人喰い鬼の始祖「鬼舞辻󠄀無惨」(きぶつじむざん)の根城「無限城」に転移した「竈門炭治郎」(かまどたんじろう)達は、次々に上弦の鬼達を討伐。大切な仲間を失いながらも、竈門炭治郎達は総力戦でついに鬼舞辻󠄀無惨を倒しました。しかし、不滅を望む鬼舞辻󠄀無惨は死の間際、竈門炭治郎の細胞に侵食したために竈門炭治郎は鬼化してしまったのです。鬼舞辻󠄀無惨に抗う強い思いと仲間達の支えにより、竈門炭治郎は無事人間に戻ります。そしてようやく、人喰い鬼のいない平和な日々が訪れるのでした。
鬼になった兄弟子
無限城に移転した「我妻善逸」(あがつまぜんいつ)は、「上弦の陸」に繰り上がったばかりの鬼「獪岳」(かいがく)と遭遇。獪岳は我妻善逸と同じ「育手」(そだて:剣士を育てる人)のもとで修行した兄弟子でした。
しかし獪岳は、育手が自分だけでなく我妻善逸をも後継者にしたことを恨んでいたのです。そんな折「上弦の壱」である「黒死牟」(こくしぼう)に勧誘され、鬼となりました。
「雷の呼吸」の使い手から鬼を出してしまうことになった責任を取り、育手は切腹。それを知った我妻善逸は、必ず自分が獪岳を討つと決意していたのです。
ついに我妻善逸と獪岳が対決するその戦いでは、獪岳が「血鬼術」で強化した技で我妻善逸を圧倒します。獪岳は自分を評価し認める者こそが善だと主張。獪岳にとっての善は、育手ではなく鬼舞辻󠄀無惨だったのです。
そして、自分は雷の呼吸のうち「壱ノ型」しか使えない我妻善逸とは異なり、特別な存在なのだと言い放ちます。
斬撃を受けた我妻善逸は心の中で、亡くなった育手と獪岳に謝罪します。そして独自に編み出した雷の呼吸・漆ノ型「火雷神」(ほのいかづちのかみ)を繰り出し、獪岳を討ちとったのです。
この戦いで我妻善逸は瀕死の状態になるも、「珠世」(たまよ)の弟子で、鬼殺隊士に扮した鬼の「愈史郎」(ゆしろう)に助けられます。
意識不明の我妻善逸は夢の中に現れた育手に、自分のせいで獪岳が鬼になったと育手に謝罪。しかし育手は「お前は儂の誇りじゃ」と語り、育手の深い思いを知った我妻善逸は泣きながら意識を取り戻すのでした。
竈門炭治郎と「水柱」の「冨岡義勇」(とみおかぎゆう)は、「炎柱」であった「煉󠄁獄杏寿郎」(れんごくきょうじゅろう)の仇である「上弦の参」の鬼「猗窩座」(あかざ)に遭遇。痣が出現した冨岡義勇と、痣が出現しつつ「透き通る世界」が見えるようになった竈門炭治郎は、戦闘力が格段に上がります。
そして猗窩座の闘気を感知する能力を見破った竈門炭治郎は、自らの闘気を消して猗窩座の頸を斬りますが、猗窩座は倒れませんでした。
人間だった頃の猗窩座は「狛治」(はくじ)という名で、病弱な父の薬代を得るために窃盗を繰り返す少年でした。しかし狛治の父は、息子が自分のために悪に手を染めていることを苦に自害し、狛治は正気を失って乱闘騒ぎを起こします。
そんな狛治のもとへ「素流」(そりゅう:素手の武術)の師範が現れ、道場に勧誘。次こそは真っ当に生きようと修行に励み、その姿勢を師範に認められ、跡継ぎとして師範の娘との婚礼が決まりました。ようやく幸せを得ようというある日、師範とその娘が隣の剣道道場の者に毒殺されてしまったのです。
狛治は再び正気を失い、剣道道場の全67名を素手で殺害しました。そこへ鬼舞辻󠄀無惨が現れ、自暴自棄になっていた狛治を鬼・猗窩座にしたのです。
弱い者を倒すこと、それが猗窩座の戦う理由でした。しかし、竈門炭治郎達との戦闘中に、本当に倒したかった弱い者とは自分自身なのだということに気付き、猗窩座は自ら死を選びます。
走馬灯のように記憶が巡り、鬼舞辻󠄀無惨に呼び止められながらも、猗窩座は自我を取り戻して消滅したのです。
「蟲柱」(むしばしら)である「胡蝶しのぶ」(こちょうしのぶ)は、姉「胡蝶カナエ」(こちょうかなえ)の仇であり「上弦の弐」の鬼「童磨」(どうま)に遭遇。蟲の呼吸の使い手であると同時に毒の使い手でもある胡蝶しのぶは、鬼に有害な「藤の花の毒」を使って攻撃を仕掛けます。
しかし、胡蝶しのぶの毒攻撃は童磨に効かず、胡蝶しのぶは捕らえられてしまいます。そして駆け付けた胡蝶しのぶの「継子」(つぐこ:柱が後継として育てる鬼殺隊士)である「栗花落カナヲ」(つゆりかなを)の前で、胡蝶しのぶの体は童磨に喰われ吸収されてしまうのでした。
