本甲冑(鎧兜)の兜は、鉄錆地六十二間筋兜(てつさびじろくじゅうにけんすじかぶと)です。
奈良菊の毛彫(けぼり:金属板に線を彫る技法)を多用した鍬形台(くわがただい)と眉庇(まびさし)の梶の葉の象嵌(ぞうがん)は、格調が高く、吹返(ふきかえし)は、正平革(しょうへいがわ)や菖蒲革(しょうぶがわ)といった染め革を用いた蛇腹伏せ(じゃばらぶせ:縁の縫い方のひとつ)になっています。
また、胴本体の一部には、本小札(ほんこざね)も用いられており、いわゆる「揃いの三具」と言われる、籠手(こて)、臑当(すねあて)、佩楯(はいだて)といった小具足類には、欠点が見当たりません。そして、甲冑(鎧兜)を収納しておく鎧櫃(よろいびつ)は、江戸時代前期に制作された物であることが窺えます。