「北条時頼」(ほうじょうときより)は、全国の刀匠の作を見て、22刀匠の作刀を評定(様々な評価を総合して最終的に定めた値踏み)しました。そのときに選ばれた日本刀は、室町時代の「往昔抄」(おうじゃくしょう)に所載されていますが現存刀は少なく、本太刀「信包」(のぶかね)は、時頼に評定された日本刀そのもので貴重な名刀です。
また、時頼は蒙古襲来の8代執権「北条時宗」(ほうじょうときむね)の父であり、信包は時宗の愛刀の1振でもありました。
本太刀は、身幅広く、元先の幅差はあまりなく、腰反り高い堂々たる姿です。その鍛えは板目に杢目交じり、地沸(じにえ)厚く付き乱れ映りが鮮やかに立っています。刃文は小乱れを主調に小湾れ(のたれ)・小互の目(ぐのめ)・小丁子(ちょうじ)が交じり、焼き頭の上に飛焼が点続し、これが二重刃となり金筋が入るなど、古備前特有の古雅な趣(おもむき)のある出来です。
地刃共に健体なこともあり、時頼に選ばれるだけに素晴らしい名刀で、現存稀な信包の作域を知る上で、資料的にも貴重な1振と言えます。