孤児だった栗花落カナヲは、胡蝶カナエと胡蝶しのぶに保護され、剣士になりました。胡蝶カナエに続き胡蝶しのぶも童磨に殺され、栗花落カナヲは憎悪に震えます。童磨の圧倒的な血鬼術に苦戦を強いられるなか、竈門炭治郎の鬼殺隊同期「嘴平伊之助」(はしびらいのすけ)が助太刀に入りました。
すると童磨は、嘴平伊之助の顔に見覚えがある、と言い出します。思い出した童磨は、嘴平伊之助の母親を喰ったことを喋りはじめ、嘴平伊之助は激怒。しかし童磨は、術で氷の人形「結晶ノ御子」を出現させ、これを時間稼ぎにして、その場から逃げようとしたのです。
童磨が逃げ切ろうとする寸前に、突然毒に冒されて転倒。自身が喰われることも想定していた胡蝶しのぶは、「藤の花の毒」に満ちた体を童磨に吸収させ、弱らせるという作戦が功を奏します。
そこへ栗花落カナヲが「花の呼吸 終ノ型」である「彼岸朱眼」(ひがんしゅがん)により動体視力を上げて童磨に接近し、ついに栗花落カナヲの日輪刀が童磨の頸に当たります。
すかさず嘴平伊之助は、自分の日輪刀を投げて栗花落カナヲの日輪刀をさらに押し込み、見事に童磨の頸を切断することに成功。3人の力で、ついに童磨を討伐したのでした。
「半天狗」(はんてんぐ)に代わり「上弦の肆」となった「鳴女」(なきめ)の空間操作能力に、「恋柱」の甘露寺蜜璃(かんろじみつり)と「蛇柱」の「伊黒小芭内」(いぐろおばない)は振り回されていました。
鳴女の能力で「岩柱」の「悲鳴嶼行冥」(ひめじまぎょうめい)とはぐれた「霞柱」の「時透無一郎」(ときとうむいちろう)は、上弦の壱・黒死牟に遭遇。「風柱」の「不死川実弥」(しなずがわさねみ)の弟「不死川玄弥」(しなずがわげんや)が加勢するも、黒死牟の剣技に圧倒され、身動きが取れません。そこへ不死川実弥と悲鳴嶼行冥が加勢し、2人は痣を出現させます。
見事に連携する不死川実弥と悲鳴嶼行冥でしたが、黒死牟の血鬼術で強化された「月の呼吸」に苦戦。鬼の体を喰べることで鬼の力を一時的に得ることのできる不死川玄弥は、黒死牟の一部を喰って鬼化し、血鬼術を放ちます。
時透無一郎は、日輪刀で黒死牟を刺して動きを止め、さらに自力で刀身を赤く染め上げました。また不死川実弥と悲鳴嶼行冥も武器を赤く染め、日輪刀を強化します。
そしてついに、黒死牟の頸を斬り落としたのです。
もとは「継国厳勝」(つぐくにみちかつ)という人間であった黒死牟は、「日の呼吸」使いで剣技も強い双子の弟「継国縁壱」(つぐくによりいち)に嫉妬し、憎んで鬼になりました。黒死牟は薄れる意識のなか、強さを求める理由は継国縁壱に焦がれていたからだということに気付きます。
しかし、自分は継国縁壱にはなれないと自覚し、黒死牟は消えていきました。
無限城
鬼舞辻󠄀無惨は、産屋敷での戦いで「珠世」(たまよ)に「鬼を人間に戻す薬」を投与されますが、なんとか体内で分解。珠世は絶命してしまいますが遺志を継いだ愈史郎が、自分の血鬼術で無限城から隊士達全員を移転させ、鬼舞辻󠄀無惨を日の光に当てるため夜明けを待つ作戦に出ます。
柱達は総出で猛攻を続けますが、鬼舞辻無惨の攻撃を受けて次々に負傷。竈門炭治郎も負傷し意識を失うなか、先祖の記憶から「日の呼吸」の型への理解を深めて反撃します。
一方の鬼舞辻󠄀無惨は、「鬼を人間に戻す薬」は分解したものの、数種類打ち込まれた中の「老化薬」の効果で弱体化していました。
朝日が昇りはじめるなか、冨岡義勇の協力で日輪刀を赤く染めて強化した竈門炭治郎は、ついに鬼舞辻󠄀無惨を倒すのでした。
鬼舞辻󠄀無惨は死ぬ間際、竈門炭治郎に自らの血を投与します。鬼化し暴れる竈門炭治郎を、珠世の作った「鬼を人間に戻す薬」で人間に戻った妹「竈門禰󠄀豆子」(かまどねずこ)が取り押さえ、説得します。
また、栗花落カナヲが彼岸朱眼により動体視力を上げて竈門炭治郎に近づき「鬼を人間に戻す薬」を刺しました。
竈門炭治郎は鬼化を促す鬼舞辻󠄀無惨を拒み、人間として生涯を全うしたいと願います。そして仲間達がその思いを後押しし、竈門炭治郎は無事人間に戻ったのです。
仲間を失っても、生き残った人々の人生は続きます。人喰い鬼がいない世界になり、鬼殺隊は解散しました。竈門炭治郎達は療養していた蝶屋敷を離れ、帰宅します。こうして穏やかな日常がはじまったのです。
そしてときは経ち、舞台は現代の日本に。そこでは竈門炭治郎達の子孫や、仲間達の生まれ変わりと思われる人物達が笑顔で過ごす日常がありました。
それは、竈門炭治郎達が思い描いていた夢そのもの。後世の平和な日々が描かれ、「鬼滅の刃」の物語は幕を閉じるのです。