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江戸時代 前期
えいりげんじものがたり 絵入源氏物語 全60冊 /ホームメイト

「絵入源氏物語」(えいりげんじものがたり)は、江戸時代前期に出版された「源氏物語」の版本です。歌人であり蒔絵師でもあった山本春正(やまもとしゅんしょう)が編集したシリーズで、源氏物語が挿絵入りの形で出版されたのはこれが初めてのこと。
源氏物語は平安時代中期に紫式部(むらさきしきぶ)が著した長編物語。主人公の光源氏(ひかるげんじ)の恋愛や栄華・苦悩を通して平安時代の貴族を描き、日本の文学に多大なる影響を及ぼした作品です。
絵入源氏物語は源氏物語の本編54冊に付録6冊を加えて全60冊。付録は4種類あり、①いろは順で書かれた辞書的な注釈書「源氏目案」(げんじめやす)が3冊、②古来の注釈書で引用された和歌を一覧にした「引歌」(ひきうた)が1冊、③登場人物の「系図」が1冊、④源氏物語の補作とされる「山路露」(やまじのつゆ)が1冊です。「山路露」は紫式部が書いた作品ではなく、作者未詳で、鎌倉時代後期から室町時代にかけての間に成立したとされる物語です。
江戸時代以前、源氏物語の出版は、長編である上に手で書き写す作業が必要だったため、制作コストが高く、一般の人々は梗概書(こうがいしょ)というダイジェスト版を読んでいました。絵入源氏物語の発売により、一般の人々も源氏物語を全編通して楽しむことができるようになったのです。
1650年(慶安3年)、1654年(承応3年)、1660年(万治3年)に3回出版されており、本品は1654年(承応3年)版。余白の部分に書き込みもされており、過去の持ち主によって丁寧に読み込まれたことがうかがえます。