日本刀の基礎・基本学習

日本刀の刃とは

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日本刀は「世界一切れる」と称される刀剣類です。では、その切れ味を表す日本刀の「刃」(は/やいば)とは明確に言うと何のことなのでしょうか。ここでは刃の意味や、良い切れ味を出す刃のための作刀技術、刃に付けられる模様「刃文」についてご紹介しています。

刀と刃の違い

日本刀を語る上で、正しく把握しておきたいのが「刀」(かたな)と「刃」(やいば)の違い。刀と刃は、漢字の形は似ていますが、意味は微妙に異なります。しかし、どちらも対象を切断する道具を表す単語のため、間接的に似通った意味を持つのも事実。ここでは、漢字の伝来を交えて刀と刃の違いについて解説していきます。

刀と刃の漢字の伝来

日本は、もともと自国の文字を持たない国でした。文字は、言語を記録するためにあとから作られるものなので、日本に限らず世界中のどの言語も最初から文字を持っていたわけではありません。国の言語が文字を持つには2通りの方法が考えられます。

それは新たに作り出すか、他の言語で使われている文字を借りてくるかの方法です。日本に文字が伝来したのは1世紀頃だと言われ、当時すでに交易がさかんだった中国の文字である「漢字」を輸入して用いていました。刀や刃という漢字が海を越えてやって来たのもこの頃です。

刀とは

刀は、刀剣類を示す言葉であり、あるいは日本刀の呼称のひとつ。主に刀身の片側にのみ刃のあるものを指しました。

日本は刀剣類の中でも片刃が発達したことから、片方のみに刃が付いた「片刃」(かたな)として、刀の漢字に「かたな」と読みをあてたのだと伝わります。刀の種類には「打刀」・「脇差」・「太刀」・「」・「」・「薙刀」などがありますが、もともとこれらは刀と称されていました。

また刀の漢字は、「刀の形状」そのものを象った「象形文字」(しょうけいもじ)です。象形文字は、古代遺跡の壁画や石版などに遺された絵文字から「物の形を象った」文字体系だと言われています。刀以外の象形文字として挙げられるのは、「魚」・「馬」・「鳥」などです。

なお、刀の切れ味刃文の入れ方によっても変化します。刃文は、日本刀を作る最後の工程「焼き入れ」によって付けることができ、熟練の刀工達による技で様々な模様を入れることができるのです。

刃とは

刃は、研ぎの入った刃(は)の部分のこと。対象を切断する機能の付いた面で、日本刀にとって肝心要の部分でもあります。語源は「焼き刃」のイ音便形で、本来は焼き入れをした日本刀の刃や、焼き入れによって生じた刃文のことを言いました。

それが訛って「やいば」と発音されるようになったと言います。以来、刀剣類の刃の総称となり、その他にも鋭い物や威力のある物の形容としても使われるようになりました。刃の漢字は「指事文字」(しじもじ)という分類をされる文字です。

指事文字とは、「形のない物」や「抽象的な事柄」を表現するために生まれました。従来の漢字に点や線を足すことで、別の意味を持つ文字を作り上げます。つまり刃は、「丶」を付け足すことで刀の一部分を示す文字になったのです。

意味 語源・由来
日本刀を示す言葉、あるいは呼称 片方のみに刃が付いた「片刃」が転じて「刀」と読むようになった。
刀の刃(は)に当たる部分 「焼き刃」が訛って「やいば」となる。
漢字の「刀」に「丶」を付け足し「刃」とすることで、刀の一部分を示す文字となった。

刃の切れ味が鋭い秘密

日本刀は「世界一切れる」ことで有名ですが、この刃の切れ味の良さを作り上げる作刀技術が3項目あります。「折り返し鍛錬」・「造込み」・「反り」です。ここではその3項目について解説していきましょう。

折り返し鍛錬

折り返し鍛錬

折り返し鍛錬

日本刀は、鉄に含まれる炭素量で硬さや切れ味に違いが生じます。炭素量を整えるために考えられたのが日本刀独自の製造方法「鍛錬」です。まず日本刀作りに使われる鉄は、日本古来の「たたら製鉄法」によって作られる「玉鋼」を活用。

玉鋼の原料は砂鉄で、不純物が少ない高純度の鋼です。この鋼を小割りにして「皮鉄」(かわがね)と「心鉄」(しんがね)用という2種類の鋼に分類。皮鉄用の鋼を平たく伸ばして積み重ね、積み沸かしにより高温で熱します。

次が折り返し鍛錬という重要な工程。熱された素材を平たく打ち伸ばして、さらに折り返して打ち伸ばすことを15~16回繰り返します。こうすることで、鋼の中に含まれる不純物を除去することができ、炭素の含有量を調整することができるのです。

しかし、折り返し過ぎて硬度が高くなるほど靭性(じんせい:粘り強さ)が下がり、刃が欠けやすくなってしまいます。そのため刀工は、積み沸かしのときの鋼の色を見極め、音を聞き、鍛錬に最適な瞬間と回数を判断しているのです。

重層構造による造込み

造込み

造込み

「折れず 曲がらず 良く切れる」とは、日本刀を表すのに良く使われる言葉です。けれど、鋼は硬くなるほど曲がりにくくなりますが、大きな衝撃に対しては弱く壊れやすい性質を持ちます。

対して、やわらかければ折れにくく衝撃に強いのですが、曲がりやすいことから日本刀の材料としては使うことはできません。そこでこうした矛盾を解決するのが「重層構造」です。

