室町時代の重要用語

狩野元信 
/ホームメイト

日本絵画史上最大の流派である狩野派(かのうは)は、室町時代中期から江戸時代末期までの約400年間、日本画壇の頂点に君臨した絵師一族です。その基盤を固めたのが、狩野派2代目「狩野元信」(かのうもとのぶ)。時の権力者の庇護を受けながら、幅広い顧客層の需要に応えて多種多様な技法を編み出し、狩野派繁栄の礎を築きました。狩野元信は工房に多くの弟子達を抱え、画体を体系化することで、大人数による生産体制を作り上げた実業家でもあったのです。

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日本絵画史上最大の流派である狩野派(かのうは)は、室町時代中期から江戸時代末期までの約400年間、日本画壇の頂点に君臨した絵師一族です。その基盤を固めたのが、狩野派2代目「狩野元信」(かのうもとのぶ)。時の権力者の庇護を受けながら、幅広い顧客層の需要に応えて多種多様な技法を編み出し、狩野派繁栄の礎を築きました。狩野元信は工房に多くの弟子達を抱え、画体を体系化することで、大人数による生産体制を作り上げた実業家でもあったのです。

狩野元信の生涯

狩野元信作「白衣観音図」のイメージ

狩野元信作「白衣観音図」のイメージ

室町時代後期の画家・狩野元信は、1476年(文明8年)、狩野派の祖「狩野正信」(かのうまさのぶ)の嫡男として山城(やましろ:現在の京都府南東部)で誕生。

父・狩野正信は、室町幕府の御用絵師として室町幕府8代将軍「足利義政」(あしかがよしまさ)に仕え、「銀閣寺」(ぎんかくじ:京都府京都市)の障壁画(しょうへきが)を手掛けた人物としても知られます。

障壁画とは、日本建築の壁・襖(ふすま)・衝立(ついたて)・天井などに描かれた絵の総称です。

狩野派は、親子・兄弟など血縁でつながった絵師の集団で、画風を代々継承。狩野元信も、父から受け継いだ技法を発展させ、和漢を融合させた独自の様式を確立し、画風を大成させていきました。

狩野元信は、室町幕府将軍家・守護大名(しゅごだいみょう:地方行政官)と結び付きながら、宮廷・公家・武家・寺院からの用命で多くの障壁画を手掛ける一方、力を付けてきた町衆のために絵付け扇も制作。

60歳を超えてからも、「石山本願寺」(いしやまほんがんじ:大阪府大阪市)、「妙心寺」(みょうしんじ:京都府京都市)の障壁画を描き、1545年(天文14年)に僧侶の位のひとつである法眼(ほうげん)を与えられました。1559年(永禄2年)、狩野元信は84歳で死去。

以後、子孫・弟子達が江戸時代末期までの長きにわたり狩野派を受け継いでいったのです。

狩野元信の事績

漢画と大和絵の融合

狩野派は本来、漢画(かんが)と呼ばれる中国の水墨画技法を得意としていました。一方、狩野派とともに日本画の二大流派とされたのが、絵巻物などに代表される色彩豊かな大和絵(やまとえ:日本の伝統的な絵画様式)の権威であった土佐派(とさは)です。

狩野元信は絵画の領域を広げるべく、漢画に大和絵の彩色手法を取り入れようと試みました。そこで大和絵を学ぶため、土佐派を率いていた「土佐光信」(とさみつのぶ)の娘を妻にしたと伝えられます。

やがて狩野元信は、水墨に金彩を施した画期的な画風を確立。金箔を取り入れた絢爛豪華な狩野派の屏風は、狩野元信が生み出した物なのです。

画体をマニュアル化

狩野元信は、注文の増加・多様化に対応するため、大人数での工房生産体制を作り上げました。室町時代は、中国絵画が人気を集めており、中国風の絵を描いてほしいという依頼が殺到。しかし絵師により作品のとらえ方があいまいだったため、狩野元信は様式の統一化に乗り出します。

書道の楷書(かいしょ)・行書(ぎょうしょ)・草書(そうしょ)になぞらえて、絵の様式を3種の画体に分類。構図を崩さず緻密に描写する「真体」、形を崩し余白を多く取った「草体」、その中間が「行体」です。この3種の画体を弟子達に伝授することで、大量の注文にも安定した品質で応えられるようになったと伝えられます。

狩野元信の作品

四季花鳥図

大徳寺 大仙院

大徳寺 大仙院

「四季花鳥図」(しきかちょうず)は、襖8面にわたって春夏秋冬の風景が展開された「大仙院」(だいせんいん:京都府京都市)の障壁画で、狩野元信の代表作のひとつです。現在は重要文化財に指定。

狩野元信は、前景に松の大樹を、後景に山をぼかして描くことで、画面に奥行きを与えました。水墨画は墨1色で描かれることが多かったのですが、狩野元信は花鳥にのみ、赤・青・緑など鮮やかな色彩を施して、美しいコントラストを生み出しています。

酒伝童子絵巻

「酒伝童子絵巻」(しゅてんどうじえまき)は、平安時代中期の武将「源頼光」(みなもとのよりみつ)と家来の四天王による、鬼退治を主題にした絵巻。

漢画の力強い構図や描線に加え、鮮やかな色彩に金泥を交えた大和絵の特徴が見られます。狩野元信らしい、和漢融合の典型的な作品。こちらも、重要文化財に指定されています。

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