」という素朴な疑問から始まり、各部の名称、日本刀の歴史にも触れ、日本刀の素材である和鋼(わこう)についても解説。
続く作刀の章では、作刀工程の流れ、素材を鍛える折り返し鍛錬の説明を詳細に説明しています。そして、本書の特長である科学的な検証に本格的に触れられているのは、4章以降です。
特に著者の専門分野でもある衝撃工学の知見を活かして書かれた「強靭な日本刀」や「日本刀モデルの衝撃応答」では、計算式やグラフなどを用いて日本刀の本質を科学的に立証する試みがなされ、その検証が新書サイズに所狭しと記載。
ただ、科学的な検証だけでなく、日本刀の基礎知識にもふれているので、日本刀初心者の方でも読める内容です。もちろん日本刀愛好家の方にとっても、日本刀の魅力を美術的な観点とは違う視点で与えてくれることでしょう。