入門書(基礎編)
入門書(基礎編)
著者:原田道寛の「決定版日本刀大全」をご紹介します。
本書は、1938年(昭和13年)に刊行された名著「日本刀私談」(春秋社)の復刻版。復刊にあたり、新仮名遣いに改めたり読み仮名を補ったりすることで、さらに読みやすくなりました。著者は刀剣研究家の「原田道寛」(はらだみちひろ)氏。刀剣界の第一人者と言われており、本書以外にも「大日本刀剣史」などの著書も執筆されています。
章立ては「嗚呼日本刀」から始まり、「名工天国」や「刀剣の尊重熱」、「刀剣の偽物」、「素人天狗」、「名刀の紛失」など興味深いものばかりが並んでおり、著者の刀剣愛を感じずにはいられません。
「失敗談」の頁は、著者の知人が贋物をつかませられるエピソードが紹介されています。知人が当時のお金で1,000円払って集めた刀剣コレクション。それを刀剣店に売りに行ったら50円しか値がつかなかったと言うお話です。
エピソードの内容自体には時代の流れを感じざるを得ませんが、著者の実体験だからこそリアリティがあり、思わず当時の情景が頭のなかに浮かんできます。このように他の刀剣関連の書籍では、知りえない話や情報が豊富で、刀剣ファンの必読書。
名刀の情報だけでなく、刀の嗜み方、鑑定のポイント、刀の歴史など、刀剣研究家ならではの奥深い視点で刀について語られています。ただの名刀紹介の本ではないからこそ、刀に関する広範な知識を得ることが可能です。
ページ数は300ページ超となかなかの分量ではあるものの、著者の実体験に基づいたエピソードも興味深くスラスラと楽しく読み進めることができるでしょう。表紙やタイトルから一見マニアックな本に思えますが、これまで知らなかった日本刀の魅力を再発見できる、刀剣ファンにはたまらない1冊と言えます。約90年も前に書かれた物でありながら、現代の今でもなお価値を感じられる本書は、まさしく刀剣のように時代を超えても愛され続けていくことでしょう。