折り返し鍛錬で鍛えた硬い鋼を外側の皮鉄に、内側にはやわらかな鋼である心鉄を包んで作ります。これを造込みと言い、2種類の性質の異なる鋼を組み合わせてひとつにすることで、折れにくさと曲がりにくさを両立することに成功させました。こうして折れず 曲がらず 良く切れるという日本刀最大の持ち味を実現させることができたのです。

反りがある

日本刀の特徴的な部分として反りがあることが挙げられますが、反りは日本刀作り最後の工程になる焼き入れによって生じるもの。反りは、鋒/切先(きっさき)から棟区(むねまち)までを線で結び、棟とその線までが一番離れている場所の寸法を反りと言います。

この反りは、平安時代中期に登場した「古刀」(ことう)から付けられるようになったと考えられています。それ以前の「上古刀」(じょうことう)は、まっすぐな刀身を持つ「直刀」(ちょくとう)で、主に貴族が佩用していました。

反りのある日本刀は、武士の台頭と大きなかかわりがあります。武士が馬に乗って戦うようになった平安時代中期頃、反りのある刀は素早く鞘から抜くのに適していました。また、反りがあることによって切り付けたときの衝撃を緩和させ、自然と「引き切り」の動作が行われるようになります。「引きながら切る」は、まっすぐ切り付けることではなく刃を滑らせながら切り付けることで、より切れ味の鋭さに結び付くのです。こうした働きを「斜面の原理」と言います。

反り

反り

刃の模様 刃文とは

「刃文」とは、刀身の刃に付いた形状のことです。刀身に白く浮き上がる模様を指し、日本刀を光にかざすことによって鑑賞することができます。ここでは刃文の入れ方と、刀工がどのように刃文を入れるのか、そして刃文の種類について見ていきましょう。

焼き入れの方法

焼刃土

焼刃土

この刃文を入れるために必要な工程を「焼き入れ」と言い、これは日本刀に命を吹き込むための重要な作業です。この焼き入れによって刃文や反りが生じ、それが日本刀の美しさを際立たせます。

しかし焼き入れの目的はそれだけではなく、刃の強靭さと切れ味の鋭い日本刀へと仕上げるためです。焼き入れは、刀身を日本刀の形に整える「素延べ」や「火造り」といった作業を終えたあとに行われます。

刀身に、粘土や木炭などを混ぜた「焼刃土」(やきばつち)を塗り、約800度の火で加熱し、そして熱したあとは水槽に沈め一気に冷却。熱で膨張した鋼が急速に冷やされることで、刃文や反りが生じるのです。

刃文は流派や刀工の腕が試される

焼入れした刀身

焼入れした刀身

刀工達は、目指す刃文や反りになるよう焼刃土を置きますが、必ずしも狙った通りの焼きが入るとは限りません。最適な温度を経験と炎の色で温度を見極めるため、焼き入れ時の鍛刀所は明かりを落として熱した刀身に集中できるようにします。

焼き入れした時間や温度などが結果に大きくかかわり、各流派の風合いや、刀工の経験や技量などが発揮されるのです。この刃文は、出来栄えによっては日本刀の価値そのものも左右する重要な位置付けにもあると言えます。

刃文の種類

刃文は大きく分けると「直刃」(すぐは)と「乱刃」(みだれば)の2種類のものがあります。

直刃の種類

最も基本的で直線的な刃文のことを直刃と言いますが、以下の4つの種類に分けることができるのです。

直刃の種類

直刃の種類

糸直刃(いとすぐは)
直刃の中でも、極めて焼き幅が細い刃文です。
細直刃(ほそすぐは
細い焼き幅を細直刃と呼び、糸直刃よりも太くなります。
中直刃(ちゅうすぐは)
細直刃と広直刃の中間が直刃あるいは中直刃です。
広直刃(ひろすぐは)
広い焼き幅は広直刃です。

乱刃の種類

直線ではないものを乱刃と言いますが、代表的な形としては「丁子」(ちょうじ)や「互の目」(ぐのめ)、「湾れ」(のたれ)などの刃文があるのです。その他にも組み合わさり細かな種類があり、合わせてご紹介していきます。

丁子(ちょうじ)
丁子(香辛料の一種)の実を連ねた形に似ていることから付けられました。また、ひとつひとつの円形から、刃に向かって棒状の模様が浮かんでいるのも特徴です。
丁子

丁子

互の目(ぐのめ)
碁石のような丸い模様が並ぶ刃文。丸い部分の大きさが揃っていたり、または不揃いであったりするなど種類が豊富です。
互の目

互の目

湾れ(のたれ)
大きくうねったような刃文が特徴。蛇行が大きく、直刃に似た浅い湾れから、互の目を交えた模様もあります。
湾れ

湾れ

重花丁子(じゅうかちょうじ)
丁子の上にさらに丁子が重なり、花弁が重なり合っているように見えます。鎌倉時代中期に活躍した刀工一派「備前一文字派」や「福岡一文字派」などが多く取り入れた刃文です。
重花丁子

重花丁子

片[肩]落互の目(かたおちぐのめ)
互の目の片方が斜めに切り取られ、のこぎりの刃のように見える物。逆がかっている物が多いことが特徴。鎌倉時代中期に活躍した刀工一派「長船派」(おさふねは)が得意とした刃文です。
片[肩]落互の目

片[肩]落互の目

スペーサー画像

まとめ

刀と刃は、似た形の漢字ではありますが、大きな違いがあります。それは、刀は日本刀など刀剣自体を広くまとめる呼称で、刃は刀剣に付いた切断する機能の面であるということ。

さらに刃は、作刀工程において折り返し鍛錬や造込みなどを行い、刃文を入れることで折れず 曲がらず 良く切れるといった日本刀の実現を可能にしました。

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