日本刀を所有する

刀剣の輸入・輸出

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日本独自の伝統工芸品である、日本刀。中国大陸から伝わった刀剣は、鍛錬技術の発展により、平安時代中期を境に、反りのある日本刀へと進化。日本刀は、武器としての強靱さもさることながら、美術品としても、非常に高い評価を得ています。そのため、刀剣の愛好家やコレクターは、日本国内に留まらず、海外にも多く存在しており、これまで数々の刀剣が、様々な国を通じて取引されてきました。現在でも、刀剣を手に入れたいと考える人は少なくないでしょう。ここでは、刀剣の輸出・輸入について、その方法や注意点も含めて、ご紹介します。

刀剣の輸入

現在、日本では刀剣類を所持することは、「銃砲刀剣類所持等取締法」で禁止されているのです。しかし、個人名義の「銃砲刀剣類登録証」を持っていれば、銃砲刀剣類所持等取締法14条で、「美術品、または骨董品として価値がある火縄式銃砲。または、美術品、骨董品として価値がある刀剣類」は例外とされているように、刀剣が「価値のある美術品・骨董品」として認められ、所有することが可能に。

刀剣類を輸入する際は、このことを念頭に必要な許可や手続きを取ることが重要です。また、国によっては、刀剣類に対する様々な規制があり、刀剣類を購入して輸入する際には、事前によく調べておくことが大切です。

刀剣を海外から輸入するときの注意点

刀剣を輸入する

刀剣を輸入する

現在、世界中の多くの国で、刀剣類・銃砲類は法令で管理されています。外国人(非居住者)への販売を禁止していたり、専門機関への届け出が必要だったりする国もあるので、注意が必要です。

また、外国人(非居住者)に対する規制がない国だとしても、刀剣類を購入した人が販売した刀剣で問題を起こしてしまった場合には、販売元の店や業者が厳しく罰せられる恐れがあることから、販売する側が、購入者に刀剣類を販売することに難色を示す場合も考えられるのです。

さらに、日本と同様に、購入後の管理や持ち運びに関しての許可や届け出が必要な場合も考えられるので、事前にしっかりと調べ、必要な手続きを踏んでおきましょう。

西洋刀の輸入

近年、インターネット上で、西洋の剣が販売されているECサイトを多く見かけることがあります。また、海外のアンティークショップなどでも、その国の販売許可を得た西洋刀や、レプリカの西洋刀が売られていることも。

ロングソードやレイピアといった美術品としての価値が高い西洋剣を手に入れたいと考えるコレクターも多いのではないでしょうか。しかし、現在の日本においては、西洋刀の輸入は模造品であっても殆ど不可能と言われるくらいに難しいとされています。

日本の税関では、鉄や銅、ステンレスのように、研磨すれば刃になる素材は「武器」とみなされるため、輸入禁止品目として没収されてしまうのです。この場合、自ら税関に出向き、刃(ブレード部分)を切断し、柄と鞘のみ持ち帰ることは可能。当然、西洋刀に対しての銃砲刀剣類登録証は発行されません。

日本刀よりも西洋刀に対する規制が厳しい背景には、銃砲刀剣類登録証制度の理念として、「日本刀の技術や伝統、価値を守る」目的であると言う点にあると言えます。また、日本の税関では、磁力検査が行われ、磁力が発生する素材の西洋刀は、日本国内に持ち込むことはできませんので注意が必要です。

また、日本と同様に、それぞれの国独自の規制のもとに刀剣類の所持(登録)を認める許可証を発行している国もあります。西洋刀を購入する際には、その国の刀剣類所持許可についてもよく調べておくことが大切です。

  • 中世ヨーロッパのロングソード
    中世ヨーロッパのロングソード
  • ルネサンス期に流行したファルシオン
    ルネサンス期に流行した
    ファルシオン
  • ドイツ起源の大剣ツヴァイハンダー
    ドイツ起源の大剣ツヴァイハンダー
  • 古代ローマ期の短剣ダガー
    古代ローマ期の短剣ダガー

日本刀を海外から逆輸入

海外から日本刀を逆輸入する場合にも、税関での磁力検査があります。また、税関を通過することができた場合でも、銃砲刀剣類所持等取締法14条の規制対象になる日本刀は所持できない場合も。規制対象とならないためには、該当の日本刀が武器ではなく美術品であることを証明する必要があります。

そのためには、その日本刀の素材が和鋼であり、日本の作刀技術を用いた鍛錬によって作られていることが必要。この条件を満たした場合、美術品としての日本刀であることが認められ、審査を経て銃砲刀剣類登録証が発行されます。該当の日本刀の素材が洋鋼だと、模造品だとしても、輸入することはできませんので、購入する前によく確認しましょう。

フランスの例

フランスでは、刀剣類、銃砲類は武器として扱われるため、法令で規制されています。武器類はカテゴリ別に分類されており、刀剣類は制限の一番低い「カテゴリD」です。

このカテゴリDは、18歳以上であれば、外国人(非居住者)に対する刀剣類の販売に規制はなく、購入制限や、当局への届け出も求められません。ただし、用途、保管、輸送、携帯することに対しては法令遵守を求められます。

