アジア・アフリカ 剣・刀剣・甲冑 (鎧兜)編
古代文明と刀剣
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古代文明と刀剣

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刀剣のルーツは、製鉄が起こる時代よりも古くからその起源はあります。今回は、刀剣を青銅器で作っていたメソポタミア文明や、エジプト文明の刀剣を紹介。数千年前において、どのような刀剣がどのように用いられていたのでしょうか。

戦士発祥の地・メソポタミアが生んだシックルソード

シックルソード

シックルソード

刀剣の歴史は人類の文化史とともに幕を開けます。現人類が分類されるホモ・サピエンス以前に誕生したホモ・ハビリスなどのヒト属が、石を加工して道具を作り始めたのは約250万年前のこと。前期旧石器時代と呼ばれるこの頃に、人類史上初めて刃をそなえた道具が誕生しました。

そして紀元前3500年になると、人類は大きく進化を遂げます。鉱石から金属を採取して加工する冶金術(やきんじゅつ)の発明により多くの武器が誕生し、世界最古の文明であるメソポタミア文明とともに青銅器時代へと突入します。

古代文明の誕生により発明されたシックルソード(鎌剣)

チグリス川とユーフラテス川流域のメソポタミア(現在のイラクに位置する)で、人類で初めての文明が生まれました。紀元前3000年頃になるとメソポタミア南部でシュメール人による国家が形成され、世界で初めて組織化された軍事制度が作られたと言います。

世界最古の戦士たちは、青銅製の槍や弓などの武器とともに、鋭く湾曲した鎌剣を使って戦いました。

メソポタミアの王も手にしたシックルソード

鎌のように剣身が曲がった剣は通称「シックルソード」と呼ばれていました。メソポタミアで紀元前2500年頃から使われるようになったこの剣は、メソポタミア美術において権威の象徴とされているため、神々や王たちの手に握られている様子が度々描かれています。

また紀元前2000年頃にメソポタミア北部に建国したアッシリア帝国のシックルソードも発見されており、剣身に刻まれた銘から、紀元前1307~1275年頃の中アッシリア時代を征服した王・アダド=ニラリ1世の物であることが分かっています。

古代エジプト王ファラオ愛用の剣・ケペシュ

ケペシュ

ケペシュ

シックルソードの形をした物に、古代エジプトでもともと投擲武器として使用されていた「ケペシュ」があります。斬撃用の刀剣として使うこともできたケペシュは、紀元前17世紀頃に、パレスチナから侵入してきたヒクソスという遊牧民族や、海の民と呼ばれる正体不明の謎の民族から取り入れられたのではないかと言われています。

また、古代エジプトの歩兵用の武器としてだけではなく、君主(ファラオ)が愛用していたことも判明しており、第18代王朝のファラオ・ツタンカーメンの墓からは、2本のケペシュと、若きファラオがケペシュでライオンを打ち倒している場面が描かれた儀式用の盾が副葬品として見つかっています。

紀元前1400年から紀元前1200年頃に作られた青銅製のケペシュには、象牙を使って象眼加工した柄が付いている物が発見されており、鎌形の剣身の刃は外側が深い切り傷を負わせるための物で、内側が敵をたたき斬るのに使われていたようです。

中東の古代文明の発達により、青銅を加工して刀剣を作り始めた人類は、やがて紀元前1200年以降になると、さらに丈夫で細工が施された鉄製の刀剣を制作するようになっていきます。

このような製鉄技術はみるみるうちに拡散されて、中国、インド、東南アジア、ヨーロッパなどの大陸を駆け巡り、各地で新しい刀剣の歴史が動き始めるのでした。

異民族によって古代エジプトに伝わった刀剣

古代エジプト戦士

古代エジプト戦士

中王国時代末期のエジプトでは、内戦が度々起こるなど長年に亘って不安な情勢が続いていました。その影響を受けて中央政府が崩壊したことをきっかけに、紀元前1640年頃からパレスチナ地方の異民族・ヒクソス人が侵略を狙って押し寄せ、エジプトはヒクソス人に支配されることに。

しかし、ヒクソス人の異文化とともに金属加工の技術が伝わったことで、エジプトの武器は大きな躍進を遂げるのです。

青銅による刀剣作り

古代エジプトに刀剣の製造技術が導入されるまでは、フリントと呼ばれる硬質な岩石や銅を材料に斧や槍、盾などを作っていました。槍と盾は古代の武器として歴史は古く、紀元前7000年頃の新石器時代の岩窟に、すでに槍と盾を持って戦う戦闘集団の様子が残されていた程。しかし、槍はもともと狩猟用の武器だったため、エジプト軍では主要武器に弓矢を使い、槍は補助的な役割を果たしていたようです。

武器を作る材料に青銅が用いられるようになると、ようやく刀剣が武器として定着するようになりました。その理由として青銅が銅よりも硬く加工しやすい材質だったため、安定して製造できるようになったことが考えられます。こうして優れた原料と加工技術の進歩によって鎌剣などが流行していきました。

変化し続けるエジプト刀剣

また、第19代王朝4代目ファラオのメルエンプタハの時代(紀元前1213~1202年頃)にエジプトに侵攻してきた異民族によって、鋭い切先を持つ両刃の直剣が伝来しました。この剣は刺突による攻撃が可能で、当時の戦闘風景の絵にも、密集陣形の歩兵部隊が刺突用の剣と斬撃用の剣を使って戦っていたことが描かれています。

さらにヒクソスを滅ぼして再統一されたエジプト新王国では、古代エジプト最後のファラオであるラムセス3世の治世(紀元前1186~1153年頃)に、地中海地域全体で発展した鉄鉱石から金属を取り出す製錬技術が伝わり、青銅製の刀剣よりも、もっと長く頑丈な刀剣を作り出すことを可能にしています。

こうして古代エジプトは3000年以上も反乱や侵略の歴史を辿り、度重なる戦争から軍事技術の向上や改良を経て、古代エジプト軍の武器は進化し続けていきました。

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