そして、前述したように、刀剣類の販売者によっては、販売をためらったり、拒んだりする場合もあるので、そういった場面では、刀剣類の使用目的や、法令を遵守できることを説明する必要がありますので注意しましょう。

刀剣を輸入するときの手続き

海外から刀剣類を輸入する場合、「持ち込み許可証」取得、銃砲刀剣類登録証申請、運輸会社とのやり取りが必要です。その過程で、手続きや許可証の不備、そして該当の刀剣に問題があった場合には、輸入できない可能性が高いです。

あらかじめ、手順や必要書類、申請にかかる期間などをよく調べて、余裕を持って輸入手続きを進めていくことをお勧めします。

持ち込み許可証を取得する

刀剣を輸入する際には、空港警察が発行する持ち込み許可証が必要です。税関に申請をして必ず取得しましょう。

銃砲刀剣類登録証の申請・取得
銃砲刀剣類登録証

銃砲刀剣類登録証

日本国内で刀剣を所持するには、銃砲刀剣類登録証の取得が必須。この銃砲刀剣類登録証を取得するには、登録証の発行を行っている各都道府県の教育委員会の刀剣担当に連絡をします。

次に、持ち込み許可証や、税関から届く各種書類を用意し、教育委員会の刀剣担当より指定された審査日に、審査会場に行きましょう。会場では、現物確認のあと、厳格な審査が行われます。

この時点で、自分でも現物を見ることができるので、運搬中の破損や汚れがないかを確認しましょう。問題なく審査を通過すると、同じ会場にて、銃砲刀剣類登録証が発行されます。審査後、該当刀剣はしっかりと包装して税関担当者に預けます。銃砲刀剣類登録証が発行されてから数日で、該当の刀剣が指定した場所に届きます。

刀剣の輸出

刀剣の輸出

刀剣の輸出

日本から海外へ刀剣類を輸出することを考えたとき、どのようなことに注意すれば良いのでしょうか。ここからは、刀剣類を輸出する際の注意点や手順をご紹介します。

世界では、刀剣類の輸出を禁止している国もあるので、事前に運輸会社に確認をして、決まった手続きを踏む必要があるのです。

刀剣を海外へ輸出するときの注意点

現在日本では、国が指定する文化財である「国宝」、「重要文化財」、「重要美術品」においては、海外への輸出が禁止されています。国指定の文化財に該当せず、所持許可を得ている刀剣は、海外への輸出が可能。

そして、刀剣を海外へ輸出するときに必要となるのが、「古美術品輸出監査証明」です。この証明があれば、飛行機で運搬する場合にも「受託手荷物」として航空会社へ預け入れが可能となります。そのあと、取得した古美術品輸出監査証明と、税関に関する手続き書類を提出すれば、刀剣を輸出することができます。

古美術品輸出監査証明の有効期限は、発行日から1年間と決まっているので、注意しましょう。なお、中国(香港を除く)とロシアへの刀剣類の輸出は禁止されています。

また、形状が日本刀そっくりに作られた模造品であっても、この2ヵ国への輸出はできないので注意が必要です。刀剣類を輸出する際は、輸出が禁止されている国を事前に調べておくことをお勧めします。

刀剣を輸出するときの手続き

古美術品輸出監査証明を取得

日本では国指定の文化財の輸出は原則として禁止されていることから、輸出する刀剣が国指定の文化財ではないことを証明する「古美術品輸出証明」の取得が必須です。

古美術品輸出監査証明を取得するには、「文化庁文化財保護部美術工芸課」、または、「京都国立博物館普及室輸出監査係」に連絡の上、申請。その際に、銃砲刀剣類登録証も一緒に提出し、問題がなければ、2週間ほどで古美術品輸出監査証明が発行されます。

この古美術品輸出監査証明と税関手続き書類があれば、輸出可能になるのです。また、刀剣を輸出する際には、該当刀剣の銃砲刀剣類登録証を各都道府県の教育委員会に返す必要があるので、忘れないようにしましょう。

海外への発送

刀剣の輸出は、日本郵便のEMSなどを利用して、航空貨物として郵送するのが一般的。しかし、航空貨物は、会社によって保険料金や運輸料金が変動したり、荷物の制限を設けたりしている場合も。

また、個人か法人かによっても制限が違ったり、個人では受け付けられない会社があったりします。刀剣を輸出する際には、送り先の国はどのような制限があるか、送り先の国は刀剣の輸出が可能かどうかなど、利用する運輸会社に直接問合せをしておくと良いでしょう。

まとめ

現在の日本において、刀剣類を所持・持ち運ぶこと、また、国宝など国指定文化財である日本刀を海外に輸出することは、法律によって禁止されています。

刀剣類を輸出・輸入する際には、必ず決められた手続きを踏んで、許可証など必要な証明書を取得することが大切です。さらに、刀剣類の輸出が禁止されている国や、制限される国もあるので、運輸会社に問合せをして、事前に調べておくと良いでしょう。

これらの手順や注意点は、日本の伝統工芸品である日本刀を正しく輸出・輸入することだけでなく、自分が法律によって処罰されないためにもとても重要なことなのです